「論破」とは議論の中で相手の意見を崩す、つまり言い負かすことを意味します。最近では、メディアのディベート番組などでも活躍する“ひろゆき”こと西村博之さんが、よく「論破王」と呼ばれていることから、聞いたことがあるという人も多いでしょう。

本記事では「論破」の基本的な意味や類語を解説。あわせて普段から「論破」したがる人にありがちな特徴も解説します。「論破」を正しい意味で使えるよう、しっかり理解しましょう。

  • この機会に意味や類語など「論破」に関する知識を蓄えましょう

    この機会に意味や類語など「論破」に関する知識を蓄えましょう

論破の意味や読み方

「論破」とは、「議論をすることで相手の意見や考え方を破る」こと。意見の異なる相手を自分の言葉で打ち負かす行為ともいえます。読み方は「ろんぱ」です。

漢字の意味は「考え(論)」を「こわす(破)」こと

「論破」は「論」と「破」、2種類の漢字を組み合わせた名詞です。

「論」とは「筋道を立てて、意見や物事の是非を述べる」こと。「筋の通った考えや文章、意見」との意味合いで用いられることもあります。前者は「論争」、後者は「論文」といった形で使われます。

「破」にはいくつか意味があります。まずは「破れる」や「壊す」などの意味で、「破壊」や「大破」といった形で使用されます。他には「破格」などで使用される「道理から外れる」といった意味や、「読破」などの「やり抜く」といった意味合い。そして「論破」で使用されているのは、「相手を打ち負かす」という意味です。

双方の漢字が持つ意味から考えると、「論破」とは相手の考え方や意見を打ち負かすことといえるでしょう。

日常生活においての「論破」は意味ない?

考え方が異なる相手と意見を交わす機会はシーンを問わず訪れます。しかし理屈で相手を言い負かしたところで、利益は生まれないといっても過言ではありません。

論破する側は相手を黙らせることで喜びや優越感が得られることもあるでしょう。一方で「論破」された側は、意見をねじ伏せられた事実が心に残り、モヤモヤとした感情が残るだけ。自分を打ち負かした相手に対し、素直に「はい、そうですね」と付き従う人はほとんどいないのではないでしょうか。

感情的になって議論が白熱し、批判的な言動が増えてしまうと、双方の間にわだかまりが生じる可能性も。最悪の場合は人間関係の破綻につながる可能性もあります。もちろん、仕事やプライベートで交渉が必要になるケースはあるでしょう。また近年では、相手の素性を知らない他人同士が、SNS上で思いやりのない言葉を掛け合って対立する構図もよく見掛けられます。交渉や議論が必要なときは、あくまで友好的で穏やかな態度で臨み、相手に「論破された」と思わせないように心掛けましょう。

  • 取り返しのつかない事態に発展しないよう、交渉の際は冷静さを忘れないようにしましょう

    取り返しのつかない事態に発展しないよう、交渉の際は冷静さを忘れないようにしましょう

ネットで見る「はい論破」の意味とは

「論破」は、特にネット、SNS上で「はい論破」の形で用いられることがあります。基本的な意味は「論破」と変わりません。

主に文末で使われる

「はい論破」は一般的に文の最後で使用される言葉です。筋の通った理論で相手の意見を言い負かす内容の文章に「はい論破」が使われます。例えば「あなたは先ほど○○と述べていたのに、今回のケースでは△△と述べており意見が矛盾している。はい論破」といった具合です。

高圧的なイメージ

「論破」の上に「はい」がつくと、単なる「論破」よりもさらに得意気な雰囲気で高飛車なイメージが強くなります。受け取る側の印象も悪くなりやすいため、「はい論破」で終わる書き込みは炎上の的になることもあります。

特に「はい論破」とはいうものの、よくよく見ると筋の通らない説明や理論が崩壊した意見になっているケースもあります。その場合はなおさら他人から攻撃を受ける可能性が高く、「論破」するはずが逆に「論破」されてしまうケースもあるでしょう。

  • ネット上で「はい論破」を使用する際はくれぐれも気をつけましょう

    ネット上で「はい論破」を使用する際はくれぐれも気をつけましょう

論破する人の特徴

日常的に相手を「論破」する人にはさまざまな共通点があるとされています。下記でその例を紹介します。

論理的思考の持ち主

論破する人の傾向として、普段から論理的に考える習慣が身についていることが多いと考えられます。

相手を論破するには意見や主張に一貫性を持たせ、筋が通った内容であることが重要です。日常的に筋道を立てて物事を考える習慣がない人が、議論の場で理路整然と説明するのは容易ではありません。相手の言い分から矛盾を指摘し、自分の意見を完璧に述べるには、論理的思考の積み重ねが大切といえるでしょう。

自己顕示欲が強い

普段から論破する人は承認欲求が強く、周囲に認めてほしいと考えている人が多いようです。

相手を論破する意味を別の角度から見てみると、自分の方が論理的思考や話術が優れていることを示す方法ともいえます。「論破」はもっと周りから尊敬されたい、注目を浴びたいとの気持ちが反映された行為と考えられるでしょう。

勝ち気な性格

何事も負けることを良しとせず、常に勝ちを目指すという負けず嫌いな性格の人は、論破をしたがる傾向があるようです。

勝ち気な性格の持ち主は、自分の意見を他人に合わせることを敗北ととらえることも。「論破」は負けず嫌いな人が相手に勝ちたいと思うがゆえの行動といえるでしょう。

  • 「論破」は論理的な思考や承認欲求の高さの表れと考えられそうです

    「論破」は論理的な思考や承認欲求の高さの表れと考えられそうです

論破の言い換え・類語

日本語にはいくつか「論破」と似た意味を持つ言葉があります。類語を頭に入れておくことで語彙力(ごいりょく)が上がり、表現力も豊かになるでしょう。

逆捩じ(さかねじ)

「逆捩じ」とは「他から受けた非難を自分で非難し返す」意味で使用される言葉。例えば「逆捩じを食わす」といった形で使われます。反対方向にねじることを指す場合もあるので、念のため注意してください。

説破(せっぱ)

「説破」とは「説き伏せる」ことや「言い負かす」ことを表す言葉。使用例には「彼が唱える説を説破した」などがあります。

駁論(ばくろん)

「駁論」とは「相手の意見を非難し、反論する」ことを意味する単語です。「語気を強めて駁論する」などと使用し、議論自体を表すこともあります。

反証(はんしょう)

「反証」とは「証拠を用いて相手の主張が偽りだと立証する」こと、あるいは証拠自体を意味します。主な使い方は「反証を挙げる」です。

弁駁(べんばく)

「弁駁」とは「他人の考え方の誤りについて集中的に意見を述べ、攻撃する」ことの意味。「議論の相手を弁駁する」などと使います。

言い負かす(いいまかす)

「言い負かす」とは「言い争いの末、相手に勝利する。言い伏せる」ことを意味します。「あの人には何を言っても毎回言い負かされる」といった使い方があります。

遣り込める(やりこめる)

「遣り込める」とは「言い争いに勝ち、相手を黙らせる」こと。「言葉巧みに遣り込められた」などと使われます。

  • 類語でも言葉によって多少ニュアンスが変化することも覚えておきましょう

    類語でも言葉によって多少ニュアンスが変化することも覚えておきましょう

論破の使い方・例文

実際に会話の中で「論破」を用いる方法について、例文を交えつつみていきましょう。

「論破した」「論破する」などと使う

「論破」を実際に使用する際は言葉単体ではなく、「~した」「~する」などを後ろにつけることが多いです。

「論破」を使った例文

「論破」を用いた例文は以下の通りです。「論破」を用いるときの主語は、自分でも相手でも構いません。

・先生が生徒の主張を論破した
・私は相手を論破しようとしたが失敗した

・あの弁護士を論破するのは並大抵のことではない
  • 論破の使い方については特段難しいことはありません

    論破の使い方については特段難しいことはありません

論破の英語表現

「論破」または「論破」の類語の英語表現もあわせて確認しておきましょう。

refute

「refute」は「論破する」「反駁(はんばく)する」などの意味がある英単語です。

・It's very difficult to refute him. (彼を論破することは非常に困難だ)

persuade

「persuade」は「説破する」の意味で使われる英単語です。

・I spent an hour persuading my friend. (1時間かけて友人を説破した)

talk (a person) down

「talk (a person) down」は「言い負かす」ことを表します。

・I could finally talk him down. (やっと彼を言い負かすことができた)

  • 知識として英語表現も覚えておくといいかもしれません

    知識として英語表現も覚えておくといいかもしれません

「論破」は悪い意味で解釈されやすい言葉

「論破」とは議論において、相手を自分の考え方を用いて負かすことを意味します。冷静な頭での話し合いで生まれた結果なら問題ないですが、注意すべきは議論が白熱した場合。意見が対立する人どうしがヒートアップすると、たとえ論破できても両者の間にわだかまりが残ってしまいます。

ネットでは「はい論破」との形で使われることが多く、人を言い負かせそうな発言の最後につけるのが定番です。高圧的な印象が強いため、周囲からバッシングを受けることもしばしばあります。

論破と似た意味合いの名詞は「説破」や「駁論」などさまざま。動詞の「言い負かす」と「遣り込める」も論破と同じような意味で使われます。

普段から何かにつけて論破している人は、物事をロジカルに考えるタイプといえそうです。一方で負けん気が強く、他人に認めてほしいと感じていることもあるでしょう。