そこで研究チームは今回、アラスカに設置した1秒間に100枚の撮影が可能なハイスピードカメラを用いてフラッシュオーロラの時間変化を、レベルセット法と呼ばれる輪郭形状進化を追跡できる画像処理法を活用して調査。その結果、水面に滴る水滴が作る波紋のように徐々に水平方向の大きさを拡大させながら、最大サイズに広がった後に徐々に縮小するような発光変化を示すオーロラでは、オーロラの縮小する時間が拡大する時間よりも平均で1.7倍も長くなることが見出されたとする。
また、この要因の解明に向け、電離圏でのフラッシュオーロラ発光がどのように変化するか、宇宙のコーラス電磁波の特性を変えながら数値計算が行われたところ、フラッシュオーロラの縮小する時間が拡大する時間よりも長くなるには、宇宙の発生域で低周波コーラスと高周波コーラスの周波数分布が連続している必要があることが判明したという。
これは、高周波コーラスは、より低いエネルギーの電子に影響するため、発生域から地球までの移動速度が遅くなる低いエネルギーの電子がオーロラの縮小する時間を決めていたことが示されたとしている。
なお、コーラス電磁波は、地球だけでなく、地球と同じように磁石となっている木星や土星など、太陽系のほかの惑星でも観測されている。太陽に最も近い水星も磁石になっているが、まだコーラス電磁波は観測されていない。これは、水星の磁場の強さが、地球に比べて1%ほどしかないため、地球と水星でコーラス電磁波による電子への影響がどのように変わってくるのかよくわかっていないためで、今後、地球と水星のコーラス電磁波の観測比較により、さまざまな惑星におけるコーラス電磁波による電子の加速やオーロラ現象の物理過程解明への貢献が期待されると研究チームではコメントしている。