ソフトバンクは5月11日、2022年3月期 決算説明会を開催。売上・利益ともに過去最高を更新したことを明かしました。宮川潤一社長はメディアの質問に回答する形で、通信料金値下げの影響、HAPSモバイル、5Gのエリア展開、PayPayの今後などについても説明しました。
社長就任の初年度を総括
2021年度の連結業績は、売上高が5兆6,906億円(前年同期比9%増)、営業利益が9,857億円(同2%増)、純利益が5,175億円(同5%増)でした。宮川社長は、新料金プランで通信料金を値下げした結果、「770億円の減収となった」ことを報告。しかし、「逆風を受けている真っ最中のコンシューマ事業ですが、端末の販売は好調でした。さらに『ソフトバンクでんき』『ブロードバンド』の売上高の増加で4%の増収となりました」としました。半導体不足の影響により、流通は減収。ヤフー・LINEが+17%、法人が+19%それぞれ成長して減収を補った形です。
「一応、すべての項目で予想を上回って着地できました。社長就任の初年度ということで、この1年間は非常に“悪天候”で厳しい1年でしたが、過去最高の売上と利益を達成できて、胸をホッとなで下ろしている状況です」(宮川社長)
2022年度の業績予想については、売上高が5兆9,000億円、営業利益が1兆円以上、純利益が5,300億円以上と掲げました。まだ時期は未定としつつも「今年度はPayPayの子会社化も見込んでおります」と宮川社長。我々はPayPayに巨額な投資をしてきたが、それが少しずつ評価される時期が来た、と説明しています。
純増数は伸びたが...
続いて、メディアからの質問に宮川社長が回答しました。
はじめは、参議院本会議で5月11日に可決・成立した「経済安全保障推進法」について。法人基地局で中国ファーウェイ製の回線を使っていたのでは、と指摘された宮川社長は「そろそろファーウェイさんの中継ラインの巻き取りが完了するところです。これに加えてLTE時代の基地局で、中国メーカー2社の機器を使っていました。ようやく5Gのインフラが整ってきましたので、5Gと4Gの機器を入れ替え、最終的には周波数も既存ベンダーに入れ替えていく計画です」と説明しました。
通信料金の値下げの影響により、2022年度は900億円の減収を見込んでいる理由について聞かれると「いまソフトバンク、ワイモバイル、LINEMOと3ブランドを展開していますが、お客様の支持を得ているのは、正直なところワイモバイルです。ワイモバイルのユーザーが増えていくと、全体的には減収につながる。年間でユーザーは好調に増えているんですが、その増えた数と、いままでソフトバンクというブランドで稼いできた収益との差分が、2022年度もまだ出てしまうということです」と回答しました。
純増数が第4四半期に持ち直した要因について聞かれると、「2021年4月に社長に就任し、急に値下げの影響が毎月どんどんと数字に出てきて、これはちょっとまずいぞ、ということでどうすべきか考えていた時期が半年間くらいありました。しかし、グループ全体を見たとき、コンシューマのハンドセットユーザーが増えることはYahoo!やPayPay、その他のサービスにも良い影響を与える。いろんな角度から計算した結果、やはり『アクセルを踏もう』ということで、後半になって顧客獲得コストを恐れずにアクセルを踏み出したんです。腹をくくった、というのが答えです」と宮川社長。
ソフトバンクが目標としているARPU(1ユーザーあたりの平均的売り上げ)を下回るユーザーを獲りに行くことが果たして正解なのか、いろいろと考えるところはあったが、ユーザー数が増えることでグループ全体も潤うと考えた、と繰り返したのちに「あとはコロナが少し収束して、我々の営業力が活かせるポジションが来た。この2点です」としました。
NTTドコモがHAPSモバイル(成層圏を飛行する通信基地局)の取り組みに積極的な姿勢を示していることについては「私たちも、もちろん日本でサービスを立ち上げるべく計画しています。HAPSアライアンスをつくり、国際標準化も進めています。ただ、世界の標準化が終わるのはおそらく2027年ごろ。つまり、まだ簡単には電波を上空から発射できない状況です。プレサービスという形では、私たちも2026年くらいには実施したいと思い、準備も進めていますが、日本の上空にはジェット気流が吹いており、事業者の立場から言うと『不利な状況』。サービスを始めるのは相当難しく、日本の上空でサービスを開始できるなら他の国ではもっと簡単にできる、といえます。そこで、日本からスタートというよりは、もう少し穏やかなアフリカ、アジア諸島、オーストラリアの上空あたりでスタートしたいと考えています」。
5Gのエリア展開については、「当初は(4G向けの周波数を転用した)なんちゃって5Gじゃないか、と揶揄されたこともありましたが、700MHz帯と1.7GHz帯の周波数を最大活用して、いま“面”を作っているところです。まずはローバンドで展開し、それから都心部を中心にミッドバンド、ミリ波と展開していきます。ローバンド、ミッドバンドのエリアはいま現在、人口カバー率で90%をちょっと超えたところ。最終的には、やはり99.8%くらいまで、いま現在LTEでカバーしているエリアまで持っていく。そうしないと4Gの巻き取りもできません。だから4Gのエリア=5Gのエリア、というところまでやり切るつもりです」。
とはいえ、環境が整うまでは慎重に進めたい、という思惑も。「いま5Gで何がやれるんだといえば、我々事業者自身でさえ(4Gと)さほど変わらないじゃないかと思っている。低遅延、大容量、多接続が便利に使える、デバイスの横展開が図れるようになったタイミングを見計らって、効率的の良い投資をやっていけたら」とも話しました。
5G端末の高価格化について聞かれると「いまは、ちょうど5Gの普及時期です。通信が4Gに切り替わったときも、最後は端末がとても安くなりました。5Gはまだチップセットが高いため、端末の価格もまだ高くなっているのだと思います」。
今後の事業のあり方について、通信と非通信の占める割合はどうなっていくのか、と聞かれると「通信による収入が1/3くらい、非通信が2/3くらいの会社を目指していければ」と回答しました。
PayPayを上場させる考えもあったのでは、という質問には「現時点で決まったことはないという回答です。かねてからソフトバンクの株式は、サムオブザパーツで評価してもらいたいと申し上げてきましたが、PayPayも我々の優良なアセット。そのなかで、PayPayの株式の価値というものを表面化したいと考えています」。PayPayは儲かっているのか、と聞かれると「まだ赤字です」とコメントしました。