日常会話などで見聞きすることがある「うだつが上がらない」という言葉。「あの人はうだつが上がらないよね」といったフレーズでよく使われますが、使い方を間違ってしまうと人間関係にトラブルが生じる可能性もあります。
今回は、「うだつが上がらない」の意味や語源などについて詳しくご紹介。また、正しい使い方・例文・類語などに関しても解説しますので、ぜひ参考にしてください。
「うだつが上がらない」の意味と語源・由来
「うだつが上がらない」の意味
「うだつが上がらない」は、出世がなかなかできないことや金銭的にうまくいかないことを表す慣用句です。
「ぱっとしない」や「運がない」という意味もあり、仕事や私生活がうまくいっていない様子を表す時に広く使用されます。
「うだつが上がらない」の語源・由来(1)
「うだつが上がらない」には、大きく分けて2種類の語源があります。
1つ目は、「うだつ」を「卯建」と表記する場合の語源です。
江戸時代のころ、隣り合った町家の境目に作られた防火壁が「卯建(うだつ)」と呼ばれていましたが、これが次第に装飾的な意味を持つようになり、立派な卯建が裕福な家の象徴となっていきました。
そのことが転じ、出世できないことやよい生活を送れないことを「卯建が上がらない」と表現するようになったとされています。
「うだつが上がらない」の語源・由来(2)
2つ目は、「うだつ」を「梲」と書く場合の語源です。
「梲(うだつ)」とは、屋根の一番高い位置にある棟木(むなぎ)を支える柱で、屋根の重みを受け押さえつけられている部分です。
このことから「梲」は上から押さえつけられることの象徴となり、出世しないことを「梲が上がらない」と表現するようになりました。
また、「梲を上げる」は家を新築することを表すため、「梲が上がらない=棟上げ(家の骨組みを最後まで作り上げること)ができない、つまり甲斐性なし」が転じたという説もあります。
「うだつが上がらない」の漢字表記は?
上記で説明した通り、「うだつが上がらない」の「うだつ」は漢字で「卯建」や「梲」などと書きますが、いずれも頻繁に使う表現ではないため、ひらがなで表記されるのが一般的です。
「うだつが上がらない」の使い方と例文
日常会話で見聞きする「うだつが上がらない」という表現。
「出世できず金銭的にも恵まれない」「ぱっとしない」などの意味なので、面と向かって「うだつが上がらない」を使うと相手を傷つけてしまいます。相手に直接伝える表現としては適していないので、要注意です。
また、「うだつが上がらない」は否定形のみであり、「うだつが上がる」という使い方はしないことも覚えておきましょう。
ここからは、「うだつが上がらない」の場面別の使い方と例文を紹介していきます。
謙遜する時の使い方と例文
「うだつが上がらない」は、謙遜の気持ちを表したい時に使える言葉です。自分を下げることで、相手や周囲の人を立てたい時に活用できる表現でしょう。
・私は田中さんと違ってうだつの上がらない人間ですので、出世なんてまだまだ先の話です
・自分なりに努力はしているのですが、なかなかうだつが上がらないんです。結果を出すのは難しいものですね
噂話などをする時の使い方と例文
「うだつが上がらない」は、その場にいない第三者について話したり噂話をしたりする時にも使われます。
この場合は悪口や陰口のニュアンスで使われることが多いため、ネガティブな表現となることに注意しましょう。
・彼はいつまでたってもうだつが上がらないので、もう期待しない方がいいのかもしれない
・山田くんはうだつが上がらないため、マネージャー候補から外した方がいいだろう
「うだつが上がらない」の類語・言い換え表現
「うだつが上がらない」には、状況や場面によって言い換えることができる類語がいくつかあります。代表的な類語や言い換え表現を確認しておきましょう。
鳴かず飛ばず
「鳴かず飛ばず」とは、「将来の活躍に備えて機会を待っているさま」や「何の活躍もしないでいるさま」を表す言葉です。
本来は、実力のあるものが活躍に備えて待つというニュアンスで使われる言葉でしたが、現代では「何の活躍もしないでいるさま」の意味で使われることが多くなりました。
活躍できていない様子を自嘲的なニュアンスでも表せる言葉のため、「うだつが上がらない」の言い換え表現として使えるシーンは多いでしょう。
・彼は新人時代こそ期待されていたが、結局鳴かず飛ばずだった
・小説家として活動して5年になるが、鳴かず飛ばずの状態である
一向に芽が出ない
「一向に芽が出ない」とは、努力がなかなか実らない様子を表す言葉です。いつまでもぱっとしない様子を表せる言葉のため、「うだつが上がらない」の類語として考えられるでしょう。
・自分なりに努力はしているが、一向に芽が出ない
・このまま一向に芽が出ないと、役者として有名になるという夢は叶わないだろう
甲斐性なし
「頼りにならないさま」や、「情けないさま」などを意味する「甲斐性なし」という言葉も、「うだつが上がらない」の類語です。
根性ややる気がなく出世や成功ができない人に対して使われることが多い表現なので、「うだつが上がらない」の類語として挙げられるでしょう。
・彼は甲斐性なしのため、家族を養えるとは到底思えない
・周囲から甲斐性なしといわれていると知り、自信をなくしてしまった
伸び悩む
期待されていたところより低い水準で停滞することを表す「伸び悩む」という表現も、「うだつが上がらない」の類語だと考えられます。出世できない人やぱっとしない人などを遠回しに形容する時に使用される言葉です。
・周囲からは期待されていたものの、彼は伸び悩んでしまった
・デビュー直後は注目を集めたようだが、その後は伸び悩んだ
「うだつが上がらない」の英語表現
ここでは、「うだつが上がらない」の代表的な英語表現を下記2点ご紹介します。
no hope of getting ahead
「no hope of getting ahead」は「うだつが上がらない」の英語表現の一つです。
「get ahead」は「出世する」という意味なので、「no hope of getting ahead」を和訳すると「出世の望みがない」となります。よって「うだつが上がらない」と同じニュアンスで使用することができます。
意味: 彼はうだつが上がらないね。
can't get on in the world
また、「can’t get on」や「never get on」なども、「うだつが上がらない」の英語表現として挙げられます。「get on」は「出世をする」という意味があるため、「can’t get on」を直訳すると「出世ができない」になり、「うだつが上がらない」と訳せるのです。
意味: 彼女の兄弟はうだつが上がらないという噂を聞いたよ。
「うだつが上がらない」の意味や語源、使い方などを理解しておこう
「うだつが上がらない」は、出世がなかなかできないことや金銭的にうまくいかないことなどを表す慣用句です。面と向かっていうと相手を傷つけてしまう可能性がある点や、否定形でしか使えない点などには十分に注意しましょう。
「うだつが上がらない」の使い方や類語・英語表現などを理解しておき、誤用することなく使えるようにしましょう。