就活生から常に人気のある「保険業界」。待遇の良さや安定したイメージから「受けてみたい」という人は多いかもしれませんが、実際には、どのような仕事をするのでしょうか。
この記事では、保険業界とはどのような業界で、職種には何があるのか、また、保険業界で働くメリットやデメリット、必要となるスキルについて解説しています。「保険業界が気になるけれど、実はあまり詳しく知らない」という人は、ぜひ参考にしてください。
■保険業界はどのような業界?
金融業界に属する保険会社は、銀行や証券会社と並び、就活生からの注目が高い企業です。しかし、同じ金融業界でも、銀行や証券会社とは扱う分野が異なり、業務も全く違ったものとなっています。保険業界を就職先の選択肢に入れているなら、保険会社の仕事内容をあらかじめ把握し、それに合わせた対策を行いましょう。
さて、保険会社には、「生命保険会社」と「損害保険会社」があります。まずは、それぞれで取り扱う商品や主な仕事内容を見てみましょう。
・生命保険会社
生命保険会社では、「第一分野」と呼ばれる定期保険、終身保険、養老保険、個人年金保険などの商品を取り扱います。これらの保険商品の特徴は、人の生死に関して一定の保険金が支払われるという点です。
生命保険会社の主な業務は、2つあります。1つは、契約者から保険料を受け取り、契約内容に沿って保険金を支払う業務です。こうした「保険業務」を行うには、金融や保険の知識が必要なのはもちろんですが、顧客のライフプラン(※)に応じた保険商品を提案することも求められます。
もう1つの業務は、「資産運用(金融業務)」です。契約者から受け取った保険料の一部を有価証券や不動産などで運用し、将来の保険金や配当金の財源に充てています。
(※)結婚、住宅購入など人生で想定されるイベントを、それにかかる金額も含め計画すること
・損害保険会社
損害保険会社では、「第二分野」と呼ばれる保険を取り扱っています。第二分野の保険商品は、「リスクやトラブルに備える保険」であり、自動車保険や火災保険のほか、海外(国内)旅行保険、バイク保険、賠償責任保険などさまざまな保険が該当します。
損害保険会社の主な業務は、保険商品を販売すること、そして、事故や災害の損害査定を行い、被害に遭った人に保険金を支払うことです。また、単に保険金を支払うだけでなく、顧客の不安が解消するよう寄り添い、安心も届けることが求められます。
なお、第一分野の保険、第二分野の保険のほかに、「第三分野」と呼ばれるがん保険や介護保険、医療保険、傷害保険などもあります。この第三分野の保険は、生命保険会社でも損害保険会社でもどちらでも販売することが可能です。
ちなみに、保険業界には保険会社のほかに、「保険代理店」という事業者もあります。保険代理店では、顧客と保険会社の間に入り、保険の各種サービスを提供しています。
■保険会社の職種には何がある?
前項では、生命保険会社と損害保険会社で取り扱っている商品や、主な仕事内容をご紹介しました。では、保険会社の職種にはどのようなものがあるのでしょうか。
ここでは、「営業」「事務」「商品の開発企画」の3つの職種を中心に解説します。
・営業
保険会社の営業職は、顧客のライフプランを把握し、それに適した保険商品を提案、販売することが仕事です。営業方法としては、電話や飛び込みによってアポイントを取る「アウトバウンドセールス」が主流となっています。
営業職は保険の販売が主な仕事ですが、顧客との会話から要望やニーズなどをくみ取り、それを保険の開発担当者に伝える重要な役割も担います。さらに、保険会社と顧客をつなぐ大切なポジションであるため、社内外へ向けて常にコミュニケーションを取ることも求められるのです。
なお、保険の営業には、個人営業と法人営業があり、それぞれ業務の特徴は異なっています。個人営業は、消費者個人を対象としていて、基本的に、保険の単価が低くなります。そのため、複数の契約を獲得しなければなりません。
一方で、法人を顧客とする場合は単価が高くなるため、「1契約が取れればいい」ということもあります。しかし、規模の大きい契約を扱うことには重圧がかかり、また、契約を取るまでには時間を要することが多いです。
営業職にはこのような苦労がありますが、しっかり成果を出せば、その頑張りが給与に反映される点は大きな魅力でしょう。
・事務
保険会社の事務職は、商品の契約確認や書類作成などを業務としています。顧客からの問い合わせに対応するなど、契約後のアフターフォローも事務職の仕事です。さらには、保険料の領収や入金処理など、営業をサポートする業務もあります。
事務職はお金を扱うことで責任感を問われますし、顧客からの相談窓口となるため、コミュニケーション能力も求められるでしょう。
さらに、保険契約に携わる立場として、専門的な知識も必要です。保険に関する専門用語や法律などを把握しておかなければならず、就職後に学ぶことも多くあります。
なお、大手保険会社では加入者が多く、作業量が膨大になるケースも。事務処理の正確さだけでなく、素早く作業をこなすスピードも欠かせない仕事です。
・商品の開発企画
保険を多く販売するには、営業の腕も大切ですが、「ニーズのある保険商品」を売ることも重要です。そのため、保険会社では、既存の商品を売るだけでなく、常に新しい商品の開発や企画が行われています。
保険会社における開発企画は、社会情勢やライフスタイルの変化、市場のトレンド、需要などさまざまな要素を考慮し、新たな保険商品を生み出す仕事です。営業を通じて顧客の声を聞くほか、市場の分析などを行い、保険商品の開発に役立てていきます。
開発企画は社会情勢などに常にアンテナを張っておく必要があり、また、新しい商品の開発のみならず、既存商品の改良もしなければなりません。広い視野で物事を見ることができ、時代のニーズを敏感に察知できる人には向いている職種と言えるでしょう。
・その他の職種と必要なスキル
保険会社には、「営業」「事務」「商品の開発企画」のほかにも、資産運用やマーケティング、ITなどの部門があります。
選考の際、学部学科は不問として募集されていることが多いですが、商品の開発企画などは数学や金融工学、確率統計といった専門知識が求められます。
また、ファイナンシャルプランナーや簿記などの資格を取得しておけば、就職で有利になることもあります。営業職では、自動車免許が必要となることも多いですが、応募の時点では必ずしも必要なく、就職後に取得すれば問題ありません。
■保険業界で働くメリットとは
就活生に人気の保険業界ですが、「なぜ人気なのか詳しくは知らない」という人も多いかもしれません。そこでここからは、保険業界で働くメリットについて解説します。
1.給与水準が高い
1つめのメリットとして、保険会社は給与水準が高いという点が挙げられます。厚生労働省の「令和3年 賃金構造基本統計調査」によると、産業別の賃金は男性では「金融業、保険業」が最も高く、1カ月の給与は485.1千円となっています。
また、初任給も高い傾向にあり、平均的な金額より数万円程度多い保険会社もあるようです。
2.保険を通じ、顧客の人生に寄り添える
2つめのメリットは、保険を通じて顧客の人生に寄り添えるという点です。
生命保険会社なら、ライフプランに最適な保険商品を提案することで、顧客の人生をより良くするお手伝いができます。損害保険会社なら、顧客が自動車事故や火災などに見舞われた際、迅速に対応することで、精神的にも経済的にも安心してもらえるでしょう。
保険会社の業務には重い責任を伴うものも多いですが、その分、非常に大きなやりがいを感じられる仕事でもあります。
3.海外でも活躍のチャンスがある
近年は、少子高齢化の影響などにより、保険の国内市場は縮小傾向にあります。そのため、海外への事業展開を試みる保険会社も増えているのです。
海外には、保険加入者数がまだ少ない国も多くあります。大きな可能性を秘めた地で働けるチャンスもあるため、チャレンジ精神のある人にとっては、特に魅力となるのではないでしょうか。
■保険業界のデメリットとは
一方で、保険業界で働くなら、知っておくべき点もあります。保険業界ならではのデメリット、大変さとはどのようなものなのでしょうか。
1.離職率がやや高い
保険業界は、他の業界と比べて離職率がやや高い傾向にあります。離職の主な理由としては、「営業のノルマが厳しい」「顧客からのクレームに対応しなければならない」「膨大な量の事務作業をこなす必要がある」などが挙げられます。
また、保険会社では責任の重い仕事が多く、それを担う人への負担が大きいことも関係しているかもしれません。保険業界を目指すなら、「離職する人も多い業界である」ということを、頭の片隅に置いておきましょう。
2.仕事がハードである
仕事がハードなのも、保険業界の大変なところです。営業職の場合、1日で複数の営業先を回ることもしばしば。特に個人営業なら、顧客の都合に合わせて土日に仕事をすることもあります。
また、顧客には最新情報を伝える必要があるため、営業の合間を縫って知識のアップデートもしなくてはなりません。体力はもちろん、知力も問われる仕事です。
3.実力主義で、シビアである
こちらも特に営業職に当てはまりますが、給与がどれだけもらえるかは本人の実力次第、というシビアな面があります。実力主義はメリットになる一方、実績が出せなければ昇給や出世は望めませんので、デメリットとも考えられるでしょう。
また、常に勉強することが求められるため、「就職してまで新しいことを学ぶのは嫌だ」という人には向かない仕事と言えます。
■就職を希望するなら、しっかり理解を深めよう
保険業界について漠然としたイメージしかなかった人も、業務内容や魅力、大変さを知ることができたのではないでしょうか。さまざまな面を考慮し、この業界は自分に向くのか、この業界で働きたいのか、しっかりと向き合ってみましょう。
保険業界は、難関の就職先です。就職を希望するなら、業界や企業への理解を深めてチャレンジしてみましょう。