富士山麓の町、山梨県・鳴沢村。ここで農作物や林の木々を食害する害獣である「野生シカ」に対する取り組みを発見した。超美味なソーセージに生まれ変わったシカに感謝し、おいしくいただいた様子をレポートしよう。
自然の恵みは野生動物の食害と隣合わせ
今回、サイクリングの取材で山梨県・鳴沢村を訪問。eBikeと呼ばれる電動アシストが付いたマウンテンバイクやロードバイクで山中を走ってきた。
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鳴沢村はとにかく自然が豊かで、さすが富士山麓の町。とはいえ、自然の恵みは「害獣被害」と表裏一体でもある。林の道を走る中で、樹皮が傷つけられた木が目についた。サイクリングコースを案内してくれた地元ガイドに聞くと「シカの仕業です」とのこと。
どうやら、野生のニホンジカが生息しているらしい。
取材終了後、「道の駅なるさわ」に寄ったところ、館内の「JAなるさわ物産館」で地元産と思われるシカのソーセージ「ふじさん紅葉ソーセージ」が販売されていた。
なぜシカ? と思ったけれど、もしかしてさっきの樹皮をかじったニホンジカと関係あるのかもしれない?
帰りのタクシーで運転手さんに「この辺では鹿の食害が多いのですか?」と聞いてみると、「富士山周辺の農家さんはお困りのようですね。とはいえ、山の中でたらふく餌を食べられるので里の方には降りてこないですよ」とのこと。
とはいえ、林業や農業従事者にとって、鹿の食害は本当に困った問題だろう。植えたばかりの苗木を食べたり、木の樹皮や枝葉を食べたり剥いだりして、木々が正常に育たないという問題が生じていると聞いたこともある。
シカ対策とアウトドアブームがマッチ
鳴沢村ではどんなシカの食害が出ているのだろうか。またさっき見かけた「ふじさん紅葉ソーセージ」は害獣対策の一貫なのだろうか? JA鳴沢村の担当者に話を聞いてみた。
まず、シカ食害の現状を聞くと「野生のニホンジカは増えていて、森林では樹木の新芽を食べてしまいます。畑に降りてきて農産物を食べてしまうことがあり、出荷に影響することがあります。被害防止のため柵を設置しても、シカは簡単に飛び越えてしまうんです」とのこと。
そうした中、食害や接触事故の予防や、適切な生態系の維持を目的に、地元の猟友会により駆除のための狩猟が行われるようになったのだそう。駆除されたシカは専門の加工会社を経由して、野生のシカ肉を使った「ふじさん紅葉ソーセージ」として提供されるようになったというわけ。
「山梨県内の近隣エリアでも、野生のシカ、つまりジビエの有効活用を目指し、『シカカレー』や『イノシシカレー』など、工夫を凝らしたメニューや加工品が誕生しました。鳴沢村の野生鹿肉ソーセージも、そうした山梨ジビエの一つとして人気の商品です。昨今のアウトドア・キャンプブームということもあって、バーベキューの食材として人気があります。ジビエ自体に興味をお持ちの方も多いですし、珍しいということでお求めになる方もいらっしゃいます」。
富士山麓の豊かな自然の中でバーベキュー。そこでジビエ、つまり正真正銘「地の物」がいただけるなんて、この上ない贅沢なのでは!
におい・クセなし! ヘルシーな赤身肉
さて、筆者も「ふじさん紅葉ソーセージ(野生鹿肉ソーセージ) プレーン」を購入。帰宅後、さっそく試食した。無菌パック包装なので、袋のまま鍋に投入してボイルできるのがとっても便利。加熱処理済みなので、そのまま食べてもOKだ。
ジビエ肉だと、クセやにおいが気になるのではないかと思ったが、鼻を近づけても薫香が食欲を刺激するのみだ。ちなみに「ふじさん紅葉ソーセージ」という商品名、「紅葉(もみじ)」はシカ肉のことを指す。語源は花札の絵柄から来ているとか……そういえば、紅葉とシカは一緒に描かれている。そんなことも思い出しつつ、食べてみよう。
口に含むとパキッと皮が弾け、肉汁があふれ出す。とはいえ、脂の量は程よく、あっさりとした味わい。もしかすると、ポークのソーセージより食べやすいかも。道の駅で、合わせて飲もうと買っていた地元産クラフトビールに合わせるとさらに美味。
半分をボイルし、残り半分はフライパンでノンオイル・ローストでいただいた。程よく焼き目がついたら食べ頃。フライパン調理だと、さらに旨味が凝縮される感じがあり、これはバーベキューにもきっと合うはず。
ソーセージをかじり、その余韻でビールをグビリ。これは、カレーやパスタなどの具材にも良さそうだし、多様なアレンジができそうだ。
(DATA)
道の駅なるさわ
山梨県南都留郡鳴沢村 8532-63
Webサイト:道の駅なるさわ