JR西日本が今年3月に実施したダイヤ改正では、近畿エリアでも列車の減便など寂しい内容が多かった。そんな中、おおさか東線(新大阪~久宝寺間)では、普通列車に使用された201系を置き換え、221系を導入。鉄道ファンらを中心に話題になった。

  • 今年3月のダイヤ改正に合わせ、おおさか東線の普通列車は片側3ドア・転換クロスシートの車両221系に統一

■郊外の線区へ転属が進む221系

221系はJR西日本発足後の1989(平成元)年にデビューした近郊型電車。転換クロスシートを備えた片側3ドアの車両で、ラッシュ時においてもスムーズな乗降を可能とした。機能面では界磁添加励磁制御を採用し、営業最高速度は120km/hとされている。2両編成から運用でき、現在は最大12両編成を組む。

デビュー当初は私鉄との競合区間であるJR神戸線・JR京都線(東海道・山陽本線)などで運行される新快速や、大和路線(関西本線)の大和路快速に投入。その後、223系・225系が登場したことで、嵯峨野線(山陰本線)・奈良線といった郊外の線区での活躍も目立つようになった。

  • JR京都線・JR神戸線で活躍する221系。225系の新製投入にともない、吹田総合車両所奈良支所に転属する

2020年2月、JR西日本は2020~2023年度にかけて225系を新製し、JR神戸線・JR京都線に144両を投入して221系を置き換えると発表。捻出した221系は吹田総合車両所奈良支所に転属し、201系を置き換えることとなった。2008(平成20)年の先行開業(放出~久宝寺間)以来、おおさか東線で活躍した201系であったが、約14年でピリオドが打たれた。

■221系の導入でグレードアップした印象に

筆者は4月の平日、取材の帰りに奈良駅から大和路快速に乗り、久宝寺駅からおおさか東線の普通列車に乗車することにした。新大阪駅へ向かうおおさか東線の列車は、大和路線の天王寺方面と同じ3番線から発車する。足もとの乗車位置案内を見ると、221系のドアの位置に合わせ、イメージカラーのブルーグレーで「おおさか東線」と記した三角印がお目見えしていた。これで乗車位置案内は計4種類(大和路線の丸印・三角印、おおさか東線の三角印・丸印)となり、ずいぶんにぎやかになった。

しばらくすると221系が入線。関西に住んでいると、221系はおなじみの顔だが、それでも行先表示器に映し出された「新大阪」が新鮮に見える。片側3ドア・転換クロスシートでトイレも設置した車両となり、ロングシートの201系と比べてグレードアップした印象を受ける。12時46分、新大阪行の普通列車は久宝寺駅を後にした。

発車後の車内を見ると、昼下がりということもあり、全体の4割ほど埋まっている。転換クロスシートのせいか、学生同士の語らいもにぎやかに聞こえる。221系は70km/hほどのスピードで走行するが、片側3ドアの車両ということもあり、阪急電鉄をはじめ関西私鉄の車両のような趣が感じられた。

12時55分、近鉄奈良線との接続駅であるJR河内永和駅に到着。一気に混雑し、ドア端の補助席を使う乗客も目立った。おおさか東線の普通列車は長らくロングシートの201系が使われてきたが、近畿エリアのJR線では片側3ドア・転換クロスシートの列車に乗る機会が多いこともあって、補助席の扱いも手慣れたものだ。

隣の高井田中央駅でも多くの乗車があり、13時1分、列車は放出駅に到着。学研都市線(片町線)と接続するこの駅で乗客が入れ替わり、隣のホームに到着した学研都市線の区間快速に乗り換える人も多かった。

  • 221系の普通列車が新大阪駅へ

学研都市線では、快速・区間快速も普通列車も片側4ドア・ロングシートの車両207系・321系で運行される。JR神戸線・JR京都線の場合、新快速・快速は転換クロスシートの221系・223系・225系、普通列車はロングシートの207系・321系で運行されるだけに、放出駅で快速・区間快速(学研都市線)がロングシート、普通列車(おおさか東線)が転換クロスシートという逆転現象が生じている点が興味深かった。なお、おおさか東線の直通快速も引き続きロングシートの207系・321系で運行されている。

放出駅から隣の鴫野駅まで、学研都市線とおおさか東線が並走する。ただし、学研都市線の区間快速は鴫野駅を通過するため、おおさか東線の普通列車で放出駅から鴫野駅まで1駅だけ利用する人もいるようだった。

新大阪~放出間は2019年3月に開業した区間だが、放出~久宝寺間と比べて利用者が少ないように感じられる。列車が南吹田駅を発車し、左に大きく曲がると、通い慣れたJR京都線と並走。終点の新大阪駅には13時18分に到着した。おおさか東線の列車が発車する1・2番線ホームにつながる階段付近に、221系の導入を告知するポスターが貼られていた。

今回は平日の日中時間帯に乗車したこともあり、片側3ドア・転換クロスシートの221系でもとくに問題なく対応できていた様子だった。まだ朝ラッシュ時間帯に乗車できていないものの、コロナ禍前の2019年度でも最混雑率が100%を切っているので、とくに問題はないだろうと思われる。

■通勤形電車201系は引退が近づく

221系の導入により、おおさか東線から撤退した201系は、大和路線が最後の活躍の舞台となった。とはいえ、大和路線でも221系が順次投入されるため、遅くとも2024年度までに引退する可能性が高い。201系が引退すると、大和路線もおおさか東線と同じく片側3ドア・転換クロスシートの車両に統一されることだろう。

  • 片側4ドア・ロングシートの通勤形電車201系。大和路線での活躍も残りわずかに

JR西日本の近畿エリアでは、阪和線も片側3ドア・転換クロスシートの車両に統一されるなど、普通列車においてもクロスシートが当たり前になりつつある。トイレ付きということもあり、ロングシートの通勤型電車と比べてサービスは大きく向上する。片側3ドア・転換クロスシート車両への統一がどこまで進むのか、今後の動向に注目したい。