帝国データバンクは4月30日、上場する主要外食100社を対象に実施した「価格改定動向調査」の結果を発表した。それによると、3割が過去1年に値上げを実施。飲食店の原価率は18年ぶりに急騰し、上昇幅は過去最大になるという。
上場する主要外食100社における、2021年4月~22年4月までの過去1年間で実施されたメニューの価格改定を調査した結果、3割に当たる29社で値上げの実施が判明。各メニューの価格改定額(各メニューでの最大値)は、平均で77円だった。
値上げを行った企業では、牛丼やファミリーレストラン、うどんなどの「低価格チェーン」などが多くを占めたが、消費者への影響を最小限に抑えるため、ベースの低価格商品では値上げ幅を抑えつつ、大盛サービスなどの追加料金や、中高価格帯のメニューで値上げを行う傾向に。
値上げの要因としては、「食肉」「小麦粉」「原油」が高騰。中でも、輸入牛肉の価格上昇による影響が大きく、米国産ショートプレート(バラ肉)の1キロ当たり卸売価格は、2021年4月以降上昇を続け、同7月には前年同月比83.1%増の1,130円を記録。足元でも高値で1,000円を超えるなど、高止まりが続いている。小麦粉や原油価格の高騰も多くの企業で要因に挙げており、特に原油価格は輸送費のほか、コロナ禍で増大したテイクアウト需要で包装材のコストが増加。コロナ禍でテイクアウトなどに注力した企業では、対応するためのスタッフを配置するための人件費増も負担となった。
こうした原材料価格の高騰により、外食各社の原価率が急速に悪化。2021年度業績が判明した飲食店約600社の売上高売上原価率平均は37.5%と、前年度(36.3%)を1.2pt上回る結果に。前年度からの上昇幅は過去20年で最も大きいほか、過去10年間では最高、2003年度(37.9%)以来18年ぶりの高水準を記録した。
それぞれの業態でみると、前年度からの上昇幅が最も大きいのは「喫茶店」で4.2pt上昇。原価率平均36.9%は、過去20年で最も高い数値に。イタリアンやフレンチなどの「レストラン」(39.6%)は3.6pt上昇し、40%台にせまったほか、「そば・うどん店」(36.9%)は2.9pt、安価なメニューが多い「大衆食堂」(44.4%)は2.3pt、「居酒屋」(35.9%)は1.7pt上昇。輸入食材の上昇に加え、居酒屋などではアルバイト確保のための人件費といった負担が増加したケースも見受けられた。
飲食店ではコスト削減や新たなメニューの提供、調達材の国産への切り替えなど、原材料価格の上昇を価格に転嫁させないための対策に知恵を絞っているが、さまざまな世界情勢を鑑み、このまま円安などが長期化すれば、夏以降に「値上げ」が相次ぎ実施される可能性もあるという。