羽生九段、リーグ連続在籍30年の記録を達成
藤井聡太王位への挑戦権を懸けて争われる、お~いお茶杯第63期王位戦(主催:新聞三社連合)の挑戦者決定紅白リーグの最終一斉対局が5月2日に東西の将棋会館で一斉に行われました。
挑戦権争いに関するカードを紹介しますと、まず紅組が豊島将之九段(3勝1敗)―伊藤匠五段(3勝1敗)、近藤誠也七段(3勝1敗)―佐々木大地七段(2勝2敗)です。近藤七段が勝った場合は豊島―伊藤戦の勝者とプレーオフが行われ、近藤七段が敗れた場合は豊島―伊藤戦の勝者が挑戦者決定戦に進出します。
白組は澤田真吾七段(3勝1敗)―羽生善治九段(2勝2敗)と池永天志五段(3勝1敗)―糸谷哲郎八段(2勝2敗)のカードがあり、1敗者が一人になった場合はその棋士が挑戦者決定戦に進みます。澤田七段と池永五段がともに1敗を守った場合は両者によるプレーオフです。そして3勝2敗で4名が並んだ場合は、この4名同士の直接対決の結果により、糸谷八段が挑戦者決定戦に進みます。
■池永五段が大きな勝利
この4局で最初に決着がついたのは、池永―糸谷戦でした。糸谷八段の先手から角換わりとなり、相早繰り銀から池永五段が先攻します。対してうまく攻めをいなした糸谷八段がペースを握ったようですが、池永五段も自玉を安全にして決定打を与えません。中盤の△5五銀~△6二桂という手順で先手の攻めを遅らせた池永五段が逆転に成功し、最後は一閃の竜切りで先手玉を寄せ切り、勝利しました。
■羽生九段が連続在籍30期の大記録を達成
続いての終局は澤田―羽生戦。こちらは澤田七段の先手で横歩取りとなります。序盤から飛車交換が行われる大乱戦となりますが、42手目の△1八飛が先手の動きに制限をかける好手でした。以下は羽生九段が緩急を織り交ぜる指し回しでリードを広げ、勝利しました。この結果、白組は池永五段の優勝となります。池永五段は自身初の挑戦者決定戦進出です。そしてもう一人のリーグ残留者は羽生九段となりました。羽生九段は初参加の第34期からリーグ残留以上の連続記録を継続することになりました。12人中8名が落ちるリーグで30年に渡り一度も陥落がないというのは偉業です。
■豊島九段は逆転で1敗を守る
紅組はまず1敗対決の豊島―伊藤戦が決着しました。相掛かりから先手の伊藤五段がペースをつかみますが、76手目の△4五桂が先手玉に迫りつつ、自玉の退路も広げる一石二鳥の手で豊島九段が逆転に成功。最後は自玉が打ち歩詰めで逃れているという見切りで、豊島九段が1敗を守りました。
■近藤七段敗れ、佐々木七段が残留を決める
最後に残ったのは近藤―佐々木戦。近藤七段の先手から角換わりの大乱戦となります。後手玉が入玉を目指して、先手がそれを阻止する攻防が続きます。混戦を抜けるきっかけになったのは130手目の△3七銀で、これを▲同金と取るのは△3九竜と角を取られて先手が入玉を阻止するのは困難になります。近藤七段は▲2五馬と切り、△同玉とさせて後手玉を自陣から遠ざけますが、後手は下段にも駒が多く、入玉が遠ざかってもかえって自玉が安全になりました。対して先手玉は遠巻きにではありますが包囲網を作られてしまい、これを脱することが出来ないと見た近藤七段、無念の投了となりました。この結果、紅組からは豊島九段が挑戦者決定戦に進出し、佐々木七段のリーグ残留が決まりました。
5月31日に行われる挑戦者決定戦は豊島九段―池永五段戦となりました。豊島九段が前期のリベンジを目指して2期連続での挑戦となるか、池永五段が初のタイトル挑戦を果たすか、要注目です。
相崎修司(将棋情報局)