愛知県がんセンター(ACC)は4月27日、膵臓がんの症例対照研究を行い、特に多量の飲酒(1日アルコール摂取量46g以上=日本酒換算1日2合以上)は、非飲酒者と比べて1.57倍高い膵臓がんリスクが認められ、飲酒が欧米人だけでなく日本人にとっても膵臓がんのリスク因子であることを確認したと発表した。

同成果は、ACC がん情報・対策研究分野の小栁友理子主任研究員、同・がん予防研究分野の松尾恵太郎分野長らの研究チームによるもの。詳細は、日本癌学会が刊行するがん・腫瘍全般を扱う機関学術誌「Cancer Science」に掲載された。

飲酒の重要な発がんメカニズムの1つにアルコールの代謝産物である「アセトアルデヒド」によるDNA損傷が知られている。「ALDH2(2型アルデヒド脱水素酵素)」はアセトアルデヒドを無害な物質に分解する酵素だが、日本人のおよそ半数が、その遺伝子上の1つの塩基がGからAに変異した“Aアレル”を保有しており(rs671多型)、アセトアルデヒドの分解能力が低くなっているという。

Aアレル保有者は、一般的にお酒に弱いとされる人たちで、飲酒によるアセトアルデヒド曝露量の上昇に伴い、頭頸部や食道、胃など、さまざまながんのリスクが高まることが知られている。一方で、rs671多型のAアレル保有者は少量の飲酒でも、アセトアルデヒドが体内に蓄積することで引き起こされる、顔が赤くなるなどのフラッシング反応により飲酒行動が抑制され、発がんリスクの低下も認められているという。

こうした背景のもと、研究チームは今回、このような飲酒およびALDH2による発がんへの関与が、膵臓がんにも当てはまるのかを検討することで、日本人集団における飲酒行動と膵臓がんとの関連およびその背後にあるメカニズムを明らかにすることにしたという。

今回の研究で対象とされたのは、ACCで25年にわたって実施されてきた大規模病院疫学研究の参加者より選出された膵臓がん症例426人と性・年齢を適合させた非がん対象者1456人。

飲酒は膵臓がんのリスク因子であることが、欧米人を対象としたこれまでの研究では示されていたが、日本人集団でのエビデンスは乏しかったという。これが今回の研究の結果、日本人にとっても飲酒は膵臓がんリスクと有意に関連し、特に1日のアルコール摂取量が46g以上の多量飲酒者は、非飲酒者と比べて1.57倍高い膵臓がんリスクが認められ、日本人にとっても飲酒は膵臓がんのリスク因子であることが示されたとする。

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    飲酒の膵臓がんリスクとの関連 (出所:プレスリリースPDF)