出口六段の意欲的な序盤作戦を、藤井叡王が迎え撃つ

藤井聡太叡王に出口若武六段が挑戦する、第7期叡王戦五番勝負第1局が、4月28日(木)に東京都千代田区「江戸総鎮守 神田明神」で行われています。

■フレッシュなタイトル戦

前期の叡王戦は豊島将之叡王に藤井聡太二冠(段位はいずれも当時)が挑戦。藤井二冠が3勝2敗で奪取して、史上最年少での三冠を達成しました。そして今期、藤井叡王へ挑むのはタイトル戦初登場となる出口若武六段です。五段戦予選から破竹の勢いで勝ち上がり、挑戦者決定戦では服部慎一郎四段に苦戦するも、終盤で逆転して、大舞台への切符をつかみ取りました。19歳の藤井叡王は別格としても、26歳でのタイトル挑戦は十分に速いスピードで、若さ溢れる戦いが期待されます。

出口六段はタイトル戦こそ初めてですが、藤井叡王との番勝負は経験しています。三段時代に新人王戦決勝三番勝負まで勝ち進み、藤井七段(当時)と戦いました。その時は2連敗で敗れましたが、両者の直近の戦いでは出口六段が勝っています。下馬評ではさすがに藤井ノリの声が多いでしょうが、開幕局を制すれば流れも味方にできるかもしれません。

■出口六段の趣向

開幕戦なので、藤井叡王の振り歩先による振り駒が行われ、藤井叡王の先手番となりました。戦型は相掛かりに。見慣れた序盤戦と思いきや、開始からわずか10分、序盤早々に出口六段が温めていた研究手を披露しました。△3六飛!

△8六歩▲同歩△同飛と飛車先の歩を換えた後に、横っ飛びに歩をかっさらった一手です。

この手は一歩得の実利は得られるのですが、その瞬間8筋はガラ空きになり、飛車も不安定な位置になります。▲8二歩の桂取りや飛車の8筋への転回など、さまざまな攻め筋を受け止める覚悟がないと指せない手です。若武者らしい意欲的な手をこの大事な開幕局で披露しました。

対する藤井叡王は小考を重ね、さらに歩を捨てて相手の陣形を乱していきます。結果藤井叡王は2歩損、局面を収められると苦しくなる藤井叡王がどのように戦いを起こしていくかが焦点となりそうです。

本局の持ち時間はチェスクロック使用で4時間。決着は本日夕方以降になる見込みです。

相崎修司(将棋情報局)

出口六段(左)の研究手を迎え撃つ藤井叡王(提供:日本将棋連盟)
出口六段(左)の研究手を迎え撃つ藤井叡王(提供:日本将棋連盟)