宮崎駿監督のアニメ映画『となりのトトロ』が、イギリスの名門演劇カンパニー、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー(RSC)によって初めて舞台化されることが27日、明らかになった。今年10月からロンドンのバービカン劇場で上演される。
このプロジェクトは、映画で音楽を手掛けた作曲家の久石譲氏が舞台化を提案し、宮崎駿監督が快諾したことでスタート。久石氏がエグゼクティブ・プロデューサーを務め、フェリム・マクダーモット氏が主宰するカンパニー、インプロバブルが制作協力し、RSCと日本テレビが共同製作する。
以前から『となりのトトロ』の舞台化を熱望してきたRSCは、シェイクスピア作品以外にもミュージカル『マチルダ・ザ・ミュージカル』など、傑作を送り続けてきた。
演出は『アクナーテン』でローレンス・オリヴィエ賞を受賞するなど、数々のオペラ作品を手掛けてきたフェリム・マクダーモット氏、脚本は書き下ろし作品『オッペンハイマー』でRSCが世に送り出した注目の若手脚本家のトム・モートン=スミス氏が担当する。
コメントは、以下の通り。
■久石譲氏(エグゼクティブ・プロデューサー/音楽)
宮崎駿監督の映画『となりのトトロ』が、イギリスのロイヤル・シェイクスピア・カンパニー(RSC)によって舞台化されます。
演出はフェリム・マクダーモット。ミニマルミュージックの作曲家フィリップグラスのオペラも演出している優れた演出家で、『となりのトトロ』も大好きです。
今回のチームは、フェリムを中心に、熱気を持って、クリエイティブな努力を重ね続けています。
日本にはミュージカルや舞台を好きな人が大勢います。ところが、日本発の世界中で上演されているオリジナル舞台作品、あるいはミュージカル作品がありません。
「となりのトトロ」は世界中の人が知っている日本の作品です。もし舞台になったら、世界に出ていく最初の作品になるんじゃないか、そういう思いがあって「僕が観たい」と、宮崎さんに話したのがきっかけです。宮崎さんからは「久石さんがやるなら」と言われました。
僕は原作の映画に携わっていたので、映画を壊したくないという思いが強くあります。
最初から日本語で舞台化したら、どうしても映画と被ってくる。ならば外国でやったらどうかと考えました。
この作品に本当の意味で普遍性があるなら――僕はあると思っていますが――まったく違うカルチャーで育った人たちが違う言語でやっても、きっと世界中の人に伝わるはずです。
宮崎さんは佇まいの美しい方です。いつもシャツの一番上までボタンを締めているような宮崎さんの雰囲気は、イギリスと合う。それもあって、RSCに決まった時には本当に嬉しかったです。
外国で舞台化すると、スペクタクルになってしまう心配があります。トトロが飛び回ったりすることがないよう、僕は言い続けています。
お互いに率直に意見を言い合える、いい関係で作っています。
とても素晴らしい舞台になると思っています。
今年の秋です。楽しみにしていてください。
■フェリム・ マクダーモット氏(演出)
私たちが手がけるのは、世界中で多くの人が愛する映画『となりのトトロ』です。それを美しい音楽とともに、舞台にします。
パペット、役者と、命を吹き込みます。映画で音楽を手がけた久石譲が、私たちをリードしてくれています。
ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー(RSC)をはじめ、パペットクリエーターのバジル・ツィスト、美術デザインのトム・パイ、トム・モートン=スミスの脚本、これらが素晴らしいコラボレーションとなって結実します。本当に楽しみにしています。
■鈴木敏夫氏(スタジオジブリ・プロデューサー)
宮崎駿が描いた、バス停で少女とトトロが佇む1枚の絵を見た時、僕はこれを「映画にしたい」と思いました。
なぜなら、宮さんがこの映画を作ってくれたら、子どもの心に戻れると思ったからです。
時代は1955年。舞台は日本の田園。これは僕の少年時代の話です。
できあがった映画は、観た人がみんな子どもの心に戻れる作品になりました。
そんな『となりのトトロ』を、今度は「舞台にしたい」と言ってくれたのが、映画で音楽を作ってくれた久石譲さんです。
宮さんは「久石さんがやるなら」と快諾してくれました。
久石さんが選んだのは、イギリスの名門、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー。
果たしてどうやってトトロと出会えるのか。
とても楽しみにしています。