永瀬流「負けない将棋」の面目躍如
藤井聡太棋聖への挑戦権を懸けて争われる、第93期ヒューリック杯棋聖戦(主催、産経新聞)の挑戦者決定戦、渡辺明名人―永瀬拓矢王座戦が4月25日に東京・将棋会館で行われ、158手で永瀬王座が勝利し、藤井棋聖への挑戦権を獲得しました。両者によるタイトル戦は初めてとなります。
本局は先手の渡辺名人が金矢倉からさらにもう一枚の銀を囲いに引き付けた堅陣を組み上げます。対して永瀬王座は3枚の金銀を三段目に押し出す形を取りました。こちらは玉の堅さよりもバランスを重視したと言えます。
千日手の可能性もありましたが、渡辺名人は果敢に打開策を取りました。ですが結果的にはそれがまずかったようで、徐々に陣形を押し上げていった永瀬王座が、長い中盤戦でリードを奪います。92手目の△4九角が気づきにくい好手でした。飛車取りですが、真の狙いは馬を作って、入玉の足掛かりにすることです。こうなると先手は入玉を阻止しにくくなっています。この時点で駒の損得はありませんが、先手は穴熊なのがたたっており、相入玉の勝負には持ち込めません。
入玉して自玉の安全を確保した永瀬王座は、一気に先手の穴熊を崩して勝利。昨年の棋聖戦挑戦者決定戦で渡辺名人に敗れた借りを返した形になりました。藤井棋聖との五番勝負は6月3日(金)に兵庫県洲本市の「ホテルニューアワジ」でスタート。普段は研究パートナーだという両者がタイトル戦の舞台でどのような戦いを見せるか、注目です。
相崎修司(将棋情報局)