「氏神様」という言葉を聞いたことがありますか? 初詣や合格祈願で神社を訪れることはあっても、氏神様にお参りするという意識を持っている人は少ないかもしれません。この記事では、氏神様の基本的な意味や歴史、お参りの際の作法などを解説します。
自分がまつるべき氏神様の調べ方も紹介するので、この記事を読んでぜひ氏神様にお参りしましょう。
氏神様とは?
はじめに、氏神様の基本的な意味や歴史について解説します。
氏神様の本来の意味と歴史
氏神様は「うじがみさま」と読み、人々が住む地域を守る、神道の神様のことです。もともとは血縁で結ばれた同じ氏姓を持つ一族、つまり氏族の間で、自分たちの祖先にあたる神様や、自分たちと縁の深い神様を「氏神様」としていたことに由来します。
氏神様と氏子
かつては同じ氏神様をまつる同族同士を「氏人(うじびと)」「氏子(うじこ)」と呼んでいました。
現在では血縁的なつながりという意味合いは薄くなっており、その地域に住んで同じ氏神様をまつる人々を、その氏神様の「氏子」と呼ぶようになってきています。
産土様・鎮守様と混同されるように
氏神様は産土様(うぶすなさま)・産土神(うぶすながみ)、また鎮守様(ちんじゅさま)・鎮守神(ちんじゅがみ)と呼ばれることもあります。
自分が生まれ育った土地を守る産土様と、国や王城などの場所を守る神様である鎮守様、そして一族の守り神である氏神様は、もともとは別々の神様でした。しかし時代とともに血縁より地縁が優先されるようになったことなどで、氏神様と鎮守様、産土様の区別があいまいになり、混同されるようになりました。そして氏神様も現在では「地域の神様」といった意味合いが強くなっているのです。
氏神様の調べ方
引っ越ししたときや、自分がまつるべき氏神様を知りたいと思ったとき、氏神様を知る方法はいくつかあります。
神社本庁・神社庁などに問い合わせる
神社本庁は、日本全国約8万社の神社を包括する組織です。また神社本庁の地方機関として各都道府県に神社庁があるので、自分の住む都道府県の神社庁に問い合わせてみるといいでしょう。神社本庁のホームページには、全国の神社庁の連絡先が記載されています。
また神社本庁のホームページ以外にも、インターネットで検索すると氏子区域を検索できるサイトなどがあります。
地図で調べる
近年ではパソコンやスマートフォンで地図を見ることができるので、地図の中から近くにある神社を探してみましょう。ただし、自分の家の近くにあるからといって、その神社の氏子区域に属するとは限りません。地図上で氏神神社を見つけたら、直接神社に確認してみましょう。
近くの神社に尋ねる
実際に近所を歩いて回ってみて、見つけた神社に問い合わせてみるのもいいでしょう。多くの場合は家からそう離れていないところに神社があるはずなので、氏子区域はどこになるのか聞けば教えてくれるはずですよ。
氏神様にまつわるルール
現在では、かつてのように血縁の集団で同じ氏神様をまつるという習慣は減りつつあり、また生まれた地域に一生住み続ける人も少なくなりました。そこで現在における氏神様のとらえ方、決め方などをまとめました。
氏子になるには?
本来の氏神様は引っ越しをしても変わりませんでしたが、現在では自分の住む地域の神様を氏神様とするのが一般的です。神社によって氏子の区域が決められており、氏子区域に住み、地域のお祭りに参加することで氏子になれる場合もあります。
また氏神様にお宮参りをすることで氏子として認められたり、氏子入りという儀式を行ったりする場合もあるようです。ただし氏子に対する考え方は、神社や地域によってさまざまあります。
引っ越したらどうする?
現在の氏神様は一族の守り神というよりは「地域の神様」の意味合いが濃くなっています。そのため引っ越しをした場合は、氏神様は引っ越し先の神社になると考えることができます。
引っ越し先の氏神様が気になる場合は、後述する方法で調べてみるといいでしょう。なお氏神様が変わっても、今までお世話になった氏神様への感謝の気持ちは忘れないようにしましょうね。
お葬式はどうなる?
日本で執り行われている一般的なお葬式は仏式です。そのため氏神様とは別の概念となります。もし神式のお葬式を行いたい場合は、自宅やセレモニーホールで行うこともできます。
ただし神道では基本的に「死」は「穢(けが)れ」と考えられています。穢れは「気枯れ」とも書き、「身近な人を失って周囲の人々が気落ちした状態」を意味します。こうした穢れを神社に持ち込まないために、神社でお葬式はできません。まずは氏神神社に電話などで死去の連絡をして、手続きを進めましょう。
お参りのタイミングや方法
いつ氏神様にお参りするべきなのかや、参拝方法を見ていきましょう。
決まった頻度はない! 迷ったら初詣や人生儀礼のときにお参りを
氏神様へのお参りの頻度やタイミングについては、明確な決まりはありません。例えば年に1回でも、毎日でも構わないとされています。大切なのは、自分の気持ちを神様へお伝えすることです。迷ってしまう場合は、一年の幸せを祈願する初詣、またお宮参りや七五三などのタイミングにあわせてお参りするのもいいでしょう。
参拝方法
氏神様をお参りするときは、神社への一般的な作法と同じようにすれば問題ありません。「正しい作法でないとご利益がない」ということはありませんが、お参りの仕方を知っておくと、自信を持って気持ち良く参拝できるでしょう。
氏神様へのお参りの効果を上げるには? お参りの仕方や頻度などを解説
氏神神社を含む神社の種類
日本には数多くの神社がありますが、すべてが氏神様をまつる氏神神社というわけではありません。氏神神社とそのほかの神社の定義についてまとめました。
日本全体を守る伊勢神宮
日本の代表的な神社である伊勢神宮は、全国各地の神社の中でも別格です。皇祖(こうそ)、つまり天皇の祖先である天照大御神(あまてらすおおみかみ)をまつっており、日本の国土・国民全体を守る神社とされています。
かつては伊勢神宮と、自分の一族を守る氏神神社以外には参拝してはならないとされたほど、神聖視されている神社です。
地域を守る氏神神社
今まで説明してきたように、氏神様をまつる神社です。その地域に住む人々を守っています。氏神様をまつる氏神神社は、氏社(うじやしろ、うじしゃ)ともいいます。
個人で特別に信仰する崇敬神社
氏神様と異なり、地縁や血縁にかかわらず個人的に信仰する神社を崇敬神社(すうけいじんじゃ)といいます。
崇敬神社は神社の由来や地勢によって氏子を持たない場合もあり、神社の維持や教化活動のために崇敬会といった組織を設けていることもあります。
どちらも同時に信仰して大丈夫?
それぞれの意味合いが異なるため、普段から氏神様にお参りしている場合でも、崇敬神社にお参りしても問題ないとされています。
氏神様のことをよく知って、日頃から大切にしよう
氏神様の基本的な意味や、氏神神社についてまとめました。氏神様の定義は時代とともに変化しつつあるものの、多くの人に大事にされている存在であることに変わりはありません。
自分の氏神様を知って日頃から大切にし、感謝の気持ちを持つようにしましょう。