そこで研究チームは今回、原料ガスの供給方法を工夫した独自のMOCVD法を用いることで、AlN結晶中の残留不純物および結晶欠陥の密度を低減させて作製した高品質AlN半導体を用いて、良好な特性のトランジスタを動作させることに挑戦。作製されたAlNトランジスタの電流-電圧特性を調べたところ、AlN上にAl組成を徐々に減少させた組成傾斜AlGaN層を形成し、AlNの代わりにオーミック接触の形成が容易な低Al組成AlGaNを金属と接触させることにより、オーミック特性による線形性の良い電流の立ち上がりと小さいリーク電流が示されたほか、パワー半導体の性能として重要な絶縁破壊電圧も、1.7kVと大きい値が確認されたとする。

  • AlNトランジスタの電流-電圧特性

    (a)AlNトランジスタの電流-電圧特性。(b)AlNトランジスタのオフ状態での電流-電圧特性 (出所:NTT Webサイト)

また、高品質AlNの作製と良好なオーミック接触を実現したことにより、整流性の良いショットキー特性が得られたという。

さらに、AlNトランジスタは高温で性能が向上し、500℃において、電流は室温の約100倍に増加したとするほか、500℃においてもリーク電流は10-8A/mmと小さく抑えられることも確認。この結果、AlNトランジスタは500℃においても106を超える高いオンオフ電流比が示されたとする。

  • AlNトランジスタの模式図

    (左)AlNトランジスタの模式図。(右)AlNトランジスタの室温(RT)から500℃までのゲート電圧に対するドレイン電流の変化 (出所:NTT Webサイト)

なお、研究チームでは、AlN半導体の低損失・高耐圧パワー半導体への応用と耐環境デバイス応用を目指し、ヘテロ接合形成によるさらなる特性向上、高温におけるデバイス動作物理の解明などを今後進めていくとしている。

  • 組成傾斜有無による電流-電圧特性の違い

    AlGaN組成傾斜層なし(a)、あり(b)の金属/n型AlN構造。(c)組成傾斜有無による電流-電圧特性の違い (出所:NTT Webサイト)