「融通を利かせてほしい」「あの人は融通が利かない」など、普段から何気なく耳にすることも多い「融通が利く」という言葉。
実はこの「融通が利く」という言葉、使用シーンによって「臨機応変に対応する」「お金を貸す」という2つの意味があります。今回の記事では、「融通が利く」という表現について、2つの意味と語源、類義語と対義語、英語表現などについて解説します。
状況に合わせて「融通が利く」がどんな意味かを判断できるようにしましょう。
「融通が利く」の意味
「融通が利く」には、「物事に対して臨機応変にうまく対処できる」と「お金に困っていない。金銭的余裕があり相手に貸すことができる」という2つの意味があります。
例えば接客をしていて「融通が利く人でよかった!」とお客さまに言われた場合は「柔軟な対応をしてくれて助かった」という意味になりますし、「5万円ほどなら融通が利きます」といえば「5万円くらいまでなら払える・貸せる」という意味になります。
逆に「融通が利かない」と言われれば、「頑固でマニュアル通りの対応しかしてくれない」「気が利かない対応である」あるいは「お金の余裕がない」ということです。
文脈や状況に合わせて、どちらの意味かを考えるようにしましょう。
融通とは
「融通が利く」の「融通」の読み方は「ゆうずう」です。「滞りなく通じること、互いに気持ちなどが通じ合うこと」「金銭が流通すること、あるいは金銭などの賃借や、やりくりすること」という意味の熟語です。
融通の語源
「融通」のルーツは、仏教の宗派の一つである華厳宗の「融通無碍」という言葉に由来するとされています。「融通」はこの世のすべての事物が滞りなくつながっている様子、「無碍」は妨げるものがない様子のことです。
なにかにとらわれることなく、自由でのびのびとした行動や発想について「融通無碍」と表現します。
「融通が利く」の類義語
「融通が利く」は複数の意味を含む言葉なので、文脈によってはどのような意図で使用されたのか会話相手がピンとこない可能性もあります。よりはっきりと自分の意志を伝えたい場合や誤解を招きそうな内容の場合は、以下の言い換え表現や類義語を適宜利用するようにしましょう。
臨機応変
「臨機」は事態に直面した状態、「応変」は変化に対応することで、「状況や事態に応じて適切な手段や対応をすること」を表します。
順応(じゅんのう)
環境の変化などに合わせて行動などを変えることを「順応」といいます。生物学あるいは生理学用語では「反応よりゆるやかな適応変化」のことを指します。日常用語としては入社時や引っ越しをしたときなど、新しい環境に慣れていく際に使用されることが多いでしょう。
物わかりがよい
「物わかりがよい」とは、「物事や人の事情などを理解する能力が高いこと」を意味します。「物分かりが早い」という形でもよく使われますね。
機転が利く
その場の状況に応じて機敏に気を利かせることを、「機転が利く」と表現します。機転が利く人とは、とっさのひらめきでトラブルを解決するなど、状況に合った対応を柔軟にできる人のことです。
融資
特に「お金を融通すること」を表現したいのであれば「融資する」あるいは「融資してほしい」と言い換えることもできます。融資とは資金を必要としている人に対してお金を貸し付けることを指す言葉なので、より直接的に表現するのであればこちらが適しているでしょう。
「融通が利く」の対義語
「柔軟さに欠ける対応をする」など、「融通が利く」と反対の意味を表現したい際にはどんな熟語を使えばよいのでしょうか。対義語についても確認し、使いこなせるようにしておきましょう。
頑固
かたくなに自分の意見や態度を変えようとしない人のことを「頑固」といいます。「他人の意見や状況に合わせて態度を変えない」「杓子定規な対応」という意味で、ネガティブなイメージでとらえられることがあります。
四角四面(しかくしめん)
非常に真面目で厳格な人やその様子のことを「四角四面」と表現します。元は真四角のことを指す言葉でしたが、転じて真四角のように堅苦しくかしこまっている、面白みに欠けることを表すようになりました。
「融通が利く」の使い方
「融通が利く」という言葉は広くさまざまな物事を「調整できる」際に使います。「融通を利かせた対応をする」は「相手に合わせて柔軟な対応をする」という意味ですし、「開店資金を融通してほしい」は「お金を貸してほしい」という意味になります。
特に仕事の面で「融通が利く」と表現する場合は、自分の都合に合わせて時間の調節がしやすい働き方のことを指します。例えば「融通が利くバイト」といえばシフト制で休みが自由に取りやすく、最低出勤日数や一日の最低出勤時間、始業時間などの制約がない、あるいは少ないアルバイトのことを指すことが多いようです。
「融通が利く」の敬語表現
目上の人に融通を使う場合であっても、「ご融通」と表現する必要はありません。「ご」をつけている方が丁寧な表現になるように思えますが、自分のための行為に「ご」はつけないというルールがあるため、そのまま「融通を利かせていただく」などの表現にします。
「融通が利く」の例文
特にビジネスシーンにおいて「融通が利く」という言葉を使うことも多いでしょう。具体的な例文をご紹介します。
- 融通が利いた対応をしていただき、ありがとうございました
- 足りない商品の融通が利かないか、他店舗に問い合わせてみましょう
- 30万ほどなら資金の融通を利かせられますが、いかがいたしましょうか
「融通が利く」の英語表現
「融通が利く」に直接相当する英語はありませんので、「柔軟な」あるいは「お金を貸す・借りる」のどちらかの英訳をすることになります。
「柔軟な」であれば「be flexible」「be accommodating」、お金を貸すは「lend」、借りるは「borrow」などを使うとよいでしょう。
英語での「融通が利く」の使用例
英文:Thank you for being accommodating with our request.
訳:こちらの要望に融通を利かせていただきありがとうございます。
英文:You should talk to her. She is very flexible.
訳:彼女に相談してみて。彼女は融通が利くから。
英文:My parents lent me the money for my wedding.
訳:実家に結婚資金を融通してもらった。
英文:It would be helpful if we could borrow some funds.
訳:いくらか資金の融通を利かせていただけると助かるのですが。
ビジネスでは「融通を利かせる」ことも大切
元々は仏教用語であった「融通無碍」から来ている「融通を利かせる」という言葉。現在のビジネスシーンでは「こちらの意図をくんで柔軟に対応してほしい」「資金を貸してほしい」と直接言いにくい要望を伝える際に、「融通を利かせてほしい」と表現します。
しっかりと決まったルールに沿って仕事をすることも大切ですが、それだけではうまくいかない場合もあるのが仕事の難しいところ。適度に融通を利かせて、みんなが気持ちよく仕事ができるようにしましょう。