一方、トップシェアのソニーも、世界初となる新技術を次々と自社のCMOSイメージセンサに搭載していくほか、Samsungが先行して取り組んできた画素数向上にも着手。総合力でシェアの拡大を進め、2025年には60%の確保を目指している。
ソニーは現在、TSMCが熊本に建設中の新工場(JASM:Japan Advanced Semiconductor Manufacturing)に出資し、CISの周辺回路をJASMにて製造する計画としているほか、Samsungの主要顧客である中国のスマホメーカーの攻略も進めていることから、今後、両社の競争はますます激しくなり、Samsungは思うようにはシェアは伸ばせないという見方が日本では有力である。
ソニーで半導体製造を担当するソニーセミコンダクタソリューションズは2021年末、2層トランジスタ画素積層型CMOSイメージセンサ技術の開発に世界で初めて成功したと発表した(図1参照)。
これまで同一基板上で形成していたフォトダイオードと画素トランジスタの層を別々の基板に形成し積層することで、従来比約2倍の飽和信号量を確保し、ダイナミックレンジ拡大とノイズ低減を実現し撮像特性を向上させることに成功したとする。この技術が採用する画素構造は、従来の画素サイズに加えて、今後のさらなる微細画素においても、画素特性の維持・向上が可能になるという。画素を縮小し、画素数を増やすことに専念するSamsungとは異なり、ソニーの画質重視のポリシーは明確である。
ソニーは、AppleのiPhone向けCISにおいて、過去数年にわたって画質重視の支障になる画素の微細化を進めず、1200万画素に抑えてきたが、次世代iPhoneでは4800万画素の大型CISが採用されると言われている。こうした動きは、スマホ向けのみならず、さまざまな分野でも進めており、例えば産業機器向けに、グローバルシャッター機能搭載CISとして有効1億2768万画素の「IMX661」の商品化を発表している。同製品は対角56.73mmと大型チップであり、画素ピッチ縮小による画質低下を避けたものと思われる。