放送されるたびに「カオス」と話題のフジテレビの深夜バラエティ番組『ここにタイトルを入力』。18日の放送は『フワちゃんの浅草のんびりツアー』と題し、「フワちゃんが今や若者が集まる街として生まれ変わった浅草の最新スポットを紹介!」と予告されていた。

しかし前回の放送で、バイきんぐ・小峠英二のダブルブッキングを両番組に半身ずつ出演させて解決しようとしたスタッフが、そんな額面通りの番組を作るわけがなく――。

(※以下にネタバレあり)

  • 浅草でロケをするフワちゃん (C)フジテレビ

    浅草でロケをするフワちゃん (C)フジテレビ

■「頑張って何とかはしたので」「大丈夫です」

冒頭は、『ここにタイトルを入力』でおなじみとなった、スタッフから出演者への釈明シーン。今回のやらかしは、「あの浅草ロケ、撮影したデータが全部なくなってしまいまして」というもの。衝撃を受けるフワちゃんに、スタッフは「頑張って何とかはしたので」「大丈夫です」と今週も“虚勢”を張り、不安いっぱいのフワちゃんを押し切った。

そして本編がスタート。映し出されたのは、浅草寺で「フワちゃんの浅草のんびりツアー~!!」とタイトルコールを叫ぶフワちゃんだが、元気印を象徴するその声ははるか遠く、姿も遠方にあり、おまけに画質は荒いし暗い。この違和感に、もしや防犯カメラの映像ではないかと直感する。

続いてのカットは、Googleストリートビューや一般人のInstagramで雷門を見せ、プロのナレーションで番組の趣旨説明をすることによって、体裁を取り繕おうとしている。どうやら、「頑張って何とかはした」というスタッフの強弁は、失ってしまった映像を、街やネットにある素材で埋め合わせたことを指すようだ。

その後は、YouTuberの撮影に映り込んでいたり、ロケの様子を野次馬に動画撮影されていたりと、全くこちらに目線をくれないフワちゃんの姿が。視聴者に楽しんでもらえる番組を目指し、フワちゃんを撮影するスタッフたちも映り込んでいるが、「これが命の次に大切なロケの映像素材を失くしてしまった人たちか…」と、虚しさと滑稽さが入り交じる不思議な感情にさせてくれる。

また、激しいテロップのYouTuberの映像に、フワちゃんのボイスフォローのテロップを重ねているため、画面上がカオス状態になる場面も。さらに、カラフルなフワちゃんをキャスティングしたことで、防犯カメラから見る群衆の中でも比較的発見しやすいという不幸中の幸いな現象も起きている。

■もしかして社会風刺? いやいや…

こうして、ドライブレコーダー、インターホンのカメラ、検温カメラなど、街にある様々な撮影機器に映り込んだフワちゃんをつないで番組を構成。ロケ素材を失くしてしまう凡ミスを犯すスタッフが、代替素材を探すために驚異のリサーチ能力を発揮していることや、音声が拾えていない部分はテロップやアテレコで補完するので、フワちゃんの発言を瞬時に速記or記憶する超人的能力を持っているという矛盾も笑えてくる。

他にも、「その手があったか!」な映り込みが次々に登場するので、これを考える会議はさぞかし楽しかっただろうな…と想像。

一方で、この番組には「大都会・東京は、防犯カメラが至るところに張り巡らされた監視社会!」「いつ誰に撮られているか分からない1億総カメラマン時代!」という皮肉が込められているのか!?……と一瞬考えたが、“半身だけど鏡で映して1人分”と見せることに「全然違和感ない」と小峠を説得したスタッフから、そんなメッセージが発せられるはずがないという結論にすぐ達した。だが、ゲストの美川憲一と人力車で歌う「さそり座の女」に登場する「地獄のはてまで ついて行く」という歌詞が、妙に刺さってきたのも事実だ。

■ブラウザの小さな「タブ」ワードに注目

大御所・美川憲一が、ほとんど自分がきれいに映らないこの番組に乗ったのは、さすがコロッケによる自身の誇張ものまねを見たときに大喜びしたというエピソードで知られるだけあって、“面白いことなら受ける”という度量の広さを感じた。

それはもう1組のゲストであるナイツにも感じることだが、一般人であるロケの取材先のお店の人たちが、ほとんど情報が伝わらず、PR効果が弱まってしまうのに協力してくれたのは、浅草ならではの下町人情からなのか。このように、いろんな人たちの理解があって成立していることを考えると、見ていてより楽しい気分になってくる。

番組では、お店の基本情報を公式サイトを映していくつか紹介しているが、そのブラウザの「タブ」に注目してほしい。スタッフが直前にGoogleで検索したと思われるワードが読み取れ、そこには何とも切ない心境の移り変わりがにじみ出ているはずだ。ぜひ、TVer・FODでご確認を。

  • (C)フジテレビ