藤井五冠、初の人間将棋でも鮮やかに寄せ切る
4月17日に開催された天童桜まつりの人気イベント「人間将棋」にて、藤井聡太五冠と佐々木大地六段の対局が行われました。昨年、一昨年は新型コロナウイルスの影響で中止されていましたが、今年は観覧人数の制限を実施した上で3年ぶりの開催となります。
「人間将棋」とはその名の通り、およそ15メートル四方の将棋盤の上で実際の人間たちを将棋駒に見立てて行われる将棋です。駒役の人間と対局者が甲冑を身にまとった武者装束で現れたり、対局者による掛け合いは語尾に「ござる」をつける武者言葉を使ったりと、戦国時代の戦に見立てた工夫が施されています。
■初登場の藤井五冠「借りを返す絶好の機会」
藤井五冠と佐々木六段は今回が人間将棋初参加です。対局開始のあいさつでは、藤井五冠は佐々木六段に対して公式戦で2勝2敗、佐々木六段の師匠である深浦康市九段に1勝3敗と苦戦していることから「今日はその借りを返す絶好の機会じゃ」と意気込みを述べました。
■飛車角交換から藤井五冠ペースに
本局はお互いに飛車先の歩を交換するオーソドックスな相掛かりの出だしから、後手の藤井五冠が早い段階で飛車角交換を仕掛けました。この部分的な攻防は2014年4月に行われた第72期名人戦第1局▲森内俊之名人―△羽生善治三冠戦と類似した進行です。
その後は藤井五冠がペースを掴み、64手目△9四角と両取りの角を打った手に対して佐々木六段は「藤井どの鋭いな、激痛でござる」と頭を悩ませます。
■不動駒をなくして長手順を詰ます
人間将棋では盤上すべての駒を動かすことが暗黙の了解とされています。両対局者は自分の動いていない駒を自然な形で動くように調整したり、動いていない相手の駒を取ったりすることで不動駒を減らしていきます。
108手目、藤井五冠が佐々木六段の最後の不動駒であった香車を取る△1九龍でついに盤上から不動駒がなくなりました。 優勢の藤井五冠はその後も鋭く攻め「一気に寄せてかかろう」と宣言し、銀のタダ捨てから始まる17手詰めを読み切りました。最後は佐々木六段が「悔しいが参った」と投了し、藤井五冠の勝利となりました。
「いい経験になりました」と感想を述べた藤井五冠、次の公式戦は4月28日に叡王戦五番勝負第1局での出口若武六段との対局が予定されています。
槇林一輝(将棋情報局)