「月給」と「手取り」の違いはわかっていても、何がどのくらい引かれているのか、きちんと把握している人は少ないのではないでしょうか。今回は、引かれる税金や社会保険料の説明とともに月給28万円の手取り額がいくらになるのかを紹介します。

さらに、月給28万円の生活イメージも解説。生活費の内訳例を紹介するので、毎月の家賃や貯蓄額の参考にしてみてください。

  • 月給28万円の手取り額

    月給28万円の手取り額と生活費のイメージを紹介します

月給28万円の手取り額

月給28万円の手取り額がいくらになるのか、それぞれの計算方法とともに紹介していきます。

月給と月収の違い

まず、月給28万円の「月給」について説明していきます。似たような言葉に「月収」がありますが、この2つの違いについて確認しておきましょう。

  • 月給とは

「月給」は、「基本給」と「固定手当」を合わせたものです。「基本給」とは、職種や年齢、勤続年数などを基に決められる給料の基本となる賃金のことで、これに役職手当、職務手当、住宅手当、資格手当などの「固定手当」を加えたものが「月給」となります。

「月給」=「基本給」+「固定手当」

  • 月収とは

「月収」は、「月給」に「変動手当」を加えたものです。「変動手当」とは、月ごとに変動する手当や社員ごとに違いがある手当のことで、時間外手当(残業手当、休日出勤手当)、通勤手当などが該当します。

「月収」=「月給(基本給+固定手当)」+「変動手当」

変動手当が加わる分、月収の方が多くなりますが、月によって変動があるため、今回はわかりやすく「月給」28万円として、手取り額を算出します。

月給から税金と社会保険料を引いたものが手取り

会社員になって給料を得ると、社会保険料と税金の支払いが義務付けられます。社会保険料は健康保険、介護保険、厚生年金保険、雇用保険の4つの保険料を合わせたもので、給料から天引きされます。税金は所得税と住民税で、こちらも給料から天引きされます。

月給28万円の場合、いくら引かれるのか計算してみました。それぞれの説明とともに紹介していきます。

≪前提条件≫

会社員(30歳/東京都在住/独身)、月給(標準報酬月額)28万円、ボーナスなし、協会けんぽ加入、前年の所得も同じとする、基礎控除と社会保険料控除以外の所得控除はないものとする

  • 健康保険

会社員とその家族が対象となり、業務外の病気やケガなどの際に給付を受けられます。なお、業務上の病気やケガについては労災保険の対象となり、こちらは保険料の負担はありません。(全額事業主負担)

保険料は標準報酬月額(通常、4月、5月、6月の給与を平均した額)と標準賞与額それぞれに一定の保険料率をかけて算出します。協会けんぽの場合、令和4年3月分(4月納付分)の保険料率は9.81%(東京都/40歳未満)で、保険料は会社と折半して負担します。

【月給28万円の健康保険料】

標準報酬月額28万円は21等級に該当するため13,734円となります。

参考:令和4年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京都)

  • 介護保険

介護保険は要介護状態、要支援状態になった場合に給付を受けられる保険です。40歳から保険料の支払い義務が発生します。

健康保険の保険料と合わせて徴収され、協会けんぽの場合、令和4年3月分(4月納付分)の保険料率(合わせたもの)は11.45%(東京都/40歳以上)。保険料は会社と折半して負担します。

【月給28万円の介護保険料】

今回の例は40歳未満なので介護保険料はありません。ちなみに40歳以上だった場合は、健康保険料と介護保険料をあわせて16,030円となります。

  • 厚生年金保険

会社員や公務員が国民年金に上乗せして加入する公的年金制度です。保険料は標準報酬月額と標準賞与額それぞれに一定の保険料率をかけて算出します。保険料率は現在18.3%で固定されており、会社と折半して負担します。

【月給28万円の厚生年金保険料】

標準報酬月額28万円は18等級に該当するため25,620円となります。

  • 雇用保険

労働者が失業した時の給付や、失業者のための職業訓練などの給付を行います。育児休業給付や介護休業給付も雇用保険の給付です。原則として、労働者を一人でも雇用する事業所に適用されます。

労働者負担の保険料率は0.3%(一般の事業)ですが、令和4年10月から0.5%(一般の事業)に引き上げられます。

【月給28万円の雇用保険料】

28万円×0.3%=840円

  • 所得税

所得税は、収入から所得控除を引いた金額に対して税率をかけて求めます。所得控除はその年に支払った保険料などを考慮するので、年末まで確定しません。

そのため、毎月あらかじめ決めておいた金額を引いておいて、年末調整で帳尻をあわせます。このあらかじめ引いておく金額を「源泉徴収税額」といい、この金額が所得税として毎月の給料から天引きされます。

【月給28万円の所得税】

国税庁「給与所得の源泉徴収税額表(令和 4 年分)」から、源泉徴収税額を出します。

社会保険料等控除後の金額
28万円-40,194円(社会保険料)=239,806円
扶養親族はいないので
6,210円

  • 住民税

住民税は、その年の1月1日時点で住んでいる住所地に納税する税金です。前年の所得に対して課税されるため、新入社員など前年の所得がない場合は課税されません。2年目以降に住民税が引かれます。

住民税には「均等割」と「所得割」があり、「均等割」は所得にかかわらず定額で課税され、「所得割」は前年の所得をもとに、一律10%(道府県民税4%、市町村民税6%)課税されます。

【月給28万円の住民税】

所得割177,500円
均等割5,000円
計182,500円

182,500円÷12ヵ月=15,200円(100円未満切捨て:中央区|住民税額シミュレーションを使用して試算)

月給28万円の手取り額の計算式

これまでの計算結果をもとに月給28万円の手取り額を出してみましょう。

  • 月給28万円の手取り額の計算式

    ※30歳独身会社員の場合

280,000円(月給) -40,194円(社会保険料) -21,410円(税金)=218,396円(手取り)

月給28万円の手取り額は約21万8,000円となりました。毎月の給料から6万2,000円ほど引かれていることになります。

  • 月給28万円の生活イメージ

    月給28万円の生活イメージを紹介していきます

月給28万円の生活イメージ

月給28万円の手取り額(21万8,000円とします)から考える、生活費内訳をご紹介します。生活費はあくまでも目安ですが、生活イメージの参考にしてみてください。

【月給28万円(手取り21万8,000円)の生活費内訳】

(一人暮らしの場合)

費目 割合 目安額
食費 17% 3万7,000円
住居費 27% 5万9,000円
水道光熱費 6% 1万2,000円
通信費 6% 1万2,000円
保険料 3% 7,000円
被服費 4% 9,000円
趣味・娯楽費 4% 9,000円
日用品費 4% 9,000円
交際費 5% 1万1,000円
その他 6% 1万3,000円
貯蓄 18% 4万円
支出合計 100% 21万8,000円

手取りが21万8,000円の場合、その18%である4万円を貯蓄にまわすことができれば、1年で48万円貯蓄できます。

総務省「家計調査/家計収支編2021年」の単身世帯の消費支出を見てみると、勤労者である単身者の1ヵ月の消費支出は17万1,593円となっています。ここで紹介した月給28万円の生活費(上記表)が17万8,000円なので、平均的な生活をしていれば貯蓄4万円は無理のない金額ではないでしょうか。

一方、実家暮らし(親と同居)をしている場合はどうでしょう。食費と住居費、水道光熱費が節約できるので、家に4万円ほど入れたとしても、9万円以上は貯蓄できることになります。1年で100万円以上貯蓄が可能と考えると、10年で1,000万円を超えるので、実家暮らしのアドバンテージは大きいことがわかりますね。

月給28万円から給料を上げるには

月給28万円は、厚生労働省の「令和3年賃金構造基本統計調査」によると、30~34歳の正社員の平均賃金(28万3,700円)に近い金額です。正社員の場合、年齢が上がるとともに給料も上がっていき、55~59歳の39万3,000円がピークとなります。

年齢相応の給料となっているかを考えて、そうでない場合は以下の給料を上げる方法を試してみるといいでしょう。

資格を取得する

資格手当が付く会社なら、資格取得を目指してみましょう。複数の資格を取ることで固定手当を増やすことできます。資格手当が付かない場合でも、昇級するための条件になったり、転職で有利になったりするので、自分の業務に関連した資格をリサーチしておくとよいでしょう。

昇進をする

一般社員から昇進をして役職が付けば、給料が上がります。責任は重くなりますが、それに見合った給料をもらえればモチベーションも上がるでしょう。

ただし、役職が付くと、それに伴って労働時間も増える傾向にあります。中には役職が付くと年俸制となり、残業代が付く一般社員時代と収入面で大差なかったというケースもあるので、労働時間に見合った給料体系であるか確認しましょう。

転職をする

長年勤めても給料が上がらないという場合は、転職を考えてみてもいいでしょう。今いる会社の業績が問題で給料が上がらないのなら、個人レベルの努力ではどうにもなりません。

一方で、業界全体が儲かっていないケースもあります。その場合は、思い切って異業種への転職も視野に入れてみるとよいでしょう。ただし、異業種・異業界への転職は、これまでの経験を活かせるものでないと給料が下がってしまうリスクもあるので、慎重に行いましょう。

≪参考≫
【全110業種】業種別モデル年収平均ランキング2021(1~50位) | マイナビ転職

おわりに

月給28万円は手取りにすると約21万8,000円でした。一人暮らしの場合、平均的な暮らしをしていれば4万円ほど貯蓄ができるイメージです。ただし、気を緩めると支出はすぐに膨らんでしまうので、先に貯蓄分を引いて残りを生活費にする“先取り貯金”によって確実に貯蓄を増やしていきましょう。