不発に終わった3段ロケット

藤井聡太棋聖への挑戦権を懸けて争われる、第93期ヒューリック杯棋聖戦(主催、産経新聞)の決勝トーナメント準決勝、永瀬拓矢王座―佐々木大地六段戦が4月15日に将棋会館で行われ、112手で永瀬王座が勝利しました。

本局は佐々木六段の先手番。角換わり模様の出だしから、永瀬王座が角交換を拒否します。結果として角を換えていない相腰掛銀の形に進みました。42手目に永瀬王座が△9二飛と寄って、後手は端攻めの体勢を整えます。あとはいつ△9五歩の切り札を出すかですが、永瀬王座は中々カードを切りません。端に手が掛かったのは66手目の局面でした。9筋の攻防は香車交換が行われて一段落という感じですが、今度は先手が1筋に手を付けます。こちらは香車交換にはなりませんでしたが、▲1四歩△1二歩の形で押さえ込んだ先手が利を得たようにも見えました。

ですが直後の95手目、▲2六香打を佐々木六段は後悔します。これで先手は敵玉頭の2筋に香・香・飛を3本並べた形になりましたが、同時にこのロケットを発射すると香車を後手に渡すことになります。▲2六香打に永瀬王座は△2五桂打と受けました。以下▲同香△同桂▲同香に△同銀と取り返さず、△7七香と直前に取った香を打ち込んだのが痛烈な一手。これで先手玉はいきなり受けが難しくなりました。

かくして今期の棋聖戦挑戦者決定戦は渡辺明名人―永瀬王座というカードに。これは昨年の挑決と全くの同一カードです。さらにいうと永瀬王座は一昨年の棋聖戦挑戦者決定戦でも藤井七段(当時)に敗れているので、二度あることは三度ある、は避けたいところです。

渡辺名人も2年続けて敗れた藤井棋聖へのリベンジを果たすためにも、この挑戦者決定戦を落とすわけにはいきません。現在のタイトルホルダー3名が頂上で争う形になった今期の棋聖戦からますます目が離せません。

相崎修司(将棋情報局)

3期連続の挑戦者決定戦に駒を進めた永瀬拓矢王座(写真は第69期王座戦第2局のもの 提供:日本将棋連盟)
3期連続の挑戦者決定戦に駒を進めた永瀬拓矢王座(写真は第69期王座戦第2局のもの 提供:日本将棋連盟)