色はくすみ、苔のように見えるまだら模様もちらほら。長年、風雪に耐え続けた石ならではの貫禄ある佇まいに「趣があるなあ」「歴史を感じさせる」としみじみとしてしまう人も多いことでしょう。しかし、このわびさびを感じさせる石、数時間前はつるつるのコンクリート地だったそうで……。

大工の友人に現場に連れて行かれて「馴染ませて」と言われたので4時間半でやっつけました。
@CSModelDesignさんの投稿より引用

  • 「馴染ませて」と言われた綺麗なコンクリート

  • 4時間半でこの仕上がりに!

こちらのツイートを投稿したのは、造形のお仕事をされているC.S.Model Design(@CSModelDesign)のタナカさん。「#これを見た人は加工前と加工後を貼れ」というハッシュタグとともに投稿されたツイートには、ビフォーとアフターの2枚の画像がアップされていました。

加工前の画像には、苔むして古びた石と石の間にむき出しのコンクリートが。周囲は黒くくすんだ石ばかりなので、明るい灰色のコンクリートは目立ち、違和感すら感じます。加工後の画像は、タナカさんがエイジング加工(建物や家具などに長年使い込んできたような加工をすること)を施した後の状態。無機質で冷たささえ感じるコンクリートの柱が、まるで数十年前からこの地で鎮座していたかのような味わい深い石柱に変身しました。

しかもなんとこの作業、かかった時間はわずか4時間半だというのだから驚きです。エアーブラシやローラーなどは使わず、すべて刷毛で行ったそう。その緻密で見事な仕事ぶりに、1.2万件のリツイート、9.3万件のいいねを獲得しました(4月15日現在)。

コメントでは、「馴染ませ方が天才すぎ」「最高すぎる!!!惚れ惚れ 匠の技!!!」「マジで分からないくらい凄いんで驚きました」など、タナカさんの技術を賞賛する声が多数。

また、作業時間の短さに驚く人も多く、「4時間半で50年くらい経過してる」「時を操っている?」などのコメントも。短時間作業でも、タナカさんの技術力はいかんなく発揮され、白い模様のように見える石に生える苔まで、しっかり再現されています。「もう何十年も昔からありそうな感じですね」「凄すぎてお花とかお菓子とかお供えされそうですね」「コンクリートをこんな加工が出来るなんて」といったコメントも目立ちました。

見事な技術で多くの人を驚かせたタナカさんですが、どのようなきっかけがあって今回のエイジング加工をすることになったのでしょうか。また、作業終了後の周囲の反応も気になるところです。タナカさんにいきさつや周りの人の反応について聞いてみました。

投稿者に聞いてみた

--この塗装をすることになった経緯について教えてください。

塗装を依頼したのは、私のスキルを知っている昔からの付き合いである大工の友人です。6年前、一緒にタイ旅行に行ったのですが、帰国後すぐに「ちょっと付き合って」と言われ、荷物を自宅に置いてすぐに片道2時間のドライブに出発。色を確認する現地調査に向かいました。到着したら夜中だったので漫画喫茶に泊まり、明るくなってから現地調査。実施日までに撮ってきた写真を見ながら色の調合をしました。

---タナカさんは、造形のお仕事をされているそうですが、普段からこのようなエイジング加工を行っているのでしょうか。

普段はエイジングっぽい事もしますが、飲食店の内装造形物(最近はホストクラブ多め)を作って塗ったり、6年前は恐竜化石のレプリカを作る仕事などを行っていました。メインは塗装というより造形多めで、塗装はオマケのスキルです。色弱なので色がよく分からないため専門にしたくない、というのもあります。

また、造形の方もアナログもデジタルもやりますし、サイズが大きいものから小さいもの、硬いものや柔らかいものまで何でもやりますので、何が専門なのか自分でもよく分かりません。

--この塗装が完成して、依頼したご友人の反応はいかがでしたか。

大工の友人は大変喜んでくれて、後日、南伊豆での釣り(交通費、宿泊費、全ての飲食費、乗船代金)を奢ってくれました。もちろん作業工賃や材料費も貰いましたが。その釣りでは4.4kgのマハタ(クエみたいな高級魚)が釣れて今度はオレが大変喜びました。

タナカさんがツイートしているC.S.Model Design(@CSModelDesign)では、タナカさんや一緒にお仕事をされているツキムラさんの作品画像もたくさん公開されています。造形の作品も見ごたえたっぷりなので、チェックしてみてはいかがでしょうか。