さつまいもには三大栄養素のひとつである糖質が豊富で、食物繊維やビタミンCも含まれます。「ヤラピン」という、さつまいも特有の整腸作用のある成分も。

今回は、甘みがあってほくほく、大人にも子どもにも親しまれるさつまいもの栄養成分をくわしくご紹介。調理のポイントや保存のコツなども紹介しますので、理解を深めて、おいしく楽しんでくださいね。

  • さつまいもの栄養成分と効能を解説します

さつまいもとは

栄養価の高い根菜として知られるさつまいも。ヒルガオ科のつる性多年草で、日本には17世紀初頭に琉球から薩摩に伝わったことが始まりだとされています。甘藷(かんしょ)、カライモなどとも呼ばれます。

さつまいもは5月~10月の暑い季節に生育し、10月終わりごろ~11月初旬に収穫期を迎えるのが一般的です。収穫してから2~3ヶ月寝かせると、余分な水分がぬけて甘みが増すと言われています。

品種改良もすすんでおり、甘みの濃淡や食感、色、大きさもさまざま。調理方法や用途に合わせて上手に使い分ければ、さつまいもの料理のバリエーションも増え、いろんな味わい方を楽しむことができます。

さつまいもの品種と特徴

さつまいもの種類は大きく3つに分けることができます。火を通した時の食感(ホクホク・ねっとり・しっとり)ごとに紹介します。

ホクホク系のさつまいも
ホクホク、ほろほろとした食感のさつまいもは、粉っぽい舌触りと、さらりとした上品な甘みが持ち味。昔ながらの馴染み深いさつまいもと言えるでしょう。

【代表的な品種】
紅あずま、紅こがね、紅こまち、鳴門金時、宮崎紅(みやざきべに)など

しっとり系のさつまいも
繊維質をほぼ感じないくらいに、なめらかな舌触り。きんとんやようかんを食べているような、ざらつきが非常に少ないのが特徴です。代表的なものはシルクスイートですが、焼き芋にすると蜜がしたたるほど甘みが増す紅まさりなどもあります。

【代表的な品種】
シルクスイート、紅まさり、ひめあやかなど

ねっとり系のさつまいも
ねっとりとした口あたり、クリーミーで濃厚な甘み。焼き芋にすればスイーツのような甘みを持つのが特徴です。高価で希少だとされていた時期もありましたが、最近ではスーパーや量販店の焼き芋コーナーで、お手頃価格で販売されています。

【代表的な品種】
安納芋(あんのういも)、紅はるかなど

  • 同じ焼き芋でも、品種によって味わいはさまざま

さつまいもの栄養成分

ここからは、さつまいもの栄養成分について見ていきます。

<さつまいも(生皮・付き)>100gあたり
エネルギー: 127kcal
・たんぱく質: 0.9g
・炭水化物: 33.1g
・食物繊維: 2.8g
・β-カロテン: 40μg
・ビタミンE: 1.0mg
・葉酸: 49μg
・ビタミンC: 25mg
・カリウム: 380mg
・カルシウム: 40mg
・マグネシウム: 24mg

<さつまいも(焼き・皮なし)>100gあたり
エネルギー: 151kcal
・たんぱく質: 1.4g
・炭水化物: 39.0g
・食物繊維: 3.5g
・ビタミンE: 1.3mg
・葉酸: 47μg
・ビタミンC: 23mg
・カリウム: 540mg
・カルシウム: 34mg
・マグネシウム: 23mg

さつまいもの主な栄養素「糖質」は体のエネルギー源

さつまいもの栄養素といえば、糖質です。栄養成分表で「炭水化物」と表示されるものは、糖質と食物繊維の総称です。「太ってしまうのではないか」というイメージを持つ方もいるかもしれませんが、糖質は体内でエネルギー源とされる栄養素で、三大栄養素のひとつにも数えられる重要なものです。

いものなかでも特にビタミンCが豊富

さつまいもにはビタミンCとビタミンEも豊富で、特にビタミンCは、いも類の中でトップクラスの含有量。ビタミンCといえば、抗酸化作用があり、免疫力向上にも働く栄養素です。

一般的にビタミンCは水に溶け出る性質がありますが、さつまいもの場合、ビタミンCがでんぷん質に守られるため、流出が抑えられるといううれしい特徴があります。

さつまいものカロリーは高め

さつまいものカロリーは、生のもので100グラムあたり127キロカロリー。同じ穀物系野菜であるカボチャは78キロカロリー、じゃがいもは51キロカロリーですので、比べてみるとさつまいものカロリーは高く見えますね。

さつまいものカロリーは焼き芋ではさらに上がり、100グラムあたり151キロカロリー。これは焼くことでさつまいもから水分が抜け、果肉がぎゅっと凝縮されるためです。

  • さつまいもの糖類は、エネルギー源として重要な栄養素

さつまいもの「ヤラピン」って何?

さつまいもがお通じに効くのは、食物繊維が豊富だからという理由だけではありません。さつまいもに含まれる「ヤラピン」という栄養成分も関わっています。

ヤラピンとはあまり聞き慣れない栄養成分ですが、これはさつまいもを切って少し置くと、皮寄りの部分からにじみ出てくる白い汁に含まれています。いも類ではさつまいもにのみ含まれている栄養成分です。

ヤラピンは腸内のぜん動運動に働きかけ、便をやわらかくする効能があります。さつまいもは、単に食物繊維が多いから腸に良いというわけではなく、ヤラピンという栄養素と食物繊維の相乗効果で整腸作用が促されるのです。

  • 断面の白い液体に含まれる「ヤラピン」。整腸作用のある、さつまいも特有の栄養成分です

さつまいもの選び方

さつまいもを選ぶ際は、全体的に張りがあり、皮の色が均一で鮮やかなものがおすすめです。皮の表面の一部が黒ずんでいるものは古い可能性があるので、避けましょう。

さつまいもの断面に黒い斑点があるときは?

生のさつまいもを包丁で切った時、皮に近いところに緑や黒の斑点が現れていることがあります。これは、生育途中または購入後の冷蔵保存などにおける”低温障害”によるものです。

こうした場合のさつまいもは栄養価が損なわれているだけでなく、味にも苦みが出ています。いも類は長持ちするイメージがありますが、冷蔵室に入れっぱなしにならないよう注意しましょう。

さつまいもの調理ポイント

さつまいもをゆでる場合は、好みのサイズにカットして、必ず水からゆでましょう。ゆっくりと加熱することで、さつまいもの甘みが凝縮されていきます。

加熱時間を短くしたいなら、電子レンジ可能もおすすめです。カットして耐熱皿にのせ、湿らせたペーパータオル、ラップの順にかぶせます。蒸気の通り道ができるよう、ラップは密閉せずにふわっと包む程度でOKです。

さつまいもの保存は基本、常温で

さつまいもは低温が苦手なので、基本は常温保存でOK。新聞紙などに包み、冷暗所に置くとよいでしょう。夏場などで気温が高い時季は冷蔵庫の野菜室に入れてもよいですが、やはり新聞紙などで包みます。

生のままカットして冷凍保存しても便利。マッシュポテトにしてからチャック付きの保存袋に入れて、冷凍保存しても。お菓子作りに使えます。

さつまいもは水にあたると傷みやすくなるため、乾燥させた状態で保存するのがおすすめです。

  • さつまいもは新聞紙に包み、常温で保存しましょう

さつまいもはエネルギー源となる糖質が豊富

さつまいもの主な栄養素は、糖質、食物繊維、ビタミンC。食物繊維との相互作用でお通じにつなげる、「ヤラピン」という栄養成分も含んでいます。

糖質は体のエネルギー源として重要な栄養素。そのためさつまいもは、アスリートのおやつにも取り入れられているそうです。

食感や甘みなどでさつまいもの品種もぐんと増えました。色々と試して、好みの品種を見つけてみてくださいね。