社長=エラい。そんなのは常識である。しかし、社長といえど同じ人間で、必ずしもすべてにおいて優れているわけではない。たとえば、かの吉野家の社長がオススメする、吉野家の牛丼のアレンジ方法は信用できるだろうか。
ということで、今回はテレビやネットで話題になっている、「吉野家社長がリアルに愛食している」という牛丼のアレンジ方法を実際に試してみることに。本当に美味しいの?とやや疑ってかかってみたのだが……結論から言えばさすが吉野家、その懐は深かった!
社長流アレンジは本当に美味しいのか?疑問に思うワケ
牛丼チェーンの老舗にして、未だにカリスマ的な人気を誇る吉野家。その社長ともなれば、当然、牛丼の酸いも甘いも知り尽くしているに違いない。
そんな彼がオススメするアレンジ方法なら信用できそうだが、やや気になる点もある。それは……「大企業の社長さんともなると、さすがに庶民の感覚から離れているのではないか」という疑問である。
牛丼といえば、ワンコイン以下で高い満足感が得られる庶民の味方の代表格。つまり、東証一部上場の「吉野家ホールディングス」の社長さんよりも、吉野家を日々利用している我々労働者のほうが美味しく牛丼をいただいているのではないか……という気がしないでもないのだ。
ちなみに、筆者は「山ほど紅生姜を乗せて一気にかき込むスタイル」(=山生姜スタイル)を通している。特にひねりがあるわけでもないので、「よくそれで社長の食べ方に疑念を抱けるな」と言われればそれまでなのだが、正直、吉野家の社長流のアレンジ方法を調べてみただけの段階では、山生姜スタイルが劣るとも思えないのだ。
本当に美味いのか?社長流アレンジをいざ実食!
さて、前置きが長くなったが、そろそろ実際に試してみよう。
注文する商品は、牛丼(つゆぬき)、生卵、お新香である。ちなみに、生卵は黄身部分だけを牛丼で使うことになるので、白身も余さず使いたい人は味噌汁や豚汁を一緒に注文し、中に白身を投入するといいらしい。
ということで、これらを実際にオーダーしたのがコチラ。
ああ、すでにめちゃくちゃ美味そうだ……。
ではさっそく、社長流にアレンジしていこう。
まずは卵の黄身だけを取り出し、牛肉の上にオン。セパレーターを使うと便利らしいが、今回はカレー用スプーンが卓上にあったので、それでサクッと代用してみた。
乗せた黄身はすぐに崩して、牛肉と絡めていく。
で、先述したとおり、残った白身は豚汁にどろっと投入。
続いて、牛肉の上にお新香を容赦なく乗せていく。
最後に七味唐辛子をまんべんなくかけて……
社長流のアレンジ牛丼の完成?!
さて……しつこいようだが、本当に美味しいのだろうか。現時点では何かが劇的に変わったとは思えないが、とにかく食べてみよう。
いただきます!
こ、これは……!そうきたか……美味しい。確かに美味い。
ここは一度冷静になって、その美味さの秘密を整理してみよう。
真っ先に感じるのはお新香のシャキシャキ感と爽やかさ。これが黄身をまとった牛肉の濃厚な旨みと実によくマッチする。牛丼そのものは濃厚なのに、意外なほどサッパリ食べられるのだ。最後は七味唐辛子がピリッと主張し、ほどよく辛めの後味にまとめてくれている。
また、牛丼をつゆぬきにしたことで、全体の素材の味が感じ取りやすくなり、牛肉と生卵の黄身、お新香が奏でるハーモニーがダイレクトに伝わってきているようだ。そもそも、これまでつゆぬき自体を試したことがなかったが、なるほど、こういう効果があったのか……。
途中で追い七味も。卵の黄身でまろやかになっているので、この辛味が本当にいいアクセントになっている。
では、もし普通につゆ入りだったらどうか。それはそれで美味しいだろうが、塩分が高く、ちょっとキツめの味わいになっていたに違いない。つゆを抜いた分の塩分をお新香が担っているからこそ、程よいバランスが保たれているのだろう。
はたまた、生卵の白身まで入れていたらどうか。そうなると今度は塩分がやや足りなくなり、物足りなさを感じたはずだ。もし塩分を補うべく、つゆや醤油をプラスすれば、白身やつゆ(または醤油)でご飯がべちゃべちゃになり、素材同士のハーモニーはここまで感じられなかっただろう。
……と、店内でひとり「う~ん、う~ん」と唸りながら全力で分析してみたが、結論としては、「さすが社長!」と言いたくなるクオリティ。とにかく、細部までしっかり計算されていて、すべてが理に適っている。やはり牛丼を知り尽くした人間だからこその深みのようなものさえ感じさせられた。
社長さん、無駄に疑ってしまいすみませんでした……。
ちなみに、生卵の白身を投入した豚汁のほうも絶品だった。「白身が浮いちゃわないかな?」と半信半疑だったが、全体的にまったりして、一層の食べごたえ・飲みごたえが感じられた。豚汁に生卵って、意外に合うんだなぁ~。
いろんな発見ができた今回の社長流アレンジ方法。山生姜スタイルより美味いかどうかはわからないし、これに関しては人それぞれの好みの問題になってしまうが、吉野家の懐の深さに改めて感じ入った次第である。ぜひ一度、お試しあれ。