ソースネクストは4月13日、会議用360度Webカメラ「KAIGIO CAM360(カイギオ カム360)」を発表しました。発売日は4月14日、価格は88,000円。

同時に、ソースネクストから独立したポケトークが、スマートフォン用の「ポケトークアプリ」のサブスクリプションサービス開始を発表しました。両社が同日開催した発表会の様子をレポートします。

  • 発表会に登壇したソースネクスト 代表取締役社長兼COOの小嶋智彰氏(左)と、ポケトーク代表取締役社長兼CEOの松田憲幸氏(右)

参加者全員の顔を映し出す会議用のWebカメラ&マイク&スピーカー

まずはソースネクストから、KAIGIO CAM360のお披露目がありました。ソースネクストは会議室360度Webカメラとして、KAIGIOシリーズに「Meeting Owl(ミーティングオウル)」をラインナップしています。2022年2月時点で販売台数は2万台を突破しているとのこと。

新製品となる会議室360度Webカメラ「KAIGIO CAM360」は、このMeeting Owlの姉妹製品となります。

  • KAIGIO CAM360(右側)。4基のカメラ、8つの無指向性マイク、10W×3基のスピーカーが一体化したWeb会議用デバイスだ

  • 360度カメラのラインナップ

ソースネクストが全国のリモート会議実施経験のあるビジネスパーソンを対象に行った調査では、リモート会議で困った経験として、システムの煩雑さやトラブル対応、フェイス・トゥ・フェイスに比べてコミュニケーションが取りづらい点があるといいます。

  • リモート会議やハイブリッド会議でのトラブルや困ったこと

また、1か所しか映さない定点のWebカメラと比較して、360度カメラのほうがリモート会議時に議論が活性化すると回答したユーザーは8割に上ったそうです。

Meeting Owlはマイク、スピーカー、カメラがオールインワンとなり、話している最中の人にカメラを自動的にフォーカスしたり、複数台を連結することで広い会議室に対応したりする機能を備えています。参加者各自がマイク、スピーカーを用意すると、会議室内でハウリングが起きることもありますが、Meeting Owlではそうした心配はありません。

しかし、用途や利用環境によっては、参加者全員の顔が均等に見えたほうが話しやすい、外部マイクも接続して集音距離を伸ばしたいといったニーズもあります。

新しいKAIGIO CAM360は、そうしたMeeting Owlでは満たせないニーズに対応する製品として開発されました。

  • KAIGIO CAM360の主な特長

基本コンセプトは「参加者全員を映し出せる」こと。このため、会場全体を映し出すパノラマ画面が表示でき、大人数でも、参加者の顔が見えるミーティングを実現します。

2Kカメラを4つ搭載し、AIが人物を検知して途中で参加者が増えると自動的に人数に合わせて画面を分割する機能を装備。最大9分割まで対応するので、少人数のミーティングに重宝します。もちろん、プレゼンテーション中の一人だけにフォーカスするといったことも可能です。

  • KAIGIO CAM360では最大9分割まで対応し、広いパノラマ画面も可能です。写真は左上から時計回りに、4分割モード、9分割モード(写真では5分割)、120度固定モード、180度モード

無指向性マイクは8つ備え、ノイズキャンセリングやエコーキャンセラー、話者の音声レベルに応じて音量を自動調整して聞き取りやすくするオートゲインコントロールなどの機能が盛り込まれています。

Meeting Owlは専用アプリと連携して、会議時間の傾向や会議参加者の発言割合の分析なども行えますが、KAIGIO CAM360はそうした専用アプリは用意されていません。本体のみで利用できる、導入のしやすさを重視していると言えそうです。

  • インタフェースは上部にまとまっている。タッチで操作可能

ポケトークは「日本より海外の売上が高い」

続いてポケトークからスマートフォン用の「ポケトークアプリ」のサブスクリプションサービスについて解説がありました。

ポケトークは2022年2月に新会社として設立したばかり。ソースネクストから独立してポケトークとしたのは、欧米での展開を睨んでのものだといいます。

欧米では、企業名と代表的な製品名を同じものに揃える傾向が強く、ソースネクストの代表取締役会長兼CEOであり、ポケトークの代表取締役社長兼CEOでもある松田憲幸氏は、「『ソースネクストのポケトーク』ではなく、『ポケトークのポケトーク』のほうが覚えてもらいやすい」と社名を製品名に揃えた理由を説明しました。

  • ポケトーク代表取締役社長兼CEOの松田憲幸氏

アメリカでは、同社の2022年3月の売上高成長率は2倍。ヨーロッパも同様で、イタリアが1.4倍、ドイツが2.2倍、スペインが2.4倍、フランスが5.6倍と好調に推移しており、既に日本での売上より海外での売上の方が遥かに大きくなっています。

また、昨今のウクライナ情勢をかんがみて、ウクライナ大使館にポケトーク1,000台を寄贈したほか、ウクライナ隣接国のポーランドの避難民にも寄贈したそうです。ポーランド語はウクライナ語に似ていて、同じ単語も多いとされていますが、それでも十分な意思の疎通はなかなか難しいようです。

止むに止まれぬ事情で、母国語と違う言語の中で突然生活しなければならなくなった人に、ポケトークは心強いアイテムと言えそうです。

  • ポーランドに避難したウクライナ難民にポケトークを寄贈

スマホがポケトークに早変わり「ポケトークアプリ」

少し話が逸れましたが、同時発表された「ポケトークアプリ」は、KAIGIO CAM360の発表に続き“サプライズ”的に明かされた、iOSとAndroid用のスマホアプリです。

簡単に説明すると、スマートフォンをポケトーク専用端末のように扱えるもの。ユーザーインタフェースも同じで、ポケトークを使ったことのある人であればまったく同じように操作できます。

提供開始日はiOS用とAndroid用のどちらも4月25日からで、価格は週額プランが120円/週、月額プランが360円/週、年額プランが3,600円/週。初回3日間は無料となっています。

【記事追記】ソースネクストは4月25日、スマートフォン用アプリのリリースを延期すると発表しました。詳細はニュース記事「『ポケトーク』のiOS / Androidアプリ、リリース延期に」をご参照ください。(2022年4月25日 21:30)
  • ポケトークアプリの画面

翻訳エンジンはクラウド上で複数のものを自動選択しており、利用言語に応じて得意とするエンジンをバックグラウンドで切り替え、精度の向上を図っています。

話し始めに下部のボタンを押し、話し終わったら放すという「プッシュアンドトーク」のシンプルな操作性は専用機と同じ。ボタンを押すことで話している最中からAIを稼働させられるため、翻訳がすばやく行われるようになっています。

  • 「ポケトークアプリ」のデモンストレーションの様子

ポケトークアプリの展開に関しては、ソフトバンクとの提携も発表。ソフトバンク・ワイモバイルユーザー限定で、ポケトークアプリ6カ月利用無料キャンペーンを実施するとのことです。

ポケトークアプリはかねてよりユーザーの要望が高く、このタイミングでの発表になったのは、ソフトバンクとの提携が実現したことで、多くのユーザーを確保できる見通しが立ったことが大きな理由の1つとなっている、と述べていました。

  • ソフトバンクとともにキャンペーンを実施

また、「ポケトーク字幕」についてもアナウンスがありました。こちらはWindows用MacOS用があり、AI翻訳の翻訳文章を画面上のビデオ画面に重ねて、映画の字幕のように表示するソフトです。ポケトーク端末がなくても、リモート会議に使用しているパソコン上で利用できます。

このポケトーク字幕は2021年12月に発表され、3月末までお試し用で無料配布されていたので、試しに使ってみたというユーザーもいるのではないでしょうか。今後はSB C&Sがポケトーク字幕の販売パートナーになるとのことです。

最後に、松田社長は訪日外国人旅行者数が、コロナ禍で激減し、2019年に3,188万人だったものが2021年にはわずか25万人と、99.2%も減ったことに触れました。

その一方で、コロナ禍が収まったあとに旅行したい国・地域として、日本はトップに位置付けられていることや、日本の物価安が観光業には有利であることなどを紹介。日本政府観光局(JNTO)は、2030年には訪日外国人旅行者数は6,000万人になると予測しており、「言葉の壁をなくす」をコンセプトとする、ポケトークの活躍の場が広がっているとアピールしました。

近年、日本に在住する外国人は増加の一途を辿っています。都心部では街中で外国人の姿を見ないことはありません。ほんの10年、20年前を振り返ると、グローバル化の影響の大きさを感じずにいられません。

もちろん、文化や習慣など、まだまだ壁は多く残っています。それでもポケトークは、さまざまな場面で人々のコミュニケーションを促し、相互理解を深めてくれるデバイスなのではないかと、期待を抱かせられた発表でした。