200手超えの死闘を制す
藤井聡太棋聖への挑戦権を懸けて争われる、第93期ヒューリック杯棋聖戦(主催、産経新聞)の決勝トーナメント準決勝、渡辺明名人―久保利明九段戦が4月14日に東京・将棋会館で行われ、211手で渡辺名人が勝利しました。
本局は渡辺名人の先手で、久保九段が三間飛車に振ります。37手目の▲5七金が珍しい着手で、続いて▲6六金と上がりました。▲6六歩~▲6七金右なら見慣れた形ですが、金を前線に送ることで、中央の勢力争いに勝とうという狙いでしょう。実際、この辺りから段々と先手が指しやすくなっていったようです。とはいえ「捌きのアーティスト」転じて「粘りのアーティスト」の異名も持つ久保九段はそう簡単には土俵を割りません。いつしか手数は100手、150手を数えます。先手が優勢なのは間違いなさそうですが、まだゴールは見えてきません。
決め手となったのは195手目の▲2七角でしょうか。直前の千日手模様を打開して勝ちに行った渡辺名人が、働きのなさそうな1六の角を一マス引くことで、遠く後手陣の急所をにらむ絶好手となりました。以下は渡辺名人が押し切り、長手数の死闘に終止符を打ちました。
渡辺名人はこれで2期連続の挑戦者決定戦進出。前期、前々期と敗れた藤井棋聖に「三度目の正直」の奪回を目指します。挑戦者決定戦の相手となるのは永瀬拓矢王座か佐々木大地六段か。この両者の一戦は本日15日に東京・将棋会館で行われています。挑戦権を獲得するのは果たして誰か、注目です。
相崎修司(将棋情報局)