年間を通じて店頭に並ぶ大根は、汁物、煮物、炒め物、サラダなどに重宝する万能野菜。水分ばかりで栄養がないと思われがちですが、「大根どきの医者いらず」ということわざがあるように、旬の大根には根にも葉にも栄養がしっかり含まれ、体によいものとされてきました。
そこで本記事では、大根の栄養素と効能などを徹底解説。大根の選び方のポイントやおいしい食べ方、保存方法なども紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
大根とは
大根は別名を「すずしろ」といいます。春の七草のひとつとして知っている人もいるかもしれません。
日本人に古くから馴染みのある大根は、アブラナ科ダイコン属の1年草。地域によって大きさや形も異なり、さまざまな種類があります。日本では白い大根が一般的ですが、赤い色をしたラディッシュも大根の一種です。
大根と聞いて私たちが想像する白い部分は、根っこ。畑では土に埋まっています。土から上にせり出した葉に近いうっすらと緑色の部分は、茎と呼ばれることもあります。ちなみに、大根の発芽直後の新芽(スプラウト)は「カイワレダイコン」として一般的に知られています。
大根の種類
日本で最も栽培され、流通しているのは青首大根と呼ばれる種類です。しかし、日本の大根は地域によって100種類以上の品種があると言われ、太さや形、辛みなどさまざま。個性的なご当地大根と言われるような、その土地に行かないとなかなか食べられないような珍しい大根もあります。
ここからは、主な大根の品種をご紹介します。
青首大根(あおくびだいこん)
大根の中でも最も代表的な品種。全国で栽培され、大根全体の生産量の大部分を占めるといわれています。スーパーに行けば必ずと言っていいほど置いてあるのがこの青首大根です。首の部分が薄い緑色で、みずみずしく甘みがあるのが特徴です。煮物や味噌汁はもちろん、その甘みを生かして生のままサラダにしても楽しめます。
白首大根(しろくびだいこん)
青首大根が今のように主流となる前、日本の大根はこの白首大根が主流でした。青首大根が甘みがあるのに対し、白首大根の特徴はその辛み。また、漬けるとパリパリと小気味よい食感になることから、今もたくあんなどの漬物にこの白首大根が使われています。
桜島大根(さくらじまだいこん)
鹿児島県の桜島で栽培されています。丸くカブのような形をし、火山灰などが含まれた土壌で栽培されるため大きく育つのが特徴です。全体の重さは平均約10kgで、大きいものでは約20kg~30kgにもなると言われています。甘みがあり煮崩れしにくいことから、地元ではおでんやぶり大根などで親しまれています。
三浦大根
神奈川県三浦半島で栽培されている品種です。真ん中が太くぽってりとした形状で、青首大根に比べると大きく、長さは約60cm、重さは約3kgから大きいものは8kgのものもあります。辛みが強く生で食べるには不向きですが、煮崩れしにくく火を通すと甘みが出るため、煮物などの料理にぴったりです。
練馬大根
江戸時代の元禄期頃には盛んになっていたという歴史ある練馬大根。練馬を中心に栽培され、関東のたくあんと言えば「練馬大根」といわれるほど、たくあん向けに栽培されていました。昭和20年代には全盛期を迎え、その後30年頃から栽培・生産は衰退していきますが、現在も練馬の伝統野菜を守ろうと栽培されています。
聖護院大根(しょうごいんだいこん)
京都の伝統野菜に指定されてる京野菜のひとつで、カブのように丸く、大きな見た目が特徴です。みずみずしく、甘みがあってやわらかな中心部分で作る「千枚漬け」は、京都を代表する漬物のひとつ。京都南部の淀地区でも栽培されるため、「淀大根」や「淀丸大根」とも呼ばれています。
ラディッシュ
ラディッシュは地中海沿岸が原産とされる西洋品種の大根の一種です。その生育の早さから、別名を二十日(はつか)大根ともいいます。イタリア料理のサラダなどによく使われる、赤くて丸い小さな形状のものが一般的ですが、白いもの、細長く先だけ白いものなど、様々な種類があります。
大根に栄養ないというのは本当?
大根は水分ばかりで栄養はないのではないかと思う方もいるでしょう。ここからは、大根の栄養成分とカロリーを紹介します。
大根の栄養成分・カロリー
大根は約95%が水分ですが、残る部分には次のような栄養成分が含まれています。根(皮なし・生)と葉(ゆで)について紹介します。
大根の根部分(皮なし生)※100gあたり
エネルギー: 15kcal
・たんぱく質: 0.4g
・炭水化物: 4.1g
・食物繊維: 1.3g
・葉酸: 33μg
・ビタミンC: 11mg
・カリウム: 230mg
・カルシウム: 23mg
・マグネシウム: 10mg
大根の葉部分(茹でたもの)※100gあたり
エネルギー: 24kcal
・たんぱく質: 2.2g
・炭水化物: 5.4g
・食物繊維: 3.6g
・カロテン当量: 4400μg
・ビタミンE: 4.9mg
・ビタミンK: 340μg
・葉酸: 54μg
・ビタミンC: 21mg
・カリウム: 180mg
・カルシウム: 220mg
・マグネシウム: 22mg
大根の葉にも栄養たっぷり
大根の葉は、β-カロテンを多く含む緑黄色野菜です。ビタミンAのほか、ビタミンC、ビタミンK、葉酸、カルシウム、食物繊維などの栄養素も含んでいます。とくにカルシウムの含有量はその他の野菜と比べると多め。葉の部分は捨ててしまわずに、味噌汁や炒め物にして一緒に食べるようにしましょう。
大根おろしには消化酵素も
大根の根には消化を促すジアスターゼ(アミラーゼ)、プロテアーゼ、リパーゼなどの消化酵素が含まれています。その量はキャベツに匹敵するほど。
消化酵素には胃腸の動きを活発にし、胃もたれや胸焼け、二日酔いを防ぐ効果が期待されます。ただし、ジアスターゼは熱に弱いため、効果的に食べるには大根おろしがおすすめです。焼き魚や天ぷらなどに大根おろしを添えるのは、消化を助けるという意味でも理にかなった食べ方と言えるでしょう。
大根は低カロリーでダイエット向き
大根は全体の約95%が水分のためカロリーとしては低く、ダイエットにもおすすめの野菜といえます。具体的には大根100g当たり15kcal、糖質は2.8gです。大根1本で考えると、1本あたりの重さが00g程度だとした場合、カロリーは135kcal、糖質は25.2gとなります。
大根の選び方
新鮮な大根は、全体的にハリ・ツヤがあります。ずっしりと重いのは水分がたっぷり含まれているためで、みずみずしい証拠です。太く、まっすぐに伸びたものを選びましょう。また、ひげ根の毛穴が少なく、表面が滑らかなものを選ぶのもポイントです。ヒビが入っていたり根元が黒ずんでいたりするものは避けたほうが無難。
葉の部分は、緑色が鮮やかでピンとまっすぐ張りのあるものが良いでしょう。カットされた大根の場合にはスが入っていないか、断面のキメが細かいかがポイントです。
大根のおすすめの食べ方
生でも煮てもおいしい大根。一度に食べきれないというときは、干し野菜にすればうまみや栄養がぎゅっと凝縮されるのでおすすめです。一方で、消化酵素などの成分を効果的にとるなら生、とりわけ大根おろしがよいでしょう。
大根おろしは「おろしたて」がポイント
大根おろしを食べたときにピリッとくる辛みは「イソチオシアネート」という成分です。これは生の大根を切ったり、すりおろしたりするときに生成されるもの。抗酸化の作用があるともいわれています。
大根の根の先端に近づくほど、また若い大根ほどイソチオシアネートの量は多いとされ、辛みも強くなります。ただし、時間とともに失われてしまうので、食べる直前にすりおろすのがおすすめです。
大根おろしは焼き魚や天ぷらに添えるのはもちろん、たとえばお餅に絡めたり、お蕎麦やうどん、パスタに添えたりと万能です。
大根の切り方
大根はよく洗って皮ごと食べられますが、味しみをよくするにはむいてから調理するのがおすすめです。厚い輪切りにして煮物に、乱切りにしてポトフやシチューに、薄くスライスしてサラダやしゃぶしゃぶ、浅漬けなどに、と切り方も様々。いちょう切りは汁物の具材や炒め物、酢の物にも幅広く使うことができます。
大根の保存方法
最後に、大根の保存方法をご紹介します。
冷蔵保存する場合
みずみずしさを保つためには、まず買ってきた大根の葉と根の部分を切り離します。余裕があるときは根元部分、中間部分、先端部の3つに切り分け、新聞紙やキッチンペーパーなどでくるみ、ビニール袋に入れて野菜室に保存します。葉っぱを保存する場合には下茹でして冷蔵、あるいは冷凍保存も可能です。
冷凍保存なら1ヶ月
イチョウ切り、短冊切り、輪切りなど使いたい大きさに切った大根を下茹でせずにそのまま冷凍用保存袋に小分けして冷凍庫へ保管してもOK。味噌汁などにそのまま使えて便利です。
ただし、大根は水分量が多いので解凍すると繊維が壊れシャキシャキ感は失われます。そのためサラダなどには不向きですが、味しみがよくなるため、ナムルや汁物などにおすすめです。
冷凍保存であれば1ヶ月を目安に使い切ります。また、消化酵素などは失われてしまいますが、大根おろしも冷凍保存が可能。水気を切り、製氷皿やアルミカップなどで小分けにすると便利です。使うときは自然解凍でOK。
大根は葉まで余さずに使いきろう!
みずみずしく、甘みのある大根は生でも煮物でも大活躍。葉はβ-カロテンなどの栄養が豊富な緑黄色野菜とされるので、炒め物や味噌汁の具として活用するのがおすすめです。
また、大根の消化酵素や辛み成分に注目するなら大根おろしがぴったり。空気に触れると失われてしまうので、おろしたてを楽しむとよいでしょう。焼き魚や鍋、麺類のトッピングなど、いろいろなレシピで楽しんでくださいね。