充電デバイスにとどまらず、家電製品やオーディオ・ビジュアル機器も人気を集めるAnkerグループ。4月13日にアンカー・ジャパンが報道陣向けに開催した発表会「Anker Power Conference -’22 Spring」では、家庭用3Dプリンターへの参入を発表したほか、各ブランドの強化でさらなる成長を目指すこともアピールしました。

  • 左上が2022年冬発売予定の家庭用3Dプリンター「AnkerMake M5」、右下はAnker初のスマートトラッカー「Eufy SmartTrack Card」

  • アンカー・ジャパンのビジネス戦略について説明する、代表取締役CEOの猿渡 歩氏

躍進するAnkerは「デジタル総合機器メーカー」へ

Google出身のスティーブン・ヤンを中心とした数名の若者たちが2011年に創業したAnkerは、PCの交換用バッテリーの販売からスタート。今では充電デバイスの人気ブランド「Anker」、ポータブルスピーカーやワイヤレスイヤホン/ヘッドホンを数多く手がけるオーディオブランド「Soundcore」(サウンドコア)、スマートプロジェクターブランド「Nebula」(ネビュラ)、家電ブランド「Eufy」(ユーフィ)などを抱え、米国や日本、欧州を中心に世界100カ国以上で展開するハードウェアメーカーになっています。

アンカー・ジャパンの代表取締役CEOである猿渡 歩(えんどあゆむ)氏は、日本法人の売上について「2013年の創業から6年目となる2018年に100億円、その2年後には200億円を超え、2021年には300億円という数字を作れた」と説明。前年比40%以上増という高い成長をアピールし、その結果について「満足している」と話しました。

  • 2021年の売上高は300億円で、前年比40%以上増という高い成長をアピール

ブランド別の成長率を見ても、Ankerが前年比39%増、Soundcoreが同35%増、Nebulaが同70%増、Eufyは同74%増といずれも大きく伸びていることが分かります。中でも、2万円以下のノイズキャンセリング搭載完全ワイヤレスイヤホンと、プロジェクターの販売数量シェアにおいては、どちらも首位を獲得したとのこと(全国家電量販店の販売実績集計/GfKのデータを元にしたAnker調べによる)。

猿渡氏は2021年のビジネス概況の振り返りとして、報道陣からの質問に答えるかたちで「(売上の構成として)充電分野は全体の半分以下だが伸びていないわけではなく、他のカテゴリーがしっかりと伸びてきている。バッテリーだけでなくデジタル総合機器メーカーとしていい経験になった」と話していました。

  • ブランド別の成長率も軒並み伸びており、充電デバイスのブランドから“デジタル総合機器メーカー”へと様変わりしている

新たな充電デバイス続々。「選びやすい」ネーミングへ

充電デバイスについては、国際的な市場調査会社のEuromonitor Internationalが2021年11月に実施した調査結果において、Ankerブランドが「世界No.1モバイル充電ブランド」として正式に認定を受けたと発表。あわせて、日本市場での充電関連製品の累計販売個数が3,000万個を突破したことも明らかにしています。

  • Ankerが「世界No.1モバイル充電ブランド」に正式認定

今回披露された、2022年上半期の発売を目指す充電デバイス新製品の充実ぶりはかなり魅力的でした。

ワイヤレス充電パッドを仕込んだスタンドと、マグネット式ワイヤレス充電器をセットにした「Anker 633 Magnetic Wireless Charger(MagGo)」(12,990円)は、MagSafe対応のiPhoneとAirPodsなどのワイヤレス充電対応イヤホンを同時にチャージしたいユーザーの目には魅力的に映ることでしょう。

スタンド上部のマグネット式ワイヤレス充電器は着脱可能で、iPhone 12/13シリーズの背面にくっつけてスマートに充電できるモバイルバッテリーとして活用できます。

  • Anker 633 Magnetic Wireless Charger(MagGo)

また、USB Type-C×2、USB-A×1の3ポート構成の充電器「Anker 736 Charger(Nano II 100W)」(8,990円)も登場。USB-C 1ポートのみで最大100W出力が可能で、3ポート利用時も45W+30W+18W(計93W)を出力できるとのこと。スマホやタブレット、ノートPCをひとつの充電器で一度に充電したい、というニーズをきっちり抑えてきました。

  • Anker 736 Charger(Nano II 100W)

ところで、ここまで読み進めてきたAnkeユーザーの中には「最近の充電デバイスのネーミング(命名規則)がよくわからない。633とか736って何?」と疑問に感じている方もいるかもしれません。

マーケティング本部長の吉野優希氏によると、「ユーザーにとって選びやすく知ってもらうため、数カ月前から製品の名称ルールを変更している」とのこと。3ケタの数字には1から7までをあてていて、数字が大きくなるほど高機能・高価格帯の製品となるようで、たとえば「1」は手ごろでシンプルなスペック、「7」はハイスペックを表しているそうです。

Ankerの製品名は長く分かりにくくなる傾向があったと筆者も感じていました。今後、新しい命名規則を覚えておけば、製品選びがしやすくなるのかもしれません。

  • マーケティング本部長の吉野 優希氏

3Dプリンターを身近なモノに

アンカー・ジャパンは今回、同社がもつブランドを強化し、複数のサブブランドを増やすことを明らかにしています。その中でも目新しかったのが、Ankerのサブブランドとして「AnkerMake」を立ち上げ、Anker初の3Dプリンターを国内市場に投入すると発表したことでしょう。

  • Anker初の3Dプリンター「AnkerMake M5」

吉野氏は3Dプリンター市場への参入について、「DIYの需要の高まりで、家庭においてモノづくりを楽しむ人が増えていることや、金型や専門的なスキルを必要としない家庭用3Dプリンターの需要も高まっている」ことが背景にあると説明。また、既存製品の課題として、「長い待ち時間と仕上がりに対しての不満」がユーザーから挙がっていることを指摘しました。

Anker初の3Dプリンター「AnkerMake M5」では、同社が培った技術を盛り込んでおり、「印刷速度の速さと高い精度の両立」、「AIカメラによる進捗チェック」、「セットアップの簡単さ」が特徴だとアピールしています。

  • AnkerMake M5のAIカメラ

  • 出力の進捗や造形物のチェックが行える

3Dプリンター市場では後発組となるAnkerですが、完成度を高めたことや、他社にはないユニークな機能も盛り込んだことから、実機の展示ブースでも注目を集めていました。なお、前出の吉野氏は、市場参入の理由について報道陣から改めて問われたのに対して以下のようにコメントしています。

「(3Dプリンターは)今後ポテンシャルのある市場カテゴリーと捉えている。プロジェクターも数年前は会議室にある白い箱をイメージする人が多かったと思うが、3年前に『Nebula Capsule II』(2019年)を発売してから一般化した。これまで『自分のための製品ではない』というカテゴリを身近に感じ、それによって生活がスマートになったり豊かになったりすることを、アンカーのミッションに掲げており、市場参入はその一環だ」(吉野氏)

Anker初のスマートトラッカー、Apple「探す」と連携予定

もうひとつ注目を集めていたのが、Anker初のスマートトラッカー(忘れ物防止タグ)。カードタイプの「Eufy SmartTrack Card」と、タグ型の「Eufy SmartTrack Link」の2製品を2022年秋頃に発売します。

  • カードタイプの「Eufy SmartTrack Card」

  • タグ型の「Eufy SmartTrack Link」

どちらも「Eufy」の新たなサブブランド「Eufy Security」の新製品で、注目ポイントはAppleが提供する「Apple Find My」(探す)との連携を予定している点。こちらも後発製品ではありますが、世界中のApple端末の情報による「探す」ネットワークを活用し、プライバシーにも配慮しつつ紛失物の位置特定を可能にするそうです。

  • 「Apple Find My」との連携予定も告知

  • Ankerは新しいプロダクトの投入だけでなく、ユーザー体験価値の向上にも注力。アンカー・ジャパンの公式スマホアプリとLINE公式アカウントを4月13日に提供開始した