これぞ谷川九段、最速の寄せを決めて快勝
第72期ALSOK杯王将戦一次予選、谷川浩司九段-安用寺孝功七段戦が4月11日に行われ、69手で谷川九段が勝利しました。谷川九段は4月6日に還暦を迎えてから最初の対局を勝利で飾りました。
■11手目から爽やかに桂馬を跳ねる
相三間飛車の出だしからわずか11手目。16分の考慮の末、谷川九段は自陣の左桂を意気揚々と中段に跳ねていきます。居玉のまま序盤早々から桂馬を跳ねていくのは現代の相居飛車ではよく見られますが、相振り飛車でも見られるというのは谷川九段の還暦らしからぬ若々しさを感じます。安用寺七段も戦いの起こっている位置に飛車を振り直し、難解な中盤戦に一気に突入しました。
■金を前に押し出す「谷川前進流」
このまま昼休憩に入ろうかというところで「谷川前進流」が発揮されます。本来守りに使われる左金が攻め駒として参戦。そのままグイグイ前進していき、安用寺七段の角を目標に後手陣を制圧していきます。安用寺七段は受け一方ながらも反撃のチャンスを待ちます。
■鋭い踏み込みから敵陣を制圧
少し局面が落ち着いたかと思われた40手目の局面、お互いに玉を囲いあうのが普通かと思いきや、谷川九段は一手の隙を見逃しませんでした。拠点を生かして持ち駒の銀を後手陣に打ち込み、一気に攻め倒しにかかります。これを重たい攻めとするべく安用寺七段は先手の攻めをギリギリのところで受け流そうとしますが、攻めをつなげさせたら一級品の谷川九段。「谷川前進流」で押し出した金を活用し、中央を制圧することに成功しました。
■大駒を全て献上する間に寄せを決める
安用寺七段も受けてばかりではおられず、反撃に回ります。受けに投資した角を使って先手陣をかき乱しにいき、ついには先手の大駒を全て取り切りました。しかし谷川九段は「終盤は駒の損得より速度」という格言に倣うかのように後手玉を追い詰めます。安用寺七段も最後の必死の食らいつきを見せますが、谷川九段は冷静に避けきり勝利を収めました。
勝利した谷川九段は予選準決勝に進出、次は狩山幹生四段と対戦します。
槇林 一輝(将棋情報局)