手筋の突き出しでリードを奪う
藤井聡太棋聖への挑戦権を懸けて争われる、第93期ヒューリック杯棋聖戦(主催、産経新聞)の決勝トーナメント、永瀬拓矢王座―西田拓也五段戦が4月8日に東京・将棋会館で行われ、118手で永瀬王座が勝利しました。
永瀬王座は決勝トーナメントからのシードで、1回戦では丸山忠久九段を破っています。対する西田五段は一次予選からのスタートで、一次予選、二次予選を勝ち抜いての決勝トーナメント進出。決勝トーナメントの1回戦では八代弥七段を破りました。
本局は先手の西田五段が三間飛車に振り、高美濃からさらに左銀を引き付けての四枚美濃を構築しました。対して永瀬王座は銀冠から穴熊に組み替えて潜ります。中盤の64手目、後手は自陣にと金を作られているのが気になります。ここでの後手は△2四歩と打てば桂を取れる形ですが、これを急ぐと▲5二と△同金▲6四角で、先に銀を取られておかしくなります。この順に備える△4六歩が手筋の一着で、先手は▲同金あるいは▲同角と取るしかありませんが、▲同角はそこで△2四歩と打てます。▲5二とには△4六飛▲同金△5二金で飛車角交換となりますが、と金を消去しつつ桂取りが残っている後手が十分です。
実戦は▲4六同金でしたが、やはり△2四歩と桂を捕まえた後手が優勢です。△4六歩▲同金とさせた効果で、以下先手が▲5二とでも△同金に▲6四角とはできません。優位を確保した永瀬王座は以下も手堅く指して快勝、ベスト4進出を決めました。
今期のベスト4は永瀬王座の他、渡辺明名人、久保利明九段、佐々木大地六段というメンバーです。準決勝は渡辺―久保戦が4月14日に、永瀬―佐々木大戦が翌15日に行われる予定です。挑戦権争いもいよいよ大詰めですが、果たしてどうなるのでしょうか。
相崎修司(将棋情報局)