変動金利で住宅ローンを組んでいる方の中には、金利の上昇が不安な方も多いのではないでしょうか。

金利上昇に対する漠然とした不安を解消する第一歩は、変動金利の仕組みを理解することです。その上で、どのような状況になると金利上昇が起きるのか知ることで、不安を軽減しやすくなるでしょう。

そこで今回は、変動金利の基本的な仕組みや金利上昇が起きる状況を解説します。

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■変動金利の仕組みと金利上昇が起きるケース

まずは、変動金利の指標や金利上昇が起きるケースを見ていきましょう。

▼変動金利は何を指標に決まる?

「変動金利よりも先に固定金利が上がる」という話を聞いたことがある人もいらっしゃるでしょう。これは、固定金利と変動金利の決まり方が違うためです。固定金利の値を参考に変動金利が決まっているわけではありません。

固定金利は「新発10年物国債」という金融商品の利回りをもとに決まる仕組みです。新発10年物国債は、市場で取引されており、主に投資家たちの動きによって利回りが変わります。投資家は将来を予測して動いているため、住宅ローンの固定金利は投資家の予測に応じて決まる仕組みであるといえます。

一方、変動金利が決まる指標の大元は「無担保コールレート(オーバーナイト物)」です。無担保コールレート(オーバーナイト物) は、金融機関同士で「明日返すからお金を貸して欲しい」という短期間の貸し借りに適用される金利です。

無担保コールレート(オーバーナイト物)は、政府(日本銀行)の金融政策によってコントロールされています。よって住宅ローンの変動金利は、政府の金融政策の影響を受ける仕組みです。

▼変動金利が上昇するのはどんなとき?

住宅ローンの変動金利が低いのは、日本銀行(日銀)が「金融緩和政策」という金融政策を実施しているためです。

金融緩和政策を簡単に説明すると「銀行が、個人や企業に低い金利でお金を貸しやすくするように誘導する政策のこと」です。

銀行で低金利のローンが組めるようになると、個人は住宅や車などを購入しやすくなるでしょう。また企業は、設備投資をして事業を拡大しやすくなると考えられます。その結果、消費が活発になって景気が良くなっていきます。

よって日本の景気が良くなり日銀の金融緩和政策が終わらない限り、変動金利は基本的に上昇しないと考えられます。

■日銀はどこで景気の良し悪しを判断する?

金融緩和政策が解除されるのは、日本の景気が良くなったときです。では、日銀は景気の善し悪しを何で判断するのでしょうか。その答えは「前年と比較した物価の上昇率」です。

景気が良い状態とは「消費が活発になる→企業の売上が上がる→従業員の所得が増える→さらに消費が活発になる……」のような好循環を指します。一般的に景気が良くなると、モノを購入したりサービスを利用したりしたい人が増えることで、物価は上がっていきます。

日銀の金融緩和政策は、生鮮食品を除く消費者物価指数の前年比上昇率が安定的に2%を超えるまで継続される予定です。ここで、近年の物価上昇率を見ていきましょう。

  • ※出典:総務省統計局「2020年基準 消費者物価指数 全国 2022年(令和4年)2月分 (2022年3月18日公表)」

生鮮食品を除く消費者物価指数の前年比上昇率は、2019年が0.6%、新型コロナウィルスの影響を受けている2020年と2021年は、ともに-0.2%でした。このように物価の前年上昇率は2%には遠く及んでいないことがわかります。

■金利上昇が不安であれば日本の景気や金融政策に注目する

日銀が金融緩和政策を解除しない限り、変動金利は上昇しないでしょう。金融緩和政策が解除されるのは、物価の前年上昇率が安定的に2%上昇し、日本の景気が良くなったときです。そのため金利上昇が不安なのであれば、今後の日本の景気が良くなる可能性を考えてみてはいかがでしょうか。

また、日銀の動向を観察することも大切です。日銀は、金融政策の方針を話し合う「金融政策決定会合」を年に8回開催しています。会合の結果は、新聞やニュースで報道されるほか、日銀のホームページでも公開されています。

2022年3月の金融政策決定会合の結果を報告する記者会見で、日銀総裁は「現在の強力な金融緩和を粘り強く続けることが適当であると考えている」と述べました。そのため今後しばらくは、金融緩和政策が続く可能性が高いと考えられます。

新聞やインターネットの住宅ローンに関する記事だけでなく、今後の日本の景気や日銀の金融政策の方針にも注目することで金利上昇の可能性が判断しやすくなるでしょう。