NPO法人日本腎臓病協会、アストラゼネカ、小野薬品工業は6日、「慢性腎臓病」(CKD)に関するメディアセミナーを開催した。予防のためにするべきことは? また春の健康診断では、どの値に注目したら良いのだろうか? 登壇した川崎医科大学 副学長の柏原直樹氏は、早期発見・治療に向けた取り組みを紹介した。

  • 登壇した柏原直樹氏

慢性腎臓病の原因と対策

今回のメディアセミナーは「『慢性腎臓病』の早期発見・治療に向けた生活者への提案 -『健康診断』結果から紐解く慢性腎臓病-」と題したもの。川崎医科大学 副学長 腎臓・高血圧内科学 教授の柏原直樹氏(日本腎臓学会 理事長、NPO法人日本腎臓病協会 理事長)が講師を務めた。

まずは、国内の傾向と海外の動向について。国内の腎臓病患者に行われている医療行為には、腎代替療法 血液透析療法がある。これについて柏原氏は「日本は世界でも2番目に透析の患者が多い。全国にレベルの高い透析医療機関があり、患者も長生きできる。でも世界的に見ると、日本は極めてユニークな立ち位置。国内では移植は限定的、腹膜透析もあまり選ばれていない」と指摘。何が最適か、とは一概に言えないものの、まだまだ移植を増やさないといけない、このままではアンバランスであると続ける。

多くの透析患者は、腎臓のクリニック(透析センター)に週3回ほど通い、ベットに4~5時間は横になって血液をろ過している。なかには最長で30年も透析を受ける患者もいる。そうした医療行為も、腎臓の機能のごく一部を代行しているに過ぎない。一般的には、必ずしも最善の治療法ではない、という議論もされている。透析患者の平均年齢は70歳。そのうち重大合併症を引き起こす危険性もある。

ところで、海外では「保存的腎臓療法」(CKM)という治療法が開発されている、と柏原氏。「透析をせずに腎不全の患者の尊厳を守る、QOL(クオリティ オブ ライフ)を維持する治療法です」と説明する。なお合併症の危険性のある患者を対象に行った調査では、透析を導入した場合とCKMを行った場合では、生存率に有意差は認められなかったという。「今後は、透析、腹膜透析、移植に続く腎不全の第4の治療法としてCKMが選ばれるようになると思います。もっともこれは患者の尊厳を最大限に尊重し、『人生の最期をどう迎えたいか』を熟慮し、成熟した医療判断の下で決めていくことです」(柏原氏)。

ここで柏原氏は、あらためてCKDについてまとめた。「腎臓病は症状が出てこないので軽視されがちですが、日本では成人人口の約13%(1,300万人)がCKD患者であり、糖尿病、高血圧、肥満などの生活習慣病と高齢化が原因で発症しています。心血管疾患、脳卒中のリスクが高く、国民の健康を脅かしているということです」。ちなみに50歳男性がCKDになると健康寿命が4.7歳も短縮され、糖尿病とCKDが合併すると11.5歳も短縮されるという。

腎臓病の発見は簡単で、検尿をすること、そして血液検査でクレアチニン値を調べること。また予防、重症化抑制のためには、血糖の管理、血圧管理(減塩)、体重の適正化(肥満を避ける)、禁煙、脂質管理、適切な運動、適正な食事が大事だと説明。そのうえで「これらに気をつけるだけで完全に予防できるし、重症化が抑制できます。難しい病気ではありません」とし、生活習慣の適正化を広く呼びかけた。