斎藤八段は粘りの勝負手を放つ
渡辺明名人に斎藤慎太郎八段が挑戦する、第80期名人戦七番勝負(主催、朝日新聞社・毎日新聞社)の第1局は4月6・7日(水・木)に東京都文京区の「ホテル椿山荘東京」で行われています。
振り駒で先手番となった渡辺名人は矢倉を選択。その後早々に角交換となりました。1日目の昼食休憩前、斎藤八段が取った角を好所に配置したところから盤面は風雲急を告げました。
■堂々たる主張のぶつかり合い
渡辺名人は打たれた角を働かせまいと飛車を中央に転回しました。しかしこの手は次に斎藤八段が△4五歩と銀取りに歩を突き出せば、▲同銀△1九角成と進み、香得で馬を作る戦果を得ることができます。渡辺名人はそれを承知で「△4五歩とやってこい」と言っているわけです。
ここで、斎藤八段は△4五歩。
堂々と渡辺名人の主張に乗って、自らの太刀を振り下ろしました。お互いの狙い筋を消し合うことが多いトッププロ同士の対局で、お互いの主張が真正面からぶつかり合い、清々しさすら感じる激しい展開に進みます。
■渡辺名人の猛攻
前述の順で斎藤八段は香得して馬を得ましたが、その瞬間に渡辺名人が牙を剥きます。まずは相手の守りの銀を僻地に追いやり、その後角打ちで相手陣を睨み、すぐさま自陣の桂を活用。さらに先ほどの順で前進した銀が進軍してあっという間に斎藤陣の急所に渡辺名人の攻め駒が集結していきます。ここで1日目が終了。駒得の実利を得た斎藤八段が、渡辺名人の猛攻をどうやってしのぐかという展開になりました。
2日目に入っても、渡辺名人が攻め、斎藤八段が必死の防戦という展開が続いています。斎藤八段は僻地に桂を打つ勝負手を放ち、とにかく渡辺名人の攻め駒を押さえ込み、十分な働きをさせないように粘り強く戦っています。
渡辺名人がやや優勢と見られていますが、斎藤八段の粘りが功を奏するか注目です。
本局は2日制で持ち時間は9時間。2日目の昼食休憩時で渡辺名人の残り時間は4時間14分、斎藤八段は残り3時間2分となっています。終局は本日夕方から夜となる見込みです。
大石祐輝(将棋情報局)