病気やケガで入通院した際に、医療費が1〜3割負担に軽減される「健康保険」。老後の生活を支える「年金(老齢年金)」。普段はあまり意識しませんが、私達の生活を支えてくれるものが社会保険制度です。
社会保険は5種類ありますが、「制度があることは知っていたけど忘れてた...」「そもそも知らなかった!」という方は損をしてしまう可能性があります。
この記事では、社会保険制度の有効活用を紹介します。どんなときに、どんな給付を受けられるのか、知っておきましょう。
そもそも、社会保険制度とは…?
社会保険は、国民の生活の安定を図るために設けられた公的な保険制度です。目的は病気やケガ、高齢、介護、失業、労災などのリスクに備えることです。職業や雇用形態によって制度が異なります。
社会保険の種類
上記のリスクに備えるために、社会保険には5つの種類があります。
➤「健康保険」
「健康保険」は、病気やケガに備える公的な医療保険制度です。例えば、病気やケガをしたときにかかる医療費が、1〜3割負担など一部負担で済む 「公的医療保険制度」。業務外の病気やケガが原因で3日連続休業した場合、4日目から日給のおよそ3分の2程度が1年6ヵ月までもらえる「傷病手当金」などがあります。
➤「介護保険」
「介護保険」は、65歳以上の高齢者や、40〜64歳の特定の病気で、介護が必要と市区町村から認定された方を支える制度です。この制度を利用すれば、訪問介護やデイサービス、一部の福祉用具のレンタル代、住宅改修費などが1割〜3割の自己負担で済みます。
また、介護保険は「現物給付」で、例えば訪問介護やデイサービスなどの「介護サービス」という現物を給付します。
➤「年金制度」
「年金制度」は、老後の生活を支える大切な制度です。日本では、基本的に20歳以上60歳未満のすべての人が公的年金への加入義務があります。公的年金は「20歳以上の人が加入する国民年金」と「会社員や公務員が加入する厚生年金」の2つがあります。
➤「雇用保険」
「雇用保険」は、病気やケガ、失業、出産など、一時的に働くことが困難になってしまった場合、労働者の生活と再就職を支援してくれる制度です。失業時の「基本手当」や育児のために休業した際に受け取ることができる「育児休業給付金」などがあります。
➤「労災保険」
「労災保険」は、仕事中や通勤中に起きたことが原因とされる病気・ケガ・障害・死亡などに対して保障する保険制度です。例えば、車で通勤途中に事故に遭遇し障害が残ってしまった場合や、過労が原因で心筋梗塞になり死亡してしまった、などの場合にご自身や遺族の生活を支えてくれます。
それぞれの有効活用方法とは?
社会保険の中でも、特に「健康保険」「年金制度」の2つには、意外と忘れてしまっている給付金や年金もあるのではないでしょうか。損をしないためにも、全て把握しておきましょう!
病気やケガの保障だけではない「健康保険」
医療費が1〜3割負担になること以外にも、以下の場面で「健康保険」からの給付があります。
◆「傷病手当金」
傷病手当金は病気やケガで休業してしまった場合、収入減を支えるために設けられた制度です。会社員やパート・アルバイトの方が病気やケガで3日以上休業し、会社から十分な報酬が受けられないとき、1日につき「標準報酬月額÷30×2/3」の金額が最長1年6か月支給されます。
※標準報酬月額とは、社会保険料の算出のためにある給与の区切りのことです。4月〜6月の3ヶ月間の給与(通勤手当を含む)の平均に基づいて決定されます。
◆「出産一時金」
出産一時金は、出産にかかる費用(健診費用など)の負担を軽くするために設けられた制度です。自身や配偶者が出産したとき、1児につき42万円が支給されます。
◆「出産手当金」
出産手当金は、出産によって収入が減ってしまう女性のために設けられた休業補償制度です。会社員やパート・アルバイトの方が出産のために会社を休み、その間に給与の支払いが無かったとき、出産の日以前42日〜出産の翌日以降56日までの範囲内で、出産手当金が支給されます。出産手当金の金額は1日当たりで計算されます。その金額は、給料1日あたりの3分の2です。
◆老後以外でも活用できる「年金制度」
厚生年金保険および国民年金は、老後の生活を保障するためだけに保険料を支払っているわけではありません。「老齢年金」の他にも、「障害年金」と「遺族年金」があります。
「障害年金」
「障害年金」は、病気やケガによって生活や仕事が制限されるようになった場合に受け取ることができる年金です。
障害年金を請求できる人は、20歳〜64歳です。20歳前の場合はまだ年金保険料を払う前ですが、払わなくても20歳になって障害認定を受けてから年金が受け取れます。
そして、受け取る年金は障害の程度によって変わります。 入院や在宅介護を必要とするほど日常生活が制限される重い障害(障害等級1級・2級)の場合 、「障害基礎年金」を受け取ることができます。そして、働くことが制限されるほど重い障害(障害等級3級)の場合、厚生年金に加入している場合は「障害厚生年金」を上乗せして受け取ることができます。
また、障害年金はお子さまの人数、収入状況などによって受け取れる年金額も変わります。
「遺族年金」
「遺族年金」は、厚生年金保険(国民年金) の加入者が亡くなったときに、その方によって生計を維持されていた遺族が受け取ることができる年金です。
「遺族基礎年金」を受け取ることができる方は、亡くなった方によって生計を維持されていた「子のある配偶者」または「子」です。
「子のある配偶者」には内縁・事実婚の配偶者を含みます。また、「子」は18歳まで、または障害等級1級・2級の20歳未満の方をさします。
厚生年金に加入している場合は「遺族厚生年金」が上乗せされます。遺族年金は、お子さまの有無や人数、配偶者の年齢などによって受け取れる年金額が変わります。
まとめ
社会保険には5つの種類があり、特に「健康保険」「年金制度」の2つには、請求することを忘れている給付金や年金があるかもしれません。現金給付の社会保険には時効があり、例えば「出産一時金」の請求は2年、「遺族年金」の請求は5年を過ぎると、時効となって受給権が消滅してしまうので注意しましょう。
また、社会保険料を滞納していると、受給することができない場合もあります。保険料の納付が困難な場合は支払の猶予や免除をしてもらえる制度もあるので、役所等に相談しましょう。
この記事を執筆したカウンセラー紹介
山内壮(やまうちそう)
所属:株式会社マネープランナーズ