パーソルキャリアが運営する転職サービス「doda(デューダ)」は、「決定年収上昇率ランキング(職種版)」を4月5日に発表した。本ランキングは、2019年1月~12月末と2021年1月~12月末までの間に「doda」経由で転職に成功した20~65歳男女の、転職決定企業での決定年収をもとに算出したもの。なお、決定年収とは、転職を受入れる企業が採用決定時に個人に提示する年収のことを示す。
職種大分類とは職種を大きな分類でくくったカテゴリ指すもの。2021年の決定年収上昇率をみると、11のうち8つの職種大分類で、コロナ前である2019年の決定年収を上回った。
その中でも、職種大分類で上昇率1位の「クリエイティブ系」の決定年収は、コロナの影響を受けず、右肩上がりの状況が続いている。その背景には2つの理由が考えられるという。
1つめは、求人数の急激な増加で、人材獲得競争が激化。2021年の求人数は2019年比で+140%と伸長。コロナをきっかけに、あらゆる業界でサービスをWebやアプリに移行する動きが進み、クリエイティブ人材の活躍の場が増えた。その結果、人材競争が起こり、年収を引き上げて採用を行う企業が増加したと考えられる。
2つめは、クリエイティブ人材の給与レンジが適正化されつつあること。従来、「クリエイティブ系」職種は採用実績やポジション数が少なく、企業ごとに提示する年収にバラつきがあった。しかし、ここ数年でクリエイティブ人材の採用実績は一気に増加。各企業で、職務に対する年収の適性化が行われた。これらを背景に、決定年収が上昇したと推測している。
2位の「販売/サービス系」は、スキルと経験のある人材の採用に注力したため、決定年収が上昇。流行以前は慢性的な労働力不足に悩まされていたため、企業は未経験採用を活発に行っていた。しかし、外食・小売・旅行業界がコロナの打撃を受け、2020年以降、「販売/サービス系」の求人数は大きく減少。 未経験採用を中断し、即戦力採用へとシフトする傾向が強まったという。
また、業績の立て直しが急務になったことで、接客経験に加え、ブランドや店舗の宣伝を行うSNSの運用経験や、店舗運営をするためのマネジメントスキルがある人材を採用する企業が増加した結果、決定年収が上昇したと推測される。
なお、決定年収が微減した10位「金融系専門職」や、11位「専門職(コンサルティングファーム/専門事務所/監査法人)」は、2019年までは即戦力や経験者採用が多い傾向に。一方、2021年は投資や資金運用・経営コンサルティングのニーズが高まったことで、人員確保が急務に。即戦力採用だけでは追い付かず、次世代育成を見据え、ポテンシャル採用を行う企業が増えたため、決定年収がやや減少傾向になったと考えられる。
続いて、細かな職種に分けた職種別での上昇率ランキングをみると、「技術系(建築/土木)」や「営業系」、「技術系(メディカル/化学/食品)」などの大分類に入る職種で大きな伸びがみられた。
対象の全137職種のうち、決定年収が上昇したのは92職種、減少したのは45職種と、約7割の職種で決定年収が増加した。決定年収が上昇したうち金額が10%以上アップしたのは92職種中16職種だった。上昇率TOP20のうち、「営業系」と「技術系(IT/通信)」が最多で4職種ずつランクインした。
1位にランクインした「アセットマネジメント」は、投資家に代わって不動産ファンドで不動産売買や、賃貸借の運用業務を行う。2019年と比較すると、2021年は国内市場が縮小。インパクト投資を目的に、海外不動産案件の投資に参入する動きが増えている。
海外案件は、融資スキームが国内と異なる上、規模が大きく協業する関係者も多いため、そうした複雑な業務に対応できる即戦力が求められている。そのため、企業が求める人材のレベルも上がり、決定年収が上昇したと考えられる。また、結果として転職成功者の中で40代以上の割合も高まったことも、決定年収の上昇に関係しているといえそうとのこと。
2位は「営業―医薬品メーカー」で約30%上昇。3位は医療系専門職の「研究」で、約24%上昇した。4位は、IT/通信領域でテクニカルサポートやカスタマーサポートを行う「ヘルプデスク」となった。コロナ後のデジタルシフトにより、IT製品の販売やWebサービスの提供が増加したことに比例して、ヘルプデスクのニーズが高まっている。