米労働省が2022年4月1日に発表した3月雇用統計の主な結果は、(1)非農業部門雇用者数43.1万人増、(2)失業率3.6%、(3)平均時給31.73ドル(前月比+0.4%、前年比+5.6%)という内容であった。
(1)3月の非農業部門雇用者数は前月比43.1万人増と市場予想の49.6万人増を下回った。業種別では、引き続きレジャー・接客の増加が約11万人増と全体をけん引した。前月分は75.0万人増へ、前々月分も50.4万人増にそれぞれ上方修正された。雇用情勢を基調的に見る上で重視される3カ月平均の増加幅は56.2万人となり、前月の61.4万人から伸びがやや鈍化した。
(2)3月の失業率は前月から0.2ポイント低下して3.6%となり、2020年2月以来の水準に改善した。市場予想は3.7%だった。フルタイムの職を希望しながらパート就業しかできない人なども含めた広義の失業率である不完全雇用率(U-6失業率)も、6.9%と前月から0.3ポイント低下した。労働力人口に占める働く意欲を持つ人の割合である労働参加率が62.4%へと0.1ポイント上昇したにもかかわらず失業率は低下しており、米国の労働市場の基調の強さが窺える結果となった。
(3)3月の平均時給は31.73ドルで、伸び率は前月比0.4%、前年比+5.6%となった。市場予想は前月比+0.4%、前年比+5.5%であった。おおむね予想通りの結果ではあるが高水準の伸びが続いた。米国では求人数が過去最高水準にあり、企業は労働者確保に苦労している模様。そうした中で賃金を引き上げる動きも続いているようだ。
今回の米3月雇用統計は5月4日の米連邦公開市場委員会(FOMC)前としては最後の雇用統計となることから市場の注目が集まっていた。その結果は米国の経済活動がコロナ禍前の好調時に戻りつつある事を改めて示す堅調な内容であった。雇用者数は、コロナ禍で失われた2,200万人を全て回復するまで残り160万人ほどに迫った。失業率もコロナ禍前に記録した歴史的低水準の3.5%に肉薄した。平均時給は金額ベースで過去最高の更新が続いており、賃金上昇圧力も引き続き強い。FOMCが5月に少なくとも25bp(0.25%ポイント)の追加利上げに動くことはほぼ確実だろう。
こうした見方を背景に、米3月雇用統計発表後の市場では米長期金利の上昇とともにドルが強含んだ。今後についてはFOMCが50bp(0.50%ポイント)の利上げに動くかどうかが焦点となりそうだ。これを見通す上で、市場の関心は4月12日に発表される米3月消費者物価指数の結果に向かっている。