カシオ計算機は4月4日、画像処理やAI技術を活用し、カメラ単体で人やモノを認識できるという業務用「エンドポイントAIカメラモジュール」を発表。4月6日~8日まで東京ビッグサイトで開催される「IoT&5Gソリューション展」において、パートナー企業であるリョーサンのブースで試作機を参考出品し、姿勢推定などのデモ展示を行う。
カシオの画像処理技術とルネサス エレクトロニクスのDRP-AI技術を融合し、両社の共同開発による半導体チップを搭載したカメラモジュール。人やモノの動きをリアルタイムに読み取り、カメラ本体のみで被写体の種類や属性などを認識・分析・予測できるのが大きな特徴だ。
このカメラモジュールでは、「MDK」(Module Design Kit)で開発した独自のファームウェアを搭載することで、画像を使ったAIビジネスソリューションを提供する。4K/30fps映像の高速処理が行えるほか、被写体の写りを最適化するカメラ設定と画像処理技術によって、撮影環境に左右されにくい精度の高いAI推論を実行可能。撮影からAI推論実行まで、ネットワークを経由せずカメラだけで行えることから、リアルタイムでの認識・分析・予測に最適とする。
なお、DRP(Dynamically Reconfigurable Processor)-AIとは、演算器間の接続を動的に切り替えながらAI推論を高速で処理するハードウェアで、最新の学習済みAIモデルを実装できる。
同カメラは主にセキュリティ市場をはじめ、FA(ファクトリーオートメーション)市場、マーケティング市場向けのAIビジネスソリューションの提供を目的とし、新規事業立ち上げに向けて開発を進めている。今回の参考出品では、ブース来場者の入場カウントと姿勢推定の簡単なデモンストレーションを行う。
今後、市場に向けては、以下のような用途を提案する予定。
入退室管理
- 時間帯により逆光や暗くなる環境において、ワイドダイナミックレンジと逆光補正で人物の白飛びや黒つぶれを抑えて、顔認証などを行う
工場内の作業分析
- 生産ラインを広く撮影するシーンで、レンズ周辺画像の人物の歪みを補正。顔認証や人物追跡に加え、姿勢推定により非効率な作業や動線を可視化する
店舗における顧客分析
- 顔認証・人物属性・姿勢推定により来店客の年齢・性別を判別。個人が興味を持つ商品を推定してサイネージ広告でアピールすることも可能
エンドポイントAIカメラモジュールを稼働させるには、目的に合わせたファームウェアをMDKで開発して搭載する必要がある。カシオでは、導入するユーザー向けにMDKを有償で提供予定だ。
MDKでは、用途に合わせた学習済みのAIモデルと最適なカメラ設定・画像処理技術を組み合わせて、独自のカメラファームウェアを開発するためのAPIを用意。また、学習済みのAIモデルをDRP-AI搭載の推論実行/画像処理プロセッサへ書き込むため、最適な形式に変換するツール「DRP-AI Translator」などのソフトウェア、開発用のエンドポイントAIカメラモジュールもセットにした開発キットとなっている。