「省みる」は、「自分のしたことを、もう一度考えてみる。反省する」を意味する言葉です。読み方も含め、使い方を正しく把握していない人もいるかもしれません。
この記事では「省みる」の対義語や類語、例文などを解説。「省みる」の英語表現も紹介します。ビジネスシーンでも使われることの多い表現ですので、ぜひ参考にしてみてください。
「省みる」の意味は
「省みる」の意味は、「自分のしたことを、もう一度考えてみる。反省する」となります(出典:デジタル大辞泉)。
過去の自分のふるまいや発言などを振り返り、反省をすることを意味します。「自分の過去の発言を省みて、大いに恥じる」などといったかたちで使用します。
「省みる」の読み方
「省みる」は、「かえりみる」と読みます。
「省みる」の“省”は「振り返ってよく考えてみる」という意味を持つ漢字で、反省・猛省・自省・内省・三省などの熟語で使われます。いずれも、反省の意味を含んだ言葉です。
「省みる」の類語
先にも記したように、「省みる」には「自分のしたことを、もう一度考えてみる。反省する」という意味があります。言葉の意味をより深く理解するためには、類語や言い換えを確認することも重要です。
「省みる」にも似た意味を持つ言葉がありますので、いくつかご紹介しましょう。
省察
「省察」は「せいさつ」あるいは「しょうさつ」と読み、意味は「みずからかえりみて、その善悪、是非を考えること」です。「自分の過去の言動を省察する」といったかたちで使用します。
※出典:精選版 日本国語大辞典。特記がないものは、以下同じ。
自省
「じせい」は、「みずから反省すること。自分のした行為の是非善悪をかえりみること」です。例文としては、「彼は10年前の出来事について、深く自省している」となります。
内省
「ないせい」は、「自分の思想、言動などを深くかえりみること」です。「彼女は過去の行いを内省することはなかった」といったかたちで使用します。
自問
「じもん」と読み、意味は「自分のやったことについて、また、どうすべきかについて、自分で自分の心に問うこと」となります。「自分で自分に問いかけ、自分で答えること」を意味する四字熟語、「自問自答」もよく使われます。
顧慮
「顧慮」は「こりょ」と読み、意味は「深く考えて、それに思いをめぐらすこと。気を配ること。考慮。配慮。心配。懸念」です。反省ではなく、気を配る、配慮するというニュアンスが強い表現です。
内観
「ないかん」は仏教に由来する言葉で、「自分自身を内省して、仏性・仏身などを観ずること」という意味です。
そのほかに「自己の内面を観察すること」や、英語「introspection」の訳語として「心理学で、自己の意識現象を意図的計画的に観察すること」という意味もあり、どちらも「省みる」に似た「内省」というニュアンスを含んだ表現です。
なお「内観」は、建築物の「外観」に対しての、「内部の様子」の意味で使われることもあります。
「省みる」と「顧みる」「鑑みる」の違い
「省みる」とよく似た言葉に、「顧みる」と「鑑みる」があります。
「顧みる」は「省みる」と同じ「かえりみる」と読みます。意味は、「過ぎ去った事を思い起こす。回顧する」「心にとどめ考える。気にかける」「振り返って見る」(出典:デジタル大辞泉)などとなります。「会社員時代の彼は仕事一筋で、家庭を顧みることはなかった」といったかたちで使います。
「省みる」に「反省する」という意味があるのに比べ、「顧みる」は「過去を思い返す」ことが主となり、反省のニュアンスはありません。ここが「省みる」との大きな違いとなります。読みを含め、「省みる」と「顧みる」は非常に似た言葉ですが、意味には明確な違いがありますので、使用の際には混同しないように注意しましょう。
「鑑みる」は、「過去の例や手本などに照らして考える」こと。読みは「かんがみる」です。「鏡(かがみ)」が動詞化し「鏡や水などに映してみる」という意味の「かがみる」となり、元の読みが音変化し「かんがみる」となりました。
こちらも「省みる」とは異なり、「反省する」と意味は持ちません。「省みる」では対象が自分自身であり、反省を伴うのに対し、「鑑みる」は過去の先例や見本と比べて考えることを意味しています。この2つの言葉も、音で聞くととても似ていますので、意味を取り違えないようにしましょう。
「省みる」の英語表現と例文
「省みる」を意味する英語表現を見てみましょう。 ※出典:Weblio 英和辞書
search one's soul
「search one's soul」には、「自分の心底を探る、自らを省みる、内省(反省)するという意味があります。soulをheartに代えて「search one's heart」とすることもできます。ちなみに「soul-searching」とすると、「鋭い自己反省、自己省察、反省」という意味の名詞や、「自己省察の」という意味の形容詞となります。
彼は自らを省みなければならない
reflect
「reflect」は元々、「(物体が光や熱などを)反射する、(音などを)反響する」という意味を持ちます。そこから転じて「思案する、熟考する」となります。
「reflect on(upon) oneself」で「反省する、内省する」を意味する熟語になります。また、「reflect on one's past conduct」や「reflect upon one's deeds」なども、「自分の過去の言動を省みる」の意味で使うことが可能です。
その老人はいま、自らを省みていた
introspect
「introspect」は「内省する」と追う意味の動詞です。「introspect one's own mind」で、「自分のことを省みる」という意味の熟語となります。
彼女は内省しているのだろうか?
「省みる」の使い方と例文
「省みる」は、自省し、自らの向上を期すという、とても前向きな決意を感じさせる表現です。次の「省みる」の例文を参考に、正しく使えるようになりましょう。
・今までの自堕落な生活を省みて、まずは早寝早起きを決意した
・今回の事故に至るまでの経緯を省みて、次回に活かすように努めます
・自らを省みることのできない人間には、今後の向上は期待できない
・ビジネスマンにとって、節目節目で自らを省みることはとても大切だ
・コロナ禍での人と接しない生活は、これまでの人生を省みる良いチャンスだ
「省みる」の意味を知って正しく使おう
「省みる」には、「自分のしたことを、もう一度考えてみる。反省する」という意味があります。
自らのふるまいや言動などを反省し、同じ過ちは犯さない、より向上していくといったポジティブな意志を感じさせる表現です。ビジネスシーンにおいても、過去の反省に立った決意表明といった、ここぞという場面で使える言葉でしょう。
また、同じ読みを持つ「顧みる」との違いなど、使い方が難しい言葉でもあります。「省みる」の意味を正しく理解して、類語ともうまく使いわけることで、円滑なコミュニケーションが生まれます。「省みる」という表現を使いこなしてみてください。