女優の池脇千鶴が、フジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(毎週日曜14:00~ ※関東ローカル)のナレーション収録に臨んだ。担当したのは、3日に放送される『火事と夫婦と生きがいと ~高円寺「薔薇亭」の1年~』。50年続く人気洋食店「薔薇(ローズ)亭」が火事で全焼し、生きがいを失ってしまった経営者の老夫婦の姿を追った作品だ。
1997年にデビューし、今年25周年を迎える池脇にとっての“生きがい”は、やはり「俳優業」。今回の物語を見て、この仕事が続けられる喜びを改めて実感したようだ――。
■「年々涙もろくなってますね」
以前テレビ番組で紹介されているのを見て、「薔薇亭」の存在は知っており、店の前を通ったこともあるという池脇。「ママの千種さんが派手で、学生さんとかに『早く食べちゃいなさい!』って世話焼きな感じなのをよく見てました(笑)」というだけに、火事で営業休止になっていた事実に「あれー!?と思ってびっくりしました」と衝撃を受けた。
夫の正氏さんの存在は知らなかったが、今回の映像を見て、「頑固な旦那さんがいて、奥さんが気を使ってて、どこにでもいらっしゃる夫婦だと思うんです」と印象を述べ、生きがいを失った夫婦が、突然訪れた“夫婦水入らずの時間”をどう過ごしていいか分からなくなったことで、“家庭内別居”状態になってしまったことにも理解を示す。
今回の番組では、元気いっぱいでパワフルだった千種さんが店の焼け跡を見て涙、かわいがった常連客のもとで涙する場面も登場するが、「あんなことになってしまい、なんてつらいんだろうって、自分も泣きそうになってしまいました。人が泣いていると、何だかもらい泣きしちゃうんです。年々涙もろくなってますね」と心に響いたそう。
一方で、夫婦が「子どもたち」と呼ぶ常連客たちが開催した千種さんの誕生日パーティーをきっかけに、夫婦の関係が好転していく姿も見て、「一緒にシチューを食べているのが、すごく楽しそうだったんですよ。『いやあ、温まる!』ってはしゃいでて(笑)。しかも学生さん向けに出してたボリュームでそのまま作ってるので、2人ともすごくいっぱい食べるんだなと思って、やっぱり体を動かして働いてらしたんだなと感じました」と、ひと安心した。
■行きつけだった店の閉店を知ったショック
自身にとって思い入れのある飲食店は、「都内で何回も引っ越ししてるので、その近所近所に行きつけのお店はあるんです」というが、その中でも「昔よく通ってたおうどん屋さんがあって、引っ越しちゃったから全然行けなかったんですけど、ある日『食べログ』で見たら閉店されていたのを知って。おじいちゃんがやっていた店で、ひょっとしたら限界が来たのかなあ…とかいろいろ想像したんですけど、すごく残念ですね」と、ショックを受けたそう。
それだけに、「行きつけのお店がなくなってしまうのは、常連さんとしてはやっぱり寂しいと思います」と、薔薇亭の「子どもたち」の思いに共感。その上で、今回の見どころについて、「すごく物語が凝縮されて、波があって、それがストーリーとして出来上がっているから、入り込んで見ちゃうんじゃないかと思います。夫婦がどう立ち直って仲良くなっていくのか、楽しんで見てもらえれば」と呼びかけた。
■俳優業を奪われたら「取り返せないと思ってしまう」
今回のテーマにかけて、自身の「生きがい」を聞いてみると、やはり返ってきた答えは「このお仕事をやれて幸せだと思っているので、俳優業ですね」。
「気づいたらもう25年やってて、『もう40歳か!』みたいな感じなんですけど、それでもやらせてもらっていることが生きがいだし、うれしいし、喜ばしいなと思います」としみじみ語る。
そんな生きがいをもし自分が奪われてしまったら、「想像できないですけど、自信もなくなって、(薔薇亭の夫婦のように)あんなに明るくはいられないなと思います。家でジーッとうつむいてるんじゃないかなと思いますね。一度奪われたものって、私のメンタルだったらちょっと取り返せないと思ってしまうので、『実家に帰ろうかな』とか、そういうふうに考えると思います」と、人生において欠かせないものであることを再確認していた。
●池脇千鶴
1981年生まれ、大阪府出身。97年、『ASAYAN』(テレビ東京)のオーディションで「三井のリハウス」第8代リハウスガールとしてデビュー。その後、映画『大阪物語』『ジョゼと虎と魚たち』『そこのみにて光輝く』『半世界』、ドラマ『ほんまもん』『風林火山』『Jimmy~アホみたいなホンマの話~』『その女、ジルバ』などに出演する。