1袋が数十円で買える「もやし」は節約食材の代表選手。年間を通して価格が一定しているので、他の野菜の価格が高騰しているときも安心して購入できますよね。
便利に使えるもやしですが、緑黄色野菜のように色が付いているわけでもなく、水分も多いことから「栄養が少なさそう」と思う人も少なくないはず。また、他の野菜と比べて傷みやすいので、保存方法も気になるところです。
この記事では、もやしの栄養成分や期待できる効能、カロリー、調理ポイントや長持ちさせる保存方法などを解説します。
もやしはどう育つ?
スーパーの野菜売り場に並ぶ袋入りの「もやし」とは、大豆や緑豆、黒豆などの豆類を暗い環境下で発芽させ、軟化栽培したもの。いずれも湿度や温度が管理され、豊富な水が流れる清潔な工場の中で、光を遮断して育てられます。
露地栽培の場合、気温や日照時間、降雨量など天候の影響を受けがちですが、もやしは種まきから収穫まで、一貫してオートメーション化された工場で行われます。そのため、常に安定した価格・品質を保つことができるのが特徴です。
もやしの種類
もやしの種類は大きく分けて4つあります。
緑豆もやし
国内のもやし生産量の9割を占めるのが「緑豆もやし」です。緑豆を発芽させたもので、原料の緑豆はもやしのほかにも「緑豆はるさめ」にも使われます。太くシャキシャキした食感が特徴で、みずみずしく淡白な味わい。クセもないため、さまざまな料理に用いられます。
黒豆もやし(ブラックマッペ)
ブラックマッペとは黒豆のこと。その名の通り、黒豆を原料に用いたのが「黒豆もやし」です。日本では古くから親しまれていたもやしで、他のもやしと比べると甘みが強いのが特徴。シャキシャキした歯ごたえも人気です。
大豆もやし
「大豆もやし」は大豆を発芽させたもので、緑豆もやしよりやや軸が細め。韓国料理の「ナムル」や「チゲ」でおなじみのもやしです。特徴的なのが、先端に付いた豆。コリっとした独自の食感はほかのもやしではなかなか味わえません。青森県の大鰐(おおわに)温泉には、長さ30cmにもなる「大鰐温泉もやし」があります。
小粒大豆もやし
黒豆もやしと同様に、日本で昔から食されてきたのが「小粒大豆もやし」。大豆もやしと同じ大豆が原料ですが、納豆で使われる小粒の大豆を用いることから「小粒大豆もやし」と呼ばれます。加熱しても荷崩れしにくく、甘みが強いのが特徴。日本では、東日本よりも西日本で好まれる傾向にあります。
もやしの栄養素とカロリー
ひょろひょろとした姿と淡白な味わいのもやしですが、意外なことに栄養はしっかり含まれています。もやしの栄養成分は、日本食品標準成分表2020年版によると、以下のようになります。
※生のもやし100g当たりの数値
緑豆もやし
・カリウム:69mg
・カルシウム10mg
・葉酸: 41μg
・ビタミンC: 8mg
・食物繊維総量: 1.3g
・アスパラギン酸:460mg
大豆もやし
エネルギー: 29kcal
・たんぱく質:3.7g
・炭水化物: 2.3g
・カリウム:160mg
・カルシウム:23mg
・葉酸: 85μg
・ビタミンC: 5mg
・食物繊維総量: 2.3g
・アスパラギン酸:860mg
ブラックマッペもやし
エネルギー: 17kcal
・たんぱく質:2.2g
・炭水化物: 2.8g
・カリウム:65mg
・カルシウム:16mg
・葉酸: 42μg
・ビタミンC: 10mg
・食物繊維総量: 1.5g
・アスパラギン酸:490mg
カロリーは総じて低めですが、大豆もやしは可食部に豆の部分が含まれるだけあって、緑豆もやしやブラックマッペもやしのおよそ倍のエネルギー量となります。食物繊維や葉酸も、大豆もやしの方が多め。一方、ビタミンCは、大豆もやしより緑豆もやしやブラックマッペもやしの方が多く含んでいます。
特筆すべきはアスパラギン酸の含有量の多さです。疲労回復効果があると言われるアスパラギン酸ですが、もやしに含まれる量は名の由来となったアスパラ(100gあたり440mg)よりも多く含まれます。
もやしに含まれる栄養素の効果効能については、下記で詳しく解説していきます。
もやしに含まれる栄養素の効能
もやしに多く含まれる栄養素の効果や効能は下記の通りです。
【カリウム】
身体に欠かせないミネラルのひとつ。むくみの原因となる体内の不要な水分やナトリウムを排出する働きがあるため、高血圧の予防にも役立ちます。
【カルシウム】
骨や歯の主要な構成成分であるカルシウム。ほかにも血液を凝固させたり、精神を安定させるなどの働きがあります。
【葉酸】
葉酸は、ビタミンBの一種。体内でビタミンB12とともに赤血球を作るため、造血に欠かすことができないビタミンです。細胞の生産や再生・分裂にも大きな役割を果たすことから、妊娠中の女性に欠かせない成分としても知られています。
【ビタミンC】
ビタミンA・Eとともに、抗酸化作用があるビタミンとして知られるビタミンC。コラーゲンの生成や皮膚へうるおいを与えるなどの働きから、美肌に欠かせないビタミンとも言われています。そのほか、免疫力の向上やストレスを緩和する働きもあります。
【食物繊維】
腸を刺激して蠕動(ぜんどう)運動を活発にする食物繊維は、便秘を防いだり改善したりする働きがあります。糖質や脂質の吸収を抑える効果もあるため、肥満や生活習慣病の予防にも役立ちます。
【アスパラギン酸】
スタミナ維持や増強の働きがあることから、スポーツドリンクなどにも用いられるアスパラギン酸。体内でのエネルギー生成を促進し、疲労を回復させる働きがあります。アスパラに含まれる成分として有名ですが、実はアスパラよりももやしの方がアスパラギン酸の含有量は多い傾向に。特に大豆もやしは含有量が多く、アスパラのおよそ2倍のアスパラギン酸を含んでいます。
もやしのおいしい選び方
おいしく新鮮なもやしは、茎や根にツヤとハリがあり、全体的に透明感があります。反対に、根が茶色く黒ずんでいるものや、やわらかくへたっているもの、ぶよぶよしているものは避けましょう。もやしが入っている透明な袋に水が溜まっているのも、鮮度が失われている証拠です。大豆もやしの場合も、豆の部分が黒ずんでいたり、開いているものも避けた方がベターです。
もやしの調理はここがポイント
もやしにはビタミンCのほか、ビタミンB群の1種である葉酸が含まれていますが、これらは水に溶ける水溶性のビタミン。長時間ゆでたりさらしたりすると、水へ溶け出してしまいます。
茹でるときはサッと短時間にするのがポイント。大豆もやしは豆の部分が柔らかくなるまで3~4分の加熱が必要ですが、緑豆もやしやブラックマッペもやしなら30秒ほどで引き上げると、もやしの特徴であるシャキシャキした食感が保てます。電子レンジで加熱するのもおすすめです。
もやしは炒め物にも重宝しますが、ビタミンCは熱に弱いので、ここでも加熱のしすぎには要注意。シャキッとした食感が残る短時間程度にとどめれば、栄養素も逃さず摂取できます。
また、水に溶けやすい栄養素を逃さないためには、汁物に使うという方法もあります。味噌汁やスープ、鍋料理などにして、栄養が溶け出た汁ごと余さず食べるようにしましょう。
もやしのひげ根は取った方がいい?
もやしの根本にあるひものように長細い部分が「ひげ根」。軸と比べるとやや茶色く、取り除くと見栄えがよくなるため、あらかじめひげ根処理が施された「根切りもやし」も販売されています。ひげ根を取ると、口に入れたときの口当たりもよくなるというメリットもあります。
しかし、ひげ根にももやしの栄養が。余すところなくもやしの栄養を摂取するには、ひげ根を取らずに調理するのがおすすめです。
もやしの賢い保存方法
他の野菜と比べて、傷みやすいもやし。購入後はすみやかに冷蔵室に入れて、鮮度を保つようにします。
一般的に、野菜は野菜室で保存することが多いのですが、もやしの保存に適した温度は5℃以内であるため、野菜室より温度が低い冷蔵室か、チルド室に入れるようにしましょう。それでも製造日から3日以内に食べきるのがベターです。
しばらく保存したい場合は、冷凍保存という方法もあります。購入した袋ごと、あるいはフリーザーバッグなどにもやしを入れて冷凍すれば、2週間ほど保存が可能。ただし、シャキシャキした食感は失われてしまうので、ナムルや汁物、鍋料理などに向いています。
もやしは栄養をしっかり含む、コスパ食材!
「もやしっ子」という言葉があるように、栄養価が低くみられがちなもやしですが、疲労回復効果のあるアスパラギン酸を含む優秀食材であることがわかりました。皮をむいたり切ったりする手間も不要で、時短料理にぴったり。炒め物やナムル、味噌汁など、日常の食事にどんどん取り入れていきたいですね。