皆さんの周りに、会議や雑談で話が広がらない人はいませんか?
せっかくこちらが話題を振っても「そうなんですか」といった冷たい返事。場合によってはスルー(無言)ということもあるかもしれません。こうした人たちとどうすれば会話が広がり、円滑なコミュニケーションをとれるようになるのでしょうか。
本記事では、"伝わる技術"をテーマに書いた拙著『バナナの魅力を100文字で伝えてください』(かんき出版)から「話が広がらない人への対応策」を解説します。
話が広がらない6つの理由
会話中に訪れるちょっとした「沈黙時間」。なんとなく気まずいものですよね。 例えばこんな感じです。仕事で初めて会った人とあいさつを交わした後の会話です。
Aさん「最近、肌寒くなってきましたね」
Bさん「そうですね」
Aさん「紅葉もきれいで、日光のイロハ坂は大渋滞だそうです」
Bさん「そうなんですか」
Aさん「こちらのオフィス、雰囲気いいですね」
Bさん「ありがとうございます」
Aさん「……(沈黙タイム)、で今日のご提案なんですが……」
このように話が広がらず、恐怖の沈黙時間が生まれてしまうときがあります。相手はこちらが投げた質問に一問一答。会話がブツブツ切れていく。
なぜ話が広がっていかないのか、そこにはいくつかの理由があります。話が広がらない理由を分析すると、主にこの6つが考えられます(ほかにも理由はありますが)。
1 話すのが苦手
2 こちらに興味がなく、話す気がない
3 いま機嫌が悪い
4 時間がないので早く終わらせたい
5 こちらの質問が下手で話す気が起きない
6 こちらにいい感情を持っていない
話すのが苦手な人の場合は、これはしょうがないですよね。話すのが苦手でも聞くのは好きという人もいるので、質問を相手に投げるのではなく、自分が主導権を握って話をしていくことでコミュニケーションが取れると思います。
時間がない場合、これはスピーディに切り上げることが相手のためでもあるので、話を広げる必要はないですよね。
問題は2と3、5と6です。ここを突破するのは簡単ではないですが、「質問力」が力になってくれます。
打ち合わせや雑談で役立つ「質問力」
僕はサッカーが好きなので、よく試合を観戦しているのですが、サッカーの試合が終わった後の選手へのインタビューを見ていてよく思うことがあります。それは、インタビュアーの質問力によって、選手の回答がまったく違うということ。
「今日の試合の感想を教えてください」といったフワッとした質問には、選手も想定内の答えしかしてくれません。
勝った試合ならば、「この勝利を次につなげていく」「今日のことは忘れて明日からは次の試合に備える」など。負けた試合ならば「しっかりトレーニングして次は必ず勝つ」などです。
一方で、インタビュアーの質問がうまいときは、選手も思いのほか本音を語ってくれたり、本心が表れる表情や話し方をしたりと、見ているほうにとっても面白い回答が出てくることがあります。
どう聞かれるかで、答えはまったく変わる。これが質問の力です。
質問の力は打ち合わせや雑談でも力を発揮してくれます。話を広げていくためには、「質問を深めていく」ことが大切です。
例えば、これは悪い質問ケースです。
Aさん「ランニングが好きと聞きました」
Bさん「そうですね、よく走ってます」
Aさん「先日、テレビでやっていたマラソン大会、ご覧になりましたか?」
Bさん「いえ、見てないです」
Aさん「その大会で多くの選手が同じスニーカーを履いてましたが、Bさんもああいうスニーカーで走ってるんですか?」
Bさん「いえ、違います」
Aさん「………」
Bさん「………」
話が広がらないと思い、横に横に質問をずらしていく。でも、話が盛り上がらないので、さらに横ずらしをしていく。
「イエス/ノー」で答えられる質問はNG
それと、この質問がよくないもうひとつの理由は「イエスかノーで答える質問をしている」ということ。
イエスの回答であれば話が広がる可能性はありますが、ノーの回答が出る可能性も十分あります。ノーの回答が出てしまうと話はそこで切れてしまいます。
質問は「イエス・ノー」で回答されるものではなく、相手が次の会話につながるヒントを話してくれそうな質問をしていく。そうすると話は広がっていきます。例えば、こんな感じです。
Aさん「ランニングが好きと聞きました」
Bさん「そうですね、よく走ってます」
Aさん「どういうところを走っているんですか?」
Bさん「家の近所を走ることが多いですが、ときどきは旅先で走ったりもします」
Aさん「そうなんですね。旅先だとどういうところで走られたことがあるんですか?」
Bさん「京都の旅行に行ったときはよく走ります。京都は見どころが多いから走っているといろいろな寺社仏閣があり、楽しいんです」
Aさん「いいですね。僕も京都が大好きでよく行きます。ぜひ、僕も今度京都を走ってみたいと思います。おすすめのコースはどのへんでしょうか?」
イエスノーではなく、広がる質問をしています。これだと会話が盛り上がっていきそうな雰囲気が伝わります。
最初はあなたへの興味が薄かった相手も、こうやって話を広げていくとあなたへの興味が出てくる可能性も十分あります。また話が盛り上がっていくと、不機嫌だった相手の機嫌がよくなることもあります。
こちらに対する感情が好転することもあるはずです。質問は、コミュニケーションの大きな武器になるのです。
人は「自分が好きなこと」なら話したがる
話を広げる質問のコツのひとつが、相手の「好き」を聞くことです。
1 相手の好きなことを聞く
2 相手の好きなことは相手のどこかに隠れていることも。特にオンラインなどでは、背景や部屋の後ろ側に「好き」のヒントがあることもよくある
3 相手の好きなことと、自分が話せることをつなげる。ただ質問をするだけでなく、自分の話も折り込むことで、話が盛り上がった状態を作る。
人は好きなことについて話しているときが楽しく、自分の好きに関心を示してくれる人に好感を抱きやすいものです。相手の「好きなこと」は最高の話題の種になります。
このように、コミュニケーションにおいてはちょっとしたコツを知っておくと会話が円滑になるはずです。ほかにもいくつものコツがあるので、ぜひインプットして活用してください。
著者プロフィール:柿内尚文(かきうち・たかふみ)
編集者
1968年生まれ。東京都出身。慶應義塾大学文学部卒業。
株式会社アスコム取締役編集局長。長年、雑誌と書籍の編集に携わり、これまで企画した本の累計発行部数は1,000万部以上、10万部を超えるベストセラーは50冊以上に及ぶ。著書に「考える技術」をテーマにした『パン屋ではおにぎりを売れ』、『バナナの魅力を100文字で伝えてください』(ともにかんき出版)がある。