「LAVIE Tab T12」は、NECパーソナルコンピュータが3月17日に発売した12.6型のタブレットです。選択肢が限られるAndroid大型タブレットゆえに、使い勝手について気になっている人もいることでしょう。本稿では、同機の概要と、短期間試用したうえでのインプレッションについて、お届けしましょう。
意外と選択肢の少ない12.6型の大画面有機EL
Androidタブレットとしては国内トップシェアを誇る「LAVIE」シリーズ。今回使用した「LAVIE Tab T12(T1295/DAS)」は、2022年2月1日に発表され、3月17日に発売された新モデルです。
12.6インチというサイズ感は、競合で言えばAppleの「12.9インチiPad Pro」に迫る大きさ。Androidタブレットで12インチ以上の大画面モデルは意外と少なく、このサイズだけでも個性の尖った一台です。
突起部を除く本体寸法は、285.6×184.5×5.6mm。質量は約565gです。競合の12.9インチiPad Proが厚さ6.4mmで682g~であることを考えると、インチ数の割にはスリムかつ軽量な設計に思えます。
LAVIE Tab T12(T1295/DAS)のNEC Directでの価格は96,580円~。従来展開していた11.5型の「LAVIE T11」がそれぞれ65,780円~、47,080円~であることを考えると、シンプルにこれらの上位モデルという位置付けになのがわかります。また製品名に「Tab」が加わったことにも気づきます。
LAVIE Tab T12(T1295/DAS)の仕様をチェックしておくと、SoCとしては、Snapdragon 870を搭載。同チップは2021年1月に発表された8コアのチップで、7nmプロセスで製造されています。メモリは8GB、ストレージは約256GBです。
先述したT11では、Snapdragon 730G(2019年発表、8コア、8mmプロセス)に、メモリ6GB、ストレージ128GBという構成でしたので、処理性能としても一回り向上しています。
ちなみに、NECレノボグループで見ると、NECパーソナルコンピューターではなく、レノボ・ジャパンとしても「Lenovo Tab P12 Pro」というT12と似た製品を展開していることは知っておきましょう。こちらの価格は137,500円(割引適用で118,602円)なので、LAVIE Tab T12の方が少し安価に設定されています。
T1295/DAの主な仕様 | ||
ディスプレイ | 12.6型ワイド 有機ELディスプレイ (AMOLED) | |
プロセッサ | Qualcomm Snapdragon 870(最大3.2GHz、8コア) | |
メモリ | 8GB(LPDDR5) | |
ストレージ | 約256GB | |
カメラ | フロント:約800万画素(固定フォーカス)、リア:約500万画素(固定フォーカス)+約1,300万画素(オートフォーカス) | |
無線LAN | Wi-Fi 6(IEEE802.11a/b/g/n/ac/ax) | |
オーディオ | JBL製クアッドスピーカー(Dolby Atmos対応) | |
本体サイズ | W285.6×D184.5×H5.6mm | |
重さ | 約565g | |
バッテリー駆動時間 | 約10時間(Web閲覧時) | |
カラー | ストームグレー |
別売のペン、キーボード、スタンドカバーを用意
LAVIE Tab T12(T1295/DAS)向けのアクセサリとしては、脱着式のキーボード付きのカバー「スタンドカバー付きキーボード」(21,878円)や、4,096段階の感知に対応したスタイラスペン「デジタルペン2」(9,878円)、キーボードなしのカバー「タブレットカバー」(6,578円)が、別売のオプションとして用意されています。
スタンドカバー付きキーボードは、ファブリックな表面仕上げになっており、サラサラした手触りが特徴です。背面部にはキックスタンドが内蔵されていて、スタンド代わりになります。
キックスタンドはかなり深い角度まで下がるので、机の高さに応じた微調整が可能。ペンを併用する際にも、筆圧が高くない使い方ならそのまま利用できるでしょう。
また、ディスプレイを保護する側のカバーにはキーボードが備わっており、用途に応じて脱着可能です。タブレットの側面に磁力で固定して使います。ちなみに、Bluetooth画面で接続が確認でき、ディスプレイから外した状態でもキーボードやタッチパッドが利用可能なこともポイント。
キーピッチは公式な値ではありませんが、筆者が手元のノギスで測ったところ約19mmありました。ストロークもそこそこ深いので、ライター仕事でも十分使えそうです。キーボード底面は安定していて、たわみなどはありませんし、打鍵感は軽やかな印象を受けました。
スクリーンショットを撮るキーや、後述する「プロダクティビティモード」のオン・オフを切り替えるキーなども備わっていて、使い勝手が良く考えられています。
また、上部背面には「デジタルペン2」を収納できるスペースが用意されています。
そもそもLAVIE Tab T12(T1295/DAS)は、背面に備わったマグネットでデジタルペン2を固定でき、専用ケースはその固定したペンの上から覆いかぶさるように装着できるようペン用のポケットが付いているのです。
さらに、パカっと上部だけ開くようになっているので、ペンを使いたい時にも、ケース全体を外す必要はありません。ちなみに、T11の際には、ケースのうえからペンをマグネット固定する仕様だったので、良い改良だと思いました。
その「デジタルペン2」は、グレーよりのシルバーで統一されており、固定用に1面のみフラットになっています。フラットになった部分にLAVIEのロゴと製品名が刻印されている以外は、特に装飾はありません。
ペン軸には1つボタンがついていて、ダブルクリックでショートカット機能を呼び出せるようになっています。なお、筆圧感知に対応していることもあり、ペン先の部分にはスプリングが内蔵されていて、押し込むと沈みます。
T11のときの対応ペン「PC-T1195BAS/PC-T1175BAS/PC-TAB11201用デジタルペン」(PC-AC-AD022C)では、ペン軸の先にキャップがついていて、ケーブル接続で充電を行う仕様でした。しかし、デジタルペン2(Digital Pen 2(PC-AC-AD028C))にはキャップが付いておらず、充電はワイヤレスで行う仕様に変わっています。
そして、スタンドカバーはキーボードの無い保護カバーです。質感は上述したスタンドカバー付きキーボードと似ていますが、ディスプレイ側の保護カバーが脱着式ではありません。スタンドとして使ったり、タブレットを平置きにする柔軟に使えます。ビューアー用途やペン中心での利用を想定するなら、キーボードケースよりもこちらの方が好みという人もいるでしょう。
動画視聴や電子書籍に◎、手描き用途もグッド
実際に、LAVIE Tab T12を使ってみてよかったと思ったポイントはいくつかあります。まずは、カジュアルな用途に関して。
動画視聴については、ディスプレイの解像度は、2,560×1,600ドットで非常に精細な印象。有機ELということもあり、黒の表現も深みがありました。また、側面にはJBL製Quadスピーカーが搭載されており、サウンドはDolby Atmosにも対応。音質を含めてハイエンドのタブレットらしい体験に整えられている印象を受けました。
ただし、筐体は大きいので、両手で支えながら映画を一本観る――という利用はあまり現実的ではありません。スタンドを使って、タブレットを机の上などに設置して楽しむことが前提になるのではないでしょうか。
一方、ソファなどに腰掛けながら手持ちでも使いたいな、と思ったのは電子コミックを読むという用途です。Androidタブレットでは、ホーム画面のさらに左側に「エンターテインメントスペース」という画面が用意されていて、ここからPlay Booksのコミックなどをすばやく探せます。
12.6インチのディスプレイでは、電子漫画を見開きで読むのに最適。Play Booksでは、ページをめくるときに紙がたわむようになるのも、心地よく感じます。12.6インチというサイズ感だからこそ、見開き絵や細かい書き込みなども、単行本のように堪能できました。
ペンを使った用途では、手書きノートはもちろん、イラストを描くのにも12.6インチという大画面が活きてきます。今回はデジタルペン2を使って、「メディバンペイント」でちょっとした絵を描いてみました。
感想としては、広い画面――特にPCと同じような横長アスペクト比の作業領域で絵を描けるのはなかなか便利でした。たとえば、参照する資料を表示したり、不慣れなアプリならチュートリアルを見ながら作業できるのはこのサイズ感ならではのポイントでしょう。
また、デジタルペン2の描きごこちは、ペン先に適度な摩擦感があるので、個人的には別途フィルムを貼る必要はなどもないかな、と思いました。
個人的には、絵も文字も、表現の幅が広がるという点で、筆圧感知の対応は必須。アプリ側の対応状況や設定カスタマイズについては随時チェックする必要こそありますが、このサイズのAndroidタブレットで筆圧感知対応ペンが使えるのは嬉しいところ。
PCライクな運用もできなくはなさそう
LAVIE Tab T12では、設定から「プロダクティビティモード」をオンにする(あるいはスタンドカバー付きキーボードの専用キーを押して同モードを有効にする)ことで、アプリウィンドウを自由に配置できるPC風の画面に切り替わるのが特徴です。
また、背面にはデュアルカメラ(約500万画素 広角+約1300万画素 標準)を、前面には約800万画素のカメラ搭載しているので、書類をスキャンしたり、オンラインミーティングをしたり、という運用もできるとは思います。
PlayストアからMicrosoft Officeアプリをインストールするなどすれば、十分事務作業はできると思います。もちろん、メインマシンとして「これ一台だけで仕事をする」というのは、勇気が要りそうですが、家に据え置きのPCが一台あって、外出時やリビングで使うサブマシンとして運用するくらいなら十分使えるのではと思いました(ただし、良いアプリを探すことが重要にはなると思います)。
ちなみに、処理性能としては、「Geekbench 5」のCPUベンチマークで、シングルコアスコアが932、マルチコアスコアが2935。一方、COMPUTEベンチマーク(GPU)では3724でした。たとえば、CPUの数値を見るだけならば、昨年のGalaxyのS21シリーズに匹敵します。
試しに、VLLOで16分程度の動画にフィルターを適用したところ、約10分20秒で出力されました。この程度くらいのスピード感ならば、ちょっとした短編動画を編集するくらいならば十分実用的だと思います。
一方、「特殊効果」にある「Old monitor」エフェクトを適用して出力するなど、重い処理にすると出力途中で落ちてしまうなどもあったので、万能というわけではないことは理解しておきましょう。
繰り返しになりますが、「Android搭載で、12インチ超えのサイズ感で、使い勝手が考えられているタブレット」というのはかなり貴重な選択肢です。
SoCのパフォーマンス的に、競合のiPad Proのようながっつりクリエーターのための一台――という路線ではありませんが、既存のAndroidユーザーにとって、慣れ親しんだOSの操作体系のままで扱え、エンタメコンテンツを楽しんだり、サブのノートPC代わりにちょっとした作業をする用途として、なかなか魅力的な一台だと思いました。