スイミングスクールのデジタル化が加速しています。ソニーネットワークコミュニケーションズとコナミスポーツのコラボによる「運動塾デジタルノート」が4月1日から順次、全国のコナミスポーツクラブ約100店舗に導入される見込みです。映像とAIを活用してコーチングをサポートし、練習効果の飛躍的な向上を目指すという、両社の取り組みを取材しました。

  • ソニーネットワークコミュニケーションズとコナミスポーツがコラボ。スイミングスクールをDX化する「運動塾デジタルノート」

運動塾デジタルノートとは?

運動塾デジタルノートは、ソニーのセンシング技術とAIを活用した「スマートスイミングレッスンシステム」を活用したもの。プール施設に複数のカメラを設置し、撮影した映像をAIが自動編集。レッスンに参加した生徒は、プールから上がった直後にプールサイドのタブレットで自身の泳ぎを確認できる仕組みです。

  • 自身の泳ぎのフォームを確認する生徒

設置するカメラ台数はプール施設の大きさにもよりますが、たとえば先行導入されるコナミスポーツクラブ本店なら、壁面に8台と水中に4台を設置する予定。

  • 4Kの高画質録画に対応したソニー製の小型リモートカメラ、4K水中カメラなどを活用します

AIは独自のアルゴリズムで泳いでいる人を検出し、水面と水中の各アングルからの映像を適度に組み合わせて編集します。完成した動画は、クラウド経由で個人別ページに配信できる仕様。スマートフォンなどを通じて確認できるとあり、レッスンの現場に付き添えない離れた場所にいる保護者もひと安心でしょう。

  • 水中カメラの映像イメージ。表情まではっきり。プライバシー配慮のため、隣のレーンの映像は自動的にボカシが入ります

【動画】ソニーネットワークコミュニケーションズのICTソリューション公式チャンネルから

今回のシステムは、ルネサンスが運営するジュニアスイミングレッスンに導入済み(2021年5月から)。現時点で、すでに約80施設で稼働しています。その導入効果について、ソニーネットワークコミュニケーションズ 法人サービス事業部の津山史生氏は以下のようにメリットを強調しました。

「まず、泳ぎが変わります。それまでコーチが指摘しても直らなかった足の動きが、動画を見ると一発で直ったりします。するとレッスンの指導効率も格段に上がります。これを受けてコーチは、レッスン品質をどうやって上げようかと、モチベーションが沸いてくる。ご家庭の保護者に動画が届く緊張感もあり、教える側の意識も変わっていきます。

自身の泳ぎを保護者に見てもらえることから、子どもはヤル気が向上しますし、動画を通じて『親子のコミュニケーションが増えた』というお声もいただいています。コロナ禍でスイミングのレッスンは見学が難しい状況。『水中カメラで泳いでいるときの表情まで見えたのがうれしい』『祖父母にも孫の泳いでいる姿を見てもらえた』というご感想も届きました。弊社ではサービスをさらに進化させるべく、今後も改善を重ねていきます」(津山氏)。

  • コナミスポーツ 執行役員の岡田潤氏(左)と、ソニーネットワークコミュニケーションズ 法人サービス事業部 事業部長の津山史生氏(右)(撮影時のみマスクを外してもらいました)

最近は、スポーツクラブの経営者に「お宅ではスマートレッスンを受けられますか」といった問い合わせが増えているそうです。津山氏は「スマートスイミングレッスンシステムは、新規顧客の獲得にも効果があります」と述べます。

  • サービス利用イメージ。レッスン前には見本動画、上達ポイントを予習・確認できます

  • 進級テストがあった場合、結果も動画付きで確認

コナミスポーツ 執行役員の岡田潤氏は「全国に展開しているコナミスポーツクラブは直営が153店舗あり(2021年9月30日現在)、そのうち100店舗で運動塾のスイミングスクールを実施しています。1年後には全店舗に導入できたら」と意欲的に語ります。

ちなみに、コナミスポーツクラブでは最近、学校の水泳授業を受託する機会も増えているとのこと。そこで岡田氏は「将来的には、ここにも導入していけたら」とします。

「学校がプールを維持することが困難な時代になりました。今回のようなデジタルツールを活用すれば、学校の負担も減らせます。運動塾デジタルノートで培った多くのノウハウを活用すれば、部活動の支援も行えるでしょう。ゆくゆくは社会課題の解決にも取り組んでいきたいですね」(岡田氏)

子どもたちとプロスイマーが体験

この日、コナミスポーツクラブ本店のプールでは4名の子どもたちが運動塾デジタルノートを初体験。それぞれ「自分の泳いでいる姿を初めて見た」「良いところと悪いところが分かりやすい」といった感想を口にしました。指導にあたったコーチは「映像で確認することで、できているつもりでも実はできていなかったフォームもすぐに改善できますね。子どもたちの水泳に対する姿勢も前向きに変化したのを感じます」と話します。

  • タブレットの映像を食い入るように見つめる子どもたち

また、コナミスポーツ所属で50mバタフライの元日本記録保持者、高安亮さんがデモンストレーションで美しい泳ぎを披露しました。高安さんは「競技選手なら大会に行ったとき、自分の泳ぐ姿を映像で確認できます。それを練習時からやってもらえるとは。水中の映像はプロでもなかなか見る機会がありません。これを活用すれば上達も早くなるでしょう」とコメント。活用のポイントについては、まず理想の泳ぎを頭でイメージし、次に実際に泳いだ姿を映像で確認、これを繰り返すことで自分の泳ぎをイメージに近づけていくと良いと解説していました。

  • 50mバタフライの元日本記録保持者・高安亮さんも、運動塾デジタルノートの効果に太鼓判