一般的なレンズ交換式カメラ用の交換レンズでもっとも望遠となるのが、キヤノンRFマウントの超望遠レンズ「RF1200mm F8 L IS USM」です。30年近く前に登場したEFマウント版の「EF1200mm F5.6L USM」と比べ、重さは8割減、価格は7割減という圧倒的なダウンサイジングを果たし、「手持ち撮影できる1200mmレンズ」として野鳥や野生動物、航空機を撮影したいと考える写真ファンから熱い視線を集めています。「キヤノン本社にも2本しか現存しない」という幻のEFマウント版と合わせ、劇的に進化した1200mmレンズのすごさを見ていきましょう。

  • EFマウント版の「EF1200mm F5.6L USM」(奥)から劇的進化を果たしたRFマウントの超望遠レンズ「RF1200mm F8 L IS USM」(手前)

平成の始めに登場した伝説の超望遠EFレンズ

フルサイズミラーレス「EOS R」シリーズ用のRFマウントレンズの拡充を急ピッチで進めているキヤノン。RFマウントの交換レンズはすでに28本に増え、焦点距離では5mm~1200mmをカバーするまでになりました。

そのなかでもっとも望遠となるのが、5月に販売を開始するRF1200mm F8 L IS USM。キヤノンは、約30年前の1993年7月にEFマウント版のEF1200mm F5.6L USMを発売しましたが、RF1200mm F8 L IS USMは同じ1200mmのフルサイズ対応交換レンズとは思えないほどサイズも価格もコンパクトに仕上がっていました。

  • キヤノン本社に2本しかないというEFマウント版の「EF1200mm F5.6L USM」。いくつものキズが刻まれた外観から、多くのカメラマンが重さと大きさに苦労しつつも超望遠の世界を切り取ってきたことがうかがえる

EFマウント版のEF1200mm F5.6L USM、重さはなんと16.5kg(16,500g)もある超重量級レンズで、レンズ上部に備えられた骨太のハンドルが無言で重さをアピールします。初めて実物を目にしたレンズを実際に持ってみましたが、腕がプルプル震えるほどの異次元の重さで、手持ち撮影は当然ながら不可能のシロモノでした。価格も圧巻で、当時の価格はなんと980万円! EFレンズで唯一の受注生産品でもあり、きわめて特殊な存在のレンズだったのです。キヤノンの広報担当者いわく「キヤノン本社にも2本しか現存していない」超レアモノだといいます。

  • EF1200mm F5.6L USMは持ち上げるだけでも精いっぱい。交換レンズでは異色のデカさのハンドルが重さを物語る

  • 銘板に刻まれたシリアルナンバーは100番台

令和の始めに劇的進化を見せた超望遠RFレンズ

同じ1200mmながら、新しく登場したRFマウント版のRF1200mm F8 L IS USMは重さが3.34kg(3,340g)と、EFマウント版の実に8割減になりました。EOS R3を装着しても約4.35kgに収まり、手持ち撮影も不可能ではありません。実売価格も266万2000円と、EFマウント版と比べて7割以上も下がりました。もちろん受注生産品ではなく、一般的なカタログモデルとして店頭で購入できます。

  • 劇的な軽さになったRF1200mm F8 L IS USM。外観も現代的な仕上げになり、レンズを持ち上げるためのハンドルは当然ながら装備しない

  • RF1200mm F8 L IS USMは全長もかなり短くなった

これほどの小型軽量化や低価格化が図れた理由は、EFマウント版の超望遠レンズ「EF600mm F4L IS III USM」(2018年12月発売、実売価格は168万円前後)の光学系をそのまま受け継ぎつつ、後部に焦点距離を2倍に高める専用の拡大光学系を追加するという設計にしたこと。EF600mm F4L IS III USMは、従来モデルよりも大幅な軽量化を図っており、そのメリットがRF1200mm F8 L IS USMの小型軽量化に貢献したわけです。レンズをイチから新規に設計する手間が省け、EF600mm F4L IS III USMと同じ部品が共用できることで、大幅な低価格化も図れたわけです。

  • 後端のグッと細身になった部分に拡大光学系が搭載されている。マウント付近はRFレンズ共通のシルバーカラーで塗装されている

  • レンズ構成図。拡大光学系を除いた部分は、EF600mm F4L IS III USMの光学系を受け継いでいる

焦点距離を2倍にするエクステンダー「EXTENDER RF2x」を装着すれば、なんと2400mmの超望遠撮影が可能になる異次元のレンズ。このレンズを使いたいからEOS Rシリーズに乗り換える!という写真ファンも、これから続々と出てきそうです。