昨年、伊勢を旅した際に自転車で市内を散策しました。これが意外と楽しかったので、味をしめた筆者、先日初めて訪れた金沢も自転車でウロウロ。昭和のオジサンの琴線に触れた場所、食べ物を紹介します。
金沢市内も自転車がお勧め?
金沢市はコンパクトな街並みということもあり、自転車での観光も悪くありません。冬場は積雪があるので難しいですが、雪はもう融けていたのでまったく問題なし。
金沢市の公共シェアサイクル「まちのり」というものがあり、市内にサイクルポートが幾つかあるようなので、今回は1日券を購入してみました。
自転車自体は都内でもよく見かけるタイプに近いです。便利なのはハンドルステムのあたりに「スマホ固定」用のアダプターが付いていること。地図アプリでルート検索しながら乗れるので、特に不慣れな場所を移動するには役立ちそうです。
森山大道の作品を鑑賞
最初に行ってみたのは2020年6月に開館した、私設の現代アート美術館「KAMU kanazawa(カム カナザワ)」です。実はこの美術館、増殖します。
つまり複数のアート施設で構成されているのですが、クラウドファンディングで新プロジェクトを企画し、その資金で次々と増えていく仕掛けなのです。面白い仕組みですね。
展示内容はさまざまですが、その一つに写真家の森山大道氏の作品をテーマにした展示があったので、見てみました。
地図の通りに進むと狭い路地を抜け、飲食店が集まる一角へ。こんな場所に美術館? と半信半疑でさらに探してみるとありましたよ!
入ってもさらに驚き。森山大道氏の有名な作品である「唇」の写真が壁一面、天井まで所狭しと唇が並んでいます。
「Lip Bar」というこの作品、どうやら以前新宿のゴールデン街で開催されたアートイベントでの、同氏のインスタレーションから生まれたようです。
店内のアルバイトスタッフの方に聞いたところ、「日によって増減しますが、多い日は200人程度の来場者がいますね」と言います。
来場者の多くは県外からの観光客で、大体の方が他の美術館も回るので回遊率は高いそうです。街がコンパクトな金沢だけに、移動するのが苦ではないというのも影響していそうですね。
なお本展示は2020年6月21日から始まり、2022年6月30日までの開催です。
金沢市内で昭和を探す
金沢の街は歴史的建造物が多いのが特徴ですが、そうではない部分も。特に、地方都市ならではの「昭和」な場所も残っています。特に筆者は休日にはそうした場所を探して散歩する習慣があるので、なおさら興味が。
例えば観光地である「ひがし茶屋街」も少し離れるとそうした風景に出会えますよ。
細い裏路地に入れば、生活する方の日常の様子が! こんな何の変哲もない風景が面白い。昭和のオジサンならではの楽しみ方です。こんな時は、どこでも行け、時間も気にしなくていいレンタルサイクルは使い勝手がいいですね。
また、自転車のもう一つの利点は、徒歩より移動範囲が広がりつつ、車と違って、街の細かい部分にも目がいくこと。例えば、玄関先に不思議な物体を付けている家を見つけました。
なんと、とうもろこし! 不思議な習慣ですね。後日調べてみると、市内にある真言宗・観音院の行事「四万六千日(しまんろくせんにち)」で売り出されるものみたいです。
軒先に吊すと無病息災や商売繁盛のご利益があるといわれているとか。また、毛が多いほど儲「け」が多い、豆が多いほど「まめまめ」しく健康に働けるとされているとも。昨年、三重県の伊勢を旅した際にも「疫病におそわれない」という意味で、一年中しめ縄を掛ける習慣があったので、似た習慣は各地にあるのでしょうか。
そして「あてもなく散策」していると面白いのが、予想外の風景に出会えること。ひがし茶屋街を少し離れると、寺社がたくさん集まる地区に遭遇しました。
この辺りは「卯辰山山麓寺院群(うたつやまさんろくじいんぐん)」という場所で、約50もの寺社が散在しているそうです。
金沢市公式観光サイト「金沢旅物語」では次のように説明されています。
緑に覆われた一帯では、寺と寺の間を坂道や静かな小路が続き、散策しながら四季折々の美しい風景が堪能できます。歴史ある古刹には秘仏や秘宝が多く納められていて、金沢の魅力を再発見できます。“心の道”と呼ばれ、芭蕉の句碑をはじめ、金沢の歴史・文化に関わった人の足跡を辿る文学散歩などにおすすめのエリアです。
この地区も同じかは分かりませんが、花街は門前で発達したそうなので、例えば京都だと、北野天満宮の門前として「上七軒(かみしちげん)」という花街が発達した歴史を持つなど関係性が深いみたいです。こうした視点を持って街を回るのも楽しいでしょうね。
金沢名物のB級グルメに大満足
観光といえばグルメも大事な要素。金沢は新鮮な魚介類が豊富なことで知られていますが、ここはあえて地元の方が毎日通うような店を探したいと思います。
調べたところ、B級グルメとして「ハントンライス」が有名なよう。金沢名物として知られ、さまざまなメディアで紹介されているので、詳しい説明はそちらに任せます(雑。
逆に筆者は周辺の街並みに注目することに。お店は昭和32年創業の「グリルオーツカ」です。この「昭和32年」の看板だけで堪りませんね。このお店もそうですが、周辺も昭和感を色濃く残していましたよ。
金沢だけではなく、地方都市にはこうした少しだけ古いビルや路地が残っているので、筆者のような昭和生まれは懐かしさと妙な「ホームにいる感」を持ちます。つまり安らげるのです。
当然ですが、肝心のグルメも堪能。さすが名店! という満足度と、今日だけしか食べれないのかー、という寂しい気持ちも含め味わってきました。
このハントンライスという料理、店内のメニューには
ハン=ハンガリー トン(フランス語)=マグロ
と記載されています。非常に食べ応えがあるボリュームと、どこか懐かしい「洋食」の味がハマります。確かにこの味は中毒性が高いかも。
ということで、かなり偏りのある金沢市内を巡る旅でした。これからの季節、自転車はお勧めの交通手段ですよー。