強敵佐藤九段を下して、出口五段が挑戦者決定戦に名乗り

藤井聡太叡王への挑戦権を懸けて争われる、第7期叡王戦(主催、不二家)の本戦トーナメント準決勝、佐藤天彦九段―出口若武五段戦が3月26日に行われ、147手で出口五段が勝利しました。

両者はそれぞれ段位戦予選を勝ち上がり、本戦で佐藤九段は糸谷哲郎八段と丸山忠久九段を連破、出口五段は村田顕弘六段と斎藤慎太郎八段を破って準決勝に進出しました。

■決断の飛車切り

本局は出口五段の先手で横歩取りに進みました。40手目、△6四銀と飛車取りに銀が出た手に対し、出口五段は▲同飛と飛車を切り飛ばす決断の一手を放ちます。△6四同歩に▲5五角と打ち、先手が攻める展開となります。以下は先手が手にした銀で飛車を取り返し、さらにもう一枚の飛車も奪っての二枚飛車となりました。やや出口ペースの展開となりましたが佐藤九段もさすがの腰の重さを見せて形勢は難しく、その後も一進一退の攻防が続きます。

出口五段は二枚の竜で攻め、佐藤九段は二枚の馬を自玉周りに引きつけながらお互いに技を掛け合う複雑な終盤戦が続きましたが、111手目、▲2四歩と玉頭にたたいた手が決定打になり、出口五段が抜け出しました。直前の△2七とで2筋の歩が切れたため、この歩が打てるようになりました。実戦は△3三玉とかわしましたが、▲2三金△4二玉▲3二金△同馬▲同桂成△同玉▲3四角と玉頭を押さえた先手の勝勢となり、出口五段が挑戦者決定戦進出を果たしました。

■叡王戦に新風 フレッシュなタイトル戦に

4月2日に行われる挑戦者決定戦は出口五段と服部慎一郎四段の対戦で、どちらが勝利しても初のタイトル戦出場です。出口五段は26歳、服部四段が22歳と若い両者ですが、頂点で待ち受けている藤井叡王は19歳。仮に藤井―服部戦となると、19歳と22歳、足して41歳のタイトル戦は、1990年の第57期棋聖戦、18歳の屋敷伸之棋聖と24歳の森下卓六段(段位は当時)の42歳を更新する年少対決となります。

初タイトル戦出場を決めるのはどちらか、将棋界に吹く新風の活躍に期待しましょう。

相崎修司(将棋情報局)

挑戦者決定戦への進出を決めた出口五段(左)(写真は第49期新人王戦決勝三番勝負第2局のもの 提供:池田将之)
挑戦者決定戦への進出を決めた出口五段(左)(写真は第49期新人王戦決勝三番勝負第2局のもの 提供:池田将之)