最終週に向けて伏線回収の嵐で、人と人との輪がさらに広がってきたNHKの連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』(総合 毎週月~土曜8:00~ほか)。制作統括の堀之内礼二郎氏によると「人の命や縁が巡る」というのは本作の大切なテーマであり、それを象徴するように、演出的にも丸いものが意識的に散りばめられてきたと言う。
■丸いものがきちんと円に映るよう意識
まずはレコードや回転焼きなどのアイテム。もともと藤本有紀氏の脚本にあったものだが、丸いものがきちんと円に映るように撮影することを意識してきたそうだ。
「チーフ演出の安達もじりは、丸いものをテーマに撮っていこうと明確に意識していました。例えば回転焼きを焼くシーンを撮るという画作りにおいて、普通ならあんこを撮る場合、斜めからいくと思いますが、敢えて真俯瞰から撮っている。普通に生活をしていても、丸いものはけっこう多いのですが、映像設計のデザインとして、円をわかりやすく描こうとはしてきました」
他にも、話数が出るタイトル表記のデザインや、コマドリスト竹内泰人氏によるペーパークラフトのオープニング映像で、円がフィーチャーされている。
「オープニング映像については竹内さんのアイデアとデザインによるものですが、最初に竹内さんに見せて頂いたコンセプトデザイン案にあの重なりあう円が描かれていて、それに強く心をひかれました。時は巡るし、人生も命も巡る。それを拝見して、円は縁でもあり、すべてはつながっているのかもしれないと感じました」という堀之内氏。「個人的な感覚ですが、世界は一人一人が生きる時の流れや思いや記憶が重なり合い、つながりあってできているのかもしれない、そんなことを考えたこともありました」と話した。
初代ヒロイン・安子(上白石萌音)編、2代目ヒロイン・るい(深津絵里)編、3代目ヒロイン・ひなた(川栄李奈)編を振り返ってみても、おはぎ、野球のボール、レコード、満月、回転焼きなど、丸いものたちが共通のキーアイテムとして登場してきた。
■命の循環という想いを託した一人二役
堀之内氏は「世良公則さんや堀部圭亮さんなど、血がつながった別の人物を演じて頂くということを複数の方にお願いしていますが、遊び心が前提ではありながらも、そういったキャスティングにも、命が巡り巡って循環していくという想いを託しています」と言うが、確かに一人二役を演じているキャストは数多くいる。
世良は柳沢定一と息子の健一役、前野朋哉は健一の若年期と健一の孫である慎一役、堀部は赤螺吉兵衛と息子の吉右衛門役、宮嶋麻衣も赤螺清子役と吉右衛門の妻の初美役、尾上菊之助は初代と二代目の桃山剣之介役など、多くの俳優陣が二世代を演じてきた。
幾重もの縁(円)を描いていく藤本有紀氏の巧みなストーリーテリングが、スタッフやキャスト陣の情熱によって、さらに大きな円を完成させていくということだろう。最終回では、どんな大団円が待ち構えているのか、今から心が躍る。
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