近年多発しているリチウムイオン電池からの出火を原因する火災について、ドコモ/KDDI/ソフトバンクが安全に利用するための情報発信を行っている。
各社の取り組みは、2021年11月に東京消防庁から発表された「リチウムイオン電池からの火災にご注意を!」という呼びかけをうけてのもの。3社それぞれ、サポートページや自社メディアにリチウムイオン電池・充電器の安全性についてのコンテンツを掲載し、他社のコンテンツも相互にリンクして紹介している。
安全対策を施した純正/MCPC認証済み充電器を推奨。NG事例も
各社が呼びかけている内容は概ね共通しており、大きくわけて純正/MCPC認証済み充電器の使用の呼びかけと、リチウムイオン電池が損傷したまま利用しないようにという注意喚起だ。
純正充電器には、以下のような安全対策が導入されており、一定の安全性が確保されている。メーカー純正品でなくても、MCPC(モバイルコンピューティング推進コンソーシアム)所定の試験に合格した「MCPC認証」取得の充電器であれば同様に安全と考えてよいという。
- 通信影響対策:スマートフォン/タブレットへの通信影響を抑えるよう設計されている。
- 異常温度対策:プラグやアダプタ内部に温度検出機能を搭載し、異常を検知した場合は被害を最小限におさえるために充電を停止する。
- 過電流保護機能:コネクタに異物が付着した際に負荷電流が過電流検出値(機種により異なる)より多く流れようとした場合、保護機能が働いて出力電流を停止する。
- PPS(Programmable Power Supply):電圧/電流を状況に応じて動的に調整することで電池の発熱を抑え、ムダなく短時間で充電できる機能。
また、品質管理部門で発火・発煙事象を調査すると、以下のような外部要因によるものがほとんどだという。
- 非常に強い荷重や落下衝撃を受けた痕跡がある
- 分解しようとしてリチウムイオン電池を損傷している
- 電子レンジなどの加熱調理機器にかけたり、高温物の側に置かれていた痕跡がある
- ペットに噛まれた跡がある
こういったケースでは、日数が経過した後に発火・発煙事象が発生することが多いという。スマホに大きな力がかかった場合は、大きな傷や凹みがなく、当面の動作に問題がない場合でも、修理に出したり利用を控えたりしてほしいとしている。
NTTドコモは充電器の安全対策についてのページを公開
各社の情報発信の内容を簡単に見ていこう。
NTTドコモは、お客様サポート情報の安全に関する注意のひとつとして、「純正充電器の安全性について」というページを公開。各キャリアが販売する純正充電器に導入されている安全対策について解説し、社外品ではなく安全対策が搭載された純正充電器の利用を呼びかける内容となっている。
また、異常な発熱・焼損など故障の原因となる使い方として、以下のような点に注意するよう呼び掛けている。
- 充電しながらの操作:充電しながら操作していると、端末の温度が高くなったり充電時間が長くなったりする場合がある。
- 濡れた場所/濡れた状態での充電:ショートを避けるため、端子や手が濡れた状態では絶対に充電しない。洗面所や台所など水場近くでの利用は避ける。
- 充電コネクタの抜き差し:充電コネクタを抜き差しする際、無理な方向に力を加えない。破損・変形した場合は使用をやめる。変形を元に戻しての使用も控える。
KDDIは品質管理担当者のインタビューを掲載
KDDIはオウンドメディア「TIME&SPACE」で、同社プロダクト品質管理部の担当者にインタビューし、リチウムイオン電池の取り扱いについて、よくある事例とその対処法について聞いている。
ぜひ見てほしいのは、加圧試験機と模擬電池を用いて、スマホへの加圧によって電池がどのように損傷するかの実験を行った、その写真とデータ。実験では、100kgほどの加圧で背面カバーが目視できるくらい凹んでおり、リチウムイオン電池の内部の絶縁膜を損傷して短絡を起こし、発熱・発火の可能性が出てくることを示している。
ソフトバンクも品質管理担当者に要因とNG行動例を聞いた
ソフトバンクも同社が運営するWebマガジン「ソフトバンクニュース」に、品質管理担当者にリチウムイオン電池・充電器発火の要因とNG行動例を聞いた記事を掲載。
スマホに力が加わってリチウムイオン電池を損傷する状況や充電器の発火要因についてイラストつきで詳しく解説しており、以下のようなNG行動についても詳細に例を挙げている。
- ポケットに入れて座ってしまい、圧力が加わる
- ぶつけるなどの強い衝撃をあたえる
- スマホを分解する
- 携帯カイロなど発熱物と一緒にポケットやカバンに入れる
- 熱がこもってしまう布団やタオルなどの中に入れる
- コンロ、ストーブなどの火のそばに置く
- サウナに持ち込む
- 濡れたスマホをドライヤーや電子レンジで乾かす