米Appleは3月24日(現地時間)、加ELYSISのダイレクトカーボンフリー・アルミニウムをiPhone SEに採用することを明らかにした。ELYSISは、Appleがグリーンボンド(環境債)で調達した資金の投資先の1つ。その成果をAppleが顧客としてiPhoneに用いることは、「ELYSISがアイデアを現実のものにできたことの証です」とELYSISのVincent Christ氏(CEO)。同社のカーボンフリー精錬技術の拡大に自身を見せる。

アルミニウム地金はボーキサイトから抽出したアルミナを電気分解して製造し、それらの工程で温室効果ガスが排出される。ELYSISは、アルミニウム製造大手のAlcoaとRio Tintoが設立したジョイントベンチャーだ。同社は炭素電極の代わりに不活性電極を用いて、二酸化炭素を直接放出せず酸素だけが発生する電解精錬工程を開発。昨年11月に、工場規模の施設を持つ産業研究開発センターにおいて、小型製錬セルと同等のサイズで完全な工業デザインを用いた製造に成功した。また同センターでは、電解炉で用いる電力を水力発電でまかなうことでも温室効果ガスの削減を図っている。

アルミニウムは融点が低く、リサイクル地金の製造に必要なエネルギーは新地金製造のわずか3%で済む。そのため、環境へのインパクトが大きい新地金の製造で温室効果ガスの放出を抑えられるELYSISの精錬技術は、環境にやさしい素材としてアルミニウムの価値を引き上げるものになる。AppleはELYSISの開発成果を、アルミニウム生産における「大きなマイルストーン達成」と評価している。

Appleは、ELYSISが生産する最初の商用純度の低炭素アルミニウムを購入。iPhone SEの生産に利用する計画だ。その規模は不明だが、同社はこれまで再生アルミニウムと水力発電で製錬したアルミニウムに切り替えることで、アルミニウムに関わる二酸化炭素排出量を2015年から70%近く削減してきた。低炭素アルミニウムの採用は、カーボンの影響を減らすこれまでの取り組みをさらに前進させるものになるという。

2030年までにサプライチェーン全体でカーボンニュートラルになるという目標を掲げているAppleは、2016年からグリーンボンドを発行し、低炭素技術の開発や再生可能エネルギーの拡大に資金を投じている。これまでの総額は47億ドル。2019年のグリーンボンドは低炭素アルミニウムを含む50プロジェクトをサポートしており、それらは2,883,000トンのCO2eの軽減またはオフセット、700メガワット近い再生可能エネルギー容量の設置、リサイクル関連の研究開発の推進につながっている。