ソニーワイヤレスコミュニケーションズは3月25日、ローカル5Gを利用した集合住宅向けインターネット接続サービス「NURO Wireless 5G」を4月1日に提供開始する。
下り4.1Gbpsで4,950円、マンション向けに提供
NURO Wireless 5Gは、家庭までのラストワンマイルに5Gの無線通信を利用することで、配線・開通工事を必要とせずに光回線並み、あるいはそれ以上の高速な通信環境を提供する集合住宅向けサービス。ローカル5Gを利用した家庭用通信サービスは国内初となる。
通信速度は下り最大4.1Gbps/上り最大2.6Gbps。基本料金は4,950円/月で、専用の宅内機器(ホームルーター)のレンタル料も含まれている。初期費用は事務手数料3.300円のみで、工事費はかからない。支払方法はクレジットカードのみ。定期契約は設けず、契約解除料はかからない。
4月1日時点でのサービス提供可能エリアは北海道、関東(東京、神奈川、埼玉、千葉)、東海(愛知、静岡、岐阜、三重)、関西(京都、大阪、兵庫、奈良)、九州(福岡、佐賀)の一部。ただし、物件単位での提供となるため、エリア内であればすぐに利用できるというものではない。
専用機器としてレンタル提供されるホームルーターはソニーワイヤレスコミュニケーションズ独自のもので、有線LANポートのうち1つは5GBASE-Tに対応、無線LANもWi-Fi 6対応と高速通信を活かせる仕様となっている。携帯回線を利用する他社のホームルーターと同様に、対象物件内であればコンセントにつなぐだけですぐに利用開始できる。
実際に利用する際の流れは?
NURO Wireless 5Gは集合住宅向けのサービスとして設計されている。先述のサービス提供“可能”エリアは要望に応じてエリア展開が可能な地域ということを意味しており、あくまで対象地域全体に5Gエリアが整備されているわけではない。基本的にはマンションごとに個別対応となる。
利用を希望する場合、まず公式サイトで自宅マンションがサービス提供可能エリア内であることを確認し、エントリーを行う。エントリー状況などを見てソニーワイヤレスコミュニケーションズが物件オーナーとの交渉を行い、成立すれば対象物件をカバーできる位置にローカル5G(携帯キャリアが提供する5Gとは別の自営網)の基地局を設置する。エントリーから交渉・整備を経てのサービス提供までには、数カ月~半年程度かかる見込みだという。
「NURO 光」が届かなかった人にも高速回線を
コロナ禍による巣ごもり需要やテレワーク・リモート授業などにより、光回線の「NURO 光」も好調だという。一方、集合住宅では設計/構造上の理由やオーナーの意向などによって光ファイバーを通すことができないケースもある。そこで、従来対応できなかった物件にも高速回線を提供するためのサービスとしてNURO Wireless 5Gは生まれた。
このような背景に加え、具体的な数値は開示されていないが専用基地局を必要とすることから一定以上の加入者が見込める物件でないと展開は難しいと考えられ、あくまでNURO 光を補完する位置付けだ。公式サイトでも「光ファイバーの通線が難しいマンション」向けのサービスとして紹介されている。「高速なNURO Wireless 5Gが使える物件に住みたい」という指名利用は想定しておらず、対応物件リストはあえて行わず大まかな対応可能エリアの表示のみに留めている。
発表会に登壇したソニーワイヤレスコミュニケーションズの永井氏は、昨今のインターネットサービスを取り巻く環境について、コロナ禍の外出自粛によって娯楽・仕事の両面で固定回線の重要性が見直されたことは一過性のものではないとの考えを語った。制限が解除されてもリモートワークの定着やコンテンツのリッチ化によって高速な通信環境は今後も必要とされ、これまで光回線が届かなかった人にも同等の通信環境を提供できるNURO Wireless 5Gの存在意義を語った。
また、ローカル5Gを採用したことによるメリットは、光回線を通せない場所にも届けられるというだけではない。携帯キャリアのパブリック5Gに乗るものではなく独自に構築できることを活かし、通信品質の追求だけでなくサービスの発展も期待される。
5Gで期待される技術のひとつに「エッジコンピューティング」と呼ばれるものがある。ネットワークの末端、ユーザーに近い場所にサーバーを置くことで速度低下や遅延を抑える技術で、個人向けではたとえば高画質かつレスポンスの良いクラウドゲーミングが可能になると言われている。
NURO Wireless 5Gはサービス開始時点では通信サービスのみとなるが、記者の質問に対し永井氏は、エンタメ系のコンテンツ提供を計画しており、開発を進めていることを明かした。